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第一章

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 お父様に婚約者候補の辞退をお願いしてから3日が経った。

 お父様は仕事が忙しいのか、それとも陛下を説得するのに忙しかったのか分からないけど、我が家に帰って来なかった。

 年に数回そういう時期があるからお母様は心配してなかったけど、私とお兄様は今回のことを知っていたからちょっと不安になった。

 反対されるとは思えないけど、もしかしたら身分的に1番私が王太子妃になれる可能性があるから、陛下や王妃様が渋ってる可能性がないとは言い切れない。

 自分で言うのもなんだけど、私は学習面や生活態度も良い方だったから、王太子妃候補を任されてる王妃様からも好かれていた。

 1人で居ると色々と嫌な想像をしてしまうわね。

 今日の勉強も終わらせてしまったし、お兄様は学園に行ってるから相手してくれる人も居ないのよね。

 お母様は相変わらずリリヤが住んでる屋敷に行ってますし、使用人達は忙しそうに働いてるから邪魔は出来ないわよね。

 何処かに出掛けようかしら?

 でもお父様が帰ってきたら1番に話を聞きたいのよね。

 王太子様との婚約の問題がどうなったのか聞かないと、落ち着いて今後のことを決めるのも難しいですし

 でも話すなら家族皆が揃ったときよね?

 ならお兄様は3時間ぐらい帰ってこないから、それまでなら問題ないかしら?

 これからは勉強に力を入れたいから、気分を上げるためにも新しい万年筆が欲しいのよね。

 3時間もあったらすぐに帰って来れるわよね。

 一人では着替えることは出来ないから、呼び鈴でメイドを呼ぶ。

 前世の記憶を思い出してからは、前世の洋服が恋しくなるのよね。

 着替えるためにメイドをわざわざ呼ばないといけないのは面倒臭い。

 この世界でも一人で着替えられる洋服はある、だけどそれは庶民専用の洋服で貴族が着るのは体面が悪いのよね。

 貴族が着る服は基本的に全てが一人で着替えることが出来ないデザインになっている、一人で着替えられる服を着ることは、貴族にとって貧乏で使用人を雇うお金がないって言ってるようなもの。

 前までは当たり前だったけど、今は無駄だと思うけど変えることは出来ない。

 私だけではなく、他の家族も笑われる結果になるから勝手なことは出来ないのよね。

 コンコンコンッ

「お呼びでしょうか?」

「入ってちょうだい。今から少し出かけてくるから、外に出る用の服に着替えたいの」

「畏まりました。何か希望はありますか?」

「何でも良いわ。出来たら動きやすいほうが良いわ」

「はい」

 メイドは衣装部屋からすぐに黄色いドレスを持ってきた。

「こちらで宜しいでしょうか?」

「うん。コルセットはそんなに強く締めないで良いわ」

「畏まりました」

 今年からコルセットを使うようになったけど慣れないのよね。

 そういえば前世では、コルセットが原因で女性が多く亡くなった国があったわよね?

 コルセットが原因って言うより、コルセットを使うようになって、多くの女性がウエストを細くできるようになったから、人よりも細く見せようとしてコルセットを締めすぎて、内臓や骨に影響が出たんだったかしら?

 この国ではまだ流行り始めたばかりだから、そこまでキツく締める人は出てきてないけどいずれそうなるのかしら?

 もしもそう言う流れになったら私はどうすればいいのかな?

 亡くなるかもしれない人たちを黙って見てるのは気分が悪い、でも私が反対したからって周りが素直に聞いてくれるとは限らない。

 私は公爵家の娘だけど、信憑性のない話を素直に聞いてくれるか分からない。

 前世の話を出来ないから説得は難しいわよね。

 美しくなるためなら女性は無理をする生き物だからな。

 貴族は特に人よりも目立ちたいって欲求がある女性が多い。

 それを叶えるためのお金はいくらでもある

「うっ、もうちょっと緩くていいわ。少し買い物を行くだけだから、そこまで気合を入れる必要はないから」

「でも何処で誰に会うかわかりません。リリヤ様と遭遇する可能性もあります。お嬢様がこの家で1番素敵なレディーでなければなりません!!」

 リリヤはもう使用人達に嫌われてるのね

「この家で1番はお母様よ」

「…………、奥様は変わられてしまいました。今の私達の1番はイリーナお嬢様です。あっ!!旦那様とセミュン様も同列で1番です」

「ふふふっ、私とお兄様は同列で良いけど、我が家で1番はお父様よ」

 この話を聞いてもお父様なら怒らないでしょうけどね。

 ふぅ~、でもお母様が使用人から不信感を持たれてるのは色々と問題よね。

 最近のお母様を見てたら、使用人から信用されなくなるのは仕方ないけど、この家を任されてる立場のお母様が使用人から信頼無いのは問題よね。
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