49 / 143
第二章
7
しおりを挟む私とレイチェルはお父様達に差し入れするために王宮に来ている。
「お姉ちゃん~、私の格好へんじゃない?セミュン様に失望されされたりしない?」
「大丈夫ですわよ。いつも通り可愛いですわ。今のレイチェルは可愛いですけど、もしも変だったとしてもお兄様はそんな事で態度を変えたりしませんわ。私のお兄様は紳士ですから」
「確かにセミュン様は紳士で格好いいです」
それよりレイチェルにはそろそろ気を付けてもらわないといけないわね。
今まではボロを出してないけど、いつか絶対にいい間違えそうな気がする。
「レイチェルは自分の恰好を気にする前に、私の呼び方を直したほうがいいですわ。今までは私と居るときだけお姉ちゃんって呼んでますけど、私のほうがレイチェルより年下なんですから、誰かがいる時に呼んだら色々と不自然ですわ」
「そうなんだけどお姉ちゃんはお姉ちゃんだからな~、そうだ!!お姉様って呼ぶのはどうかな?年下相手でも格好良くて憧れる女性をお姉様って呼ぶことあるよね?」
レイチェルの提案に私の体はゾワッとする。
ドレスで見えないけど、私の腕に鳥肌が立ってる気がするわ。
「やめて下さい。隣国の王女にお姉様って呼ばれるのは色々と私がマズイですわ。イリーナって呼んで下さい。それとも私がレイチェルお姉様って呼びましょうか?お兄様と結婚するのだから違和感は無いはずですよ?」
「ごめんなさい。私が悪かったです。これからはイリーナって呼ぶよ。はぁ~、イリーナは怒ったり嫌なことがあると、普段より言葉が丁寧になるよね。分かりやすいけど怖さが倍増する」
そうかな?
自然となるから自覚がなかったわ。
「無駄話はこれぐらいに入るよ。いつもなら扉の前に警備の人がいるのに何で居ないのかしら?」
お父様達が仕事してる部屋のドアをノックする
「はい」
「イリーナ•サフィナです。父と兄に差し入れと着替えを持ってまいりました」
すぐに扉が開き目の前にはお兄様が立っていた。
「お兄様大丈夫ですか?目の下の隈が凄いですよ」
3日間帰ってこないお兄様とお父様を心配して、差し入れに来たけど正解だったみたいね。
「俺はまだ良いほうだよ。父上やユーリ様は俺より睡眠時間少ないから。レイチェル様も来てくれたんですね。もしかしてレイチェル様も一緒に作られたのですか?ありがとうございます」
「ちょっと手伝っただけです。私もイリーナみたいに作れるように頑張りますね!!」
「俺の為に作ろうとしてくれる気持ちだけで嬉しいですよ」
2人の微笑ましいやり取りに居た堪れない気持ちになりながら、部屋の中を見ると疲れた顔をしてる人ばかりだった。
「大変そうですね。サンドイッチとクッキーを大量に作って来たので皆さんも食べて下さい」
空いてるテーブルの上にサンドイッチとクッキーが入ってるカゴを置くと、ぞろぞろとお兄様より顔色が悪い人たちがテーブルを囲む。
「「「ありがとうございます!!」」」
嬉しそうにどれを食べるか選んでるのを見て、役に立てたみたいで良かったと思った。
中には久しぶりのまともな食事だと涙ぐむ人までいる。
想像してたより酷いわね。
何時もより人が少ない気がするけど忙しいのはそのせいかしら?
「イリーナ嬢、差し入れありがとうございます。私の部下達がみっともない姿をお見せして申し訳ありません。」
「本当に大した物を作ったわけじゃないので、そんなに感謝されると居た堪れなくなりますわ。ユーリ様大丈夫ですか?とても顔色が悪いですけど?」
「寝不足なだけなので大丈夫ですよ。イリーナ嬢が来ると知ってたら、もっと身嗜みに気を付けていたんですけどね」
ユーリ様は冗談ぽくそう言うけど、顔色以外は普段とそんなに変わらないわよね。
髪や服はちゃんとピシッとしていますし、他の人達は無精髭が生えてたり、髪に寝癖がついてるものもいる。
お兄様とお父様はそんなことはないですけどね。
「イリーナどうしたんだい?レイチェル様と一緒に来るなんて、もしかして何かあったのかい?」
「何もないですよ。お父様とお兄様が揃って数日帰ってこないのは初めてだったので、心配になって差し入れを持って様子を見に来たんです。レイチェルもちょうど遊びに来てくれてたのでお誘いしたんです」
お父様が書類を持ったまま私に駆け寄ってくる、心配をかけてしまったみたいですね。
「そういえば初めてだったな。イリーナとレイチェル様が仲良くなったみたいで安心したよ。レイチェル様はセミュンの未来のお嫁さんだからね。イリーナとレイチェル様が仲良くなることは良いことだ」
我が家で女性は私だけだから、お父様は心配していたのかもしれないわね。
使用人は居るけど雇い主と使用人ではどうしても距離が出来てしまう、私とレイチェルのお互いのためにも仲良く成れることは良いことよね。
649
お気に入りに追加
5,735
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。
しかも、定番の悪役令嬢。
いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。
ですから婚約者の王子様。
私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる