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第ニ章
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しおりを挟む自分の屋敷に戻ると、カヤが待ち構えていた。
「お早いお戻りですね」
「お母さんがこの後ご予定があるから、食事だけして解散になったんだよ」
「それは旦那様もご一緒にお出かけに?」
「知らない」
カヤはニヤついた顔をしたまま、本邸に用事があると言って出て行った。
「あの人も相変わらずね。お父さんのどこが良いのかしら?」
「姉が申し訳ありません。シエル様を放置して、自分勝手な行動をするなんて」
「カヤのことはどうでもいいよ。居ても居なくても私には変わらないから。でもミリーが大変なら、お父さん達にお願いして、もう一人こちらに回してもらう?」
私の周りに人が増えるのはあまり好きじゃないけど、ミリーが大変ならそれぐらいは我慢ができる。
「私はこのままで大丈夫です。よく知らない人にシエル様を任せられませんよ。私は今の仕事に誇りを持ってますから」
「そっか………」
ミリーが私に愛情を注いでくれるから、私は今も挫けずに生活できる。
もしもミリーが義務的に接していたら、私は絶望していたかもしれない。
「そう言えば、ミリーの子供も来月に洗礼式を受けるんだよね?」
「シエル様と同じ年なので、娘も来月に洗礼式を受ける予定になってます。洗礼式の結果で将来が決まるようなものなので、親としては不安で一杯ですね」
確かにスキルや所有してる魔法等で将来が決まってしまう所はある、だけど私はそれをずっと疑問に思ってるんだよね。
私には魔法やスキルがなかった世界で生きていた記憶がある。
社会人になる前に亡くなってしまったけど、大人が自分の能力を磨いて、ちゃんと生活をしていた。
だからこっちの人だってそれが出来るはず。
「洗礼式で出た結果は参考程度にすれば良いと思う。結果を参考にそれを磨いても良いし、もしも本人が好きなことがあるなら、それを極限まで極めればそれは武器になると思う。スキルとかに関係なくても、何かの分野を極めてる人はそれが武器になるよ」
子供の私が言っても説得力はないかもしれない。
でも間違ったことは言ってない。
「シエル様は凄いですね。確かにその通りですね。シエル様はたまに凄く大人っぽいことを言われますから、大人と話してる気分になってしまいます」
「私はまだまだ子供だよ。だけどミリーの子供が今の環境で自分磨きが出来るかが問題だね。この家で一緒に暮らせるなら、私のついでに学ばしてあげられるけど、ミリーの父親は教育をさせてるの?」
貴族の子供なら7歳までは、簡単な文字や数字の勉強を始める。
洗礼式が終わってから、それぞれに必要な教育が本格的に始まる。
スキルや魔法は遺伝しやすいものだから、庶民でも親や親戚が教えてくれることが多い。
それでも庶民だと最低限になってしまうけど、教えくれるものがいないような、孤児やネグレクトをされてるような子供よりはマシかな?
「私の父はあの子を可愛がったりしてないので、教育が行き届いてるかは分からないです。奥様は私の子供だから毛嫌いしてますし、おそらく何もしてないと思います」
うーん、微妙な部分かな?
ミリーは愛人の娘だから、本妻からしたら許せない存在だよね。
愛人の娘を利用するために引き取って、その娘の子供を人質にしてるんだから、それに見合った対価を支払ってほしい。
ミリーから子供を奪ってるんだから、その責任を取って教育をちゃんとして欲しい。
今は無理でも、いつかはミリーの娘を私の側近としてそばに置きたいと思っている。
ミリーも娘と好きな時に会えるし、ミリーの娘なら良い子に違いないから、友達になりたいんだよね。
でも教育をされてなかったら、乳母の娘とはいえ、側近にするのは難しい。
王族や貴族の子供の側近を乳母の子供がなることが多いのは、それは身分が証明されていて、教育が受けられる身分なのが理由なんだよね。
王族の乳母は公爵家や侯爵家から選ばれることが多い、それは乳母の子供を側近候補に選ぶから、公爵家や侯爵家に候補が居なかったら、伯爵家から選ばれることもあるけどそれは滅多に居ない。
その理由は王族の子供と伯爵家以下では、学ぶ一般教養が変わってしまうから、側近なのに一緒に勉強するのが難しくなってしまう。
学園に通うようになっても、側近とクラスが分かれてしまうなら意味がない。
「ミリーの子供も13歳になったら学園に通うんだよね?」
ミリーは元々は孤児だったけど、私の乳母になるために侯爵家の娘になった、だからミリーの娘も侯爵令嬢になる。
「分かりません。あの子の将来を考えたらどうすれば良いのか分からないんです。学園に通って娘がやっていけるか分かりません」
「ミリーは学園に通わすことの何が不安なの?ミリーの娘がこのまま貴族として暮らすなら、学園に通うのは大事なことだと思う。庶民になるつもりでも、学園での生活は糧になると思うな」
庶民になるなら通わなくても問題ない、でも貴族のままで居るつもりなら絶対に通う必要がある。
貴族なら絶対に通わないといけないわけではない、でも通わないものは何かしら問題があると思われてしまう。
そしたら就職に不利になるし、下手したら結婚も難しくなってしまう。
貧乏貴族とかなら、結婚には不利になるかもしれないけど、就職には問題ない。
でも侯爵令嬢が金銭的に通えないってのはあり得ない。
親から冷遇されてるか、病弱か、外に出せないほどの問題児だと思われてしまう。
そう思われてしまうと、将来は絶望的になる。
親に冷遇されてるなら同情を誘いそうな内容ではあるけど、もしも助けたりして侯爵家に目を付けられたら困るから、助けようとする人は滅多にいないのが現実なんだよね。
生活が掛かってるんだから、仕方ない話ではあるけどね。
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