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第一章

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 お店を出ると外が騒がしいことに気がつく

「どうしたのかしら?」

 ノエルは私とメリーの前に立ち、警戒しながら周りを観察する。

「どうやら酔っ払いが暴れてるみたいですね。お嬢様は危険ですのでここから動かないでくださいね」

 ノエルの横からチラッと見ると、数人の男性が酔っ払って色んな人に絡んでるのが見えた。

「こんな真っ昼間から酔っ払うなんて………」

 昼間から酒を飲むなとは言わないけど、飲むなら周りに迷惑をかけないようにしてほしいわね。

 昼間は女性も多いし、私より小さい子供だって沢山いる。

 もしも何かの拍子で子供が泣き出したら絶対に絡むわよね。

 そう考えてると子供連れの女性が子供を引っ張り、この場から早く離れようとしてるのが見えた。

「そんなに引っ張ったら………」

 想像した通り子供は転んでしまい、そのまま大泣きしてしまった。

「ガキがビービーうっせぇだよ!!」

 酔っ払いの1人が子供に目をつけてしまった。

「ノエル!!」

 このままでは子供が危害を加えられてしまうと思い、とっさにノエルの名前を呼ぶ

「ですがお嬢様を残して行くわけには」

「私がお嬢様を絶対に守るからノエルはあの子供を守ってちょうだい。」

 ノエルは迷って私と子供の顔を交互に見る

「ふたりは絶対にここで待っててくださいよ。危険そうだったらすぐに馬車に飛び乗って下さい」

「分かったわ」

 ノエルはすぐに子供と酔っ払いの間に立って、酔っ払いを一瞬で身動き出来ないようにしてしまった。

「酔っ払い相手とはいえ流石ね」

「お嬢様の護衛を任されるぐらいですからあれぐらい当たり前ですよ。酔っ払いに手こずるぐらいなら、お嬢様の護衛にはなれません」

 メリーはそう言ってるけど、ノエルを見る目はキラキラとしている。

 メリーはノエルが居ると生意気な態度になるけど、メリーがノエルを好きなのは我が家では共通認識なのよね。

 ノエルもメリーに気があるみたいだから、早くふたりが付き合えばいいのに

 ノエルが酔っ払いを相手してる間に、街の警備隊も駆けつけてきた。

「もう大丈夫そうね」

「そうですね。ノエルもすぐに戻ってこれそうで安心しました。子供と女性も無事みたいで良かったです」

 メリーは私を絶対に守るってノエルに言ってたけど、メリーには戦う力があるわけではないから、本当は不安だったのかもしれないわね。

 だけど私がノエルに彼女たちを守るように言ったから、私の気持ちを汲んでくれたのかもしれない。

 メリーには悪いことをしてしまったわね。

 もう危険はなさそうで安心してると、急に酔っ払いの数が増えてしまった。

「なっ!?先に居た酔っ払いの仲間でしょうか?」

「まずいわね。警備隊の数より多いわ」

 馬車に逃げ込んだほうがいいかと思い、馬車がある方を見るけど、馬車と私達の間に酔っ払いが何人もいた。

「どんだけ居るのよ」

 どうしたら良いのかしら?

 私とメリーでは自分の身を守るのも難しい。

「イリーナ嬢?」

 名前を呼ばれて声のする方に顔を向ける

「ユーリ様!?」

 目の前にお父様の上司で王弟のユーリ様が現れてビックリしてしまった。

 仕事が忙しいユーリ様が何でこんな場所にいるのかしら?

「やはりイリーナ嬢でしたか。何故こんな危険な場所に護衛もなく」

「すぐそこのお店で買い物をしてたんです。護衛はあそこに居るんですけど、私がお願いしたので彼は何も悪くありません」

「あまり褒められた行為ではないな。護衛がもうひとり居るならまだしも、女性しか居ない状態で護衛から離れるのは軽率だ。もしも君に何かあったら、責任を取らないといけないのは護衛である彼なんだよ」

 ユーリ様の言葉に私の考えが甘かったことを実感する。

 そうですわよね。

 もしも私に何かあったら、責められるのは命令した私ではなく、私のそばを離れてしまったノエルになる。

 あとで謝らないといけないわね。

「ごめんなさい。私の考えが甘かったようですわ」

「わかってくれたならいい。同じ過ちをしてはいけないよ」

「はい」

 家族以外で私を叱ってくれる人は居ないから、何だか新鮮な気持ちになるわね。

「ここに居るのは危険だから、そこのお店に入って保護してもらって下さい」

「それならユーリ様も」

 王族であるユーリ様が怪我をしたりしたら大問題よね。

「私なら大丈夫だ。彼らだけではこの場を制圧するのは難しいだろうから、私と私の護衛が手伝うつもりだ」

「危険です!!」

「私は酔っ払いに負けるような鍛え方はしてないよ。イリーナ嬢は危険だから早く避難しなさい」

「はい。お気をつけ下さい」

 ユーリ様は私の頭をひと撫でしてから離れていった。

「避難するわよ。あなた方も危険なので一緒に避難しましょう。私達がこの場に居ては彼らの邪魔になってしまいます」

 私は避難しながら近くに居た人達を誘導し始めた
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