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削るような音はドンドン使づいてきた。
カズマは短剣に手を掛けると周囲を警戒しながら、下を見た。
「……」
登ってきたのは魔物であるが、カズマの手の平ほどの大きさだ。存在は知っていたが、まじまじと見る事はなかった。ほぼ無害の魔物を気にする必要はない。
「……」
魔物は小さな鳴き声開けながら、上がってくるとカズマを見て止まった。直ぐに逃げようとした魔物をカズマは素手で握りしめるように捕まえた。
「ぎゅー」と鳴きながら、口を開けたので慌てて布を詰め込んだ。魔物の牙がめり込み布に穴があいた。
小さくとも魔物だ。油断することはできない。
魔物は布に穴を開けたが食いちぎる事できないようであるため、口に加えさせたまま枝にしばりつけた。更に胴体を枝に固定し身動きを取れないようにした。口を抑えたため声を出す事ができない魔物は大暴れしていた。
カズマは暴れる魔物をじっと見ていた。
「う~……」
更に小さい魔物を布で枝に巻きつけた。もう、魔物は瞬きしかできなくなった。
拘束された魔物の動きが鈍くなっているのを確認するとカズマは木から降りた。
座り込み木に寄り掛かった。
目をつぶり周囲の音を聞いた。
魔物の鳴き声。歩く音。歩くときに揺れる草木の音。風の力で動かされる草。
様々な音から、周りの様子をイメージした。遠くまでは分からないが数メートルならば問題はない。
一匹の魔物の足音が近づいてきた。目を開けて確認をしたいが必死に我慢した。
魔物の足音が、目の前まできた。獣の臭いがした所でカズマは目を開けて、オオカミ型の魔物の闘争心を身体から引きぬいた。それを、木の上でもがいている魔物に入れた。
近くまできたオオカミ型の魔物はその場に座り込み動かなくなった。
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