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木の上で、寝転ぶと目をつむり周囲の音に耳を澄ませた。音から周囲の様子をイメージするのは難しくはない。しかし、音だけで完全状況がわかるわけはなく、想像で補っている所がある。信頼度は低くはないはずだが、完璧ではない。
今はそれが頼りだ。
緊張から手が汗ばんだ。
失敗して死んだらそれまでだ。きっとイズクは勇者試験に合格する。彼との実力はどんどん差がつく。魔王討伐は生半可な物ではないだろ。今、ここでなんとかしないと待っているのは死だ。
魔物が近づく気配を感じたが、多すぎて数がわからないが小さい。 
カズマは目を開け、枝を細く鋭くした物もいくつか作ると足に付け入るポシェットにいれた。
下を覗くと、ネズミ型の魔物が次々と木の下に入って行った。
「……巣か」
イズクは干していた肉を床に落とした。すると、巣穴に入ろうとしていた魔物が干し肉に食いついた。巣穴から次々と魔物が出てくると干し肉の奪い合いを始めた。闘争心を入れてないのに、魔物の目は血走り、互いに鋭い牙を向けている。しばらくうなり合っていたが、一匹が噛みつくとそれを合図に乱闘が始まった。そのスキに干し肉を持って行こうとする奴がいると『裏切者』とでもいう様に、複数の魔物に襲っていた。
カズマは深呼吸をすると、乱闘の比較的外側にいる魔物、目掛け尖らした枝を投げた。数匹の魔物に刺さり動けなくなった。刺さった魔物は「キィー」と泣き声を上げて暴れている。突然のことに、周囲の魔物の動きが一瞬止まったが、すぐに巣穴に逃げようとした。
カズマは逃げようとした魔物の闘争心を刺した魔物に入れた。すると、魔物は逃げる気がなくなりその場にうずくまった。
刺された魔物の方は、更に激しく暴れているが枝が取れないため動けない。
その他の魔物は干し肉に食らいついた。カズマはその中の魔物数匹にも枝を投げつけ動けなくし、残りの魔物の闘争心を移動した。
枝で地面に刺され移動する事はできないが奇声をあげ暴れている魔物と気力をなくし蹲る魔物、二分化した。
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