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目を覚ました時には辺りは真っ暗であった。
村を出る時は太陽が真上にあったため、焦った。
動かすたびに痛む身体を無理やり動かし、足として機能しなくなった左足を引きずりながら村へ戻った。
暗くなってはいたが、それでもいつもは村人の声が聞こえる時間なはずであるのに静まり静まり返っていた。
家は破壊され、原型をとどめている物は見えない。地面には赤い血が広まっていた。
目を覆いたくなるような惨状であったが、カズマは目を大きくあけた。
村が破壊された原因は、カズマが生み出した化け物であることは想定できた。
魔物の闘争心を入れることで一時的に身体能力が向上するのだと思い込んでいた。イズクがソウであったから全てソウだと勝手に考えていた。
全員に同じ効果があるという根拠はない。
怠慢。
傲り。
浅はか。
事前に調べ、能力を把握すべきであった。
カズマは仰向けになり、空を見た。いくもの星が輝き、きれいな夜空を作っている。
後悔したが、もう遅い。全ては自業自得。
「カズマ」
夜空を見ていた視界を遮ったのはイズクだ。
「お前……」イズクは真っ青な顔をしていた。「今手当するから」
イズクは手際よく、曲がった足に板をいれ本来の形に修正すると身体に薬を塗った。
「……」
塗った所から、傷が癒えていく薬。非常に高価な物であり村では手に入らない。
「これは……」
「あぁ、大丈夫」
「大丈夫って……。この薬をどこで?」
「あ~……」言葉に詰まったが、手は動いている。
イズクに抱き起こされる頃には全身の痛みが引いていた。足はまだ痛いが先ほど比べれば天と地の差だ。
「村で商人が息絶えていた。だから拝借したんだよ」
「商人……」
村に物売りが来ることは珍しくないが、商人が村に持ってくる品物としては貴重すぎる。
しかし、王都にいる貴族が購入するような物だ。しかし、王都はここから馬車でも2日以上かかる。今日以外は常に共に過ごしていたイズク自身が持ってきたとは考えにくい。
「そんな……、貴重な物を俺に使うなんて」
怪我は自業自得だ。更に、村を破壊し村人を死に追いやった。その中にはイズクの家族もいる。
恨まれる事はあっても助けてもらうような存在ではない。
「生きているのがお前しかいなかったからな。死んだ奴につけても意味はないよ」
「それはそうだけど」
イズクは家族と仲が良かった。だから、彼のあっさりとした態度に驚いた。
「魔王討伐にいくよ。俺は勇者になる」
「へ?」
突然の宣言に驚いた。
「カズの能力があれば、俺はいくらでも戦える」
「え? 俺の能力でアイツは暴走したんだ」カズマは下を向いた。「だから、イズクもああなる可能性が」
「大丈夫」キッパリと答えた。「ならないよ」
根拠を聞いたが、「俺だから」としか言わない。
「イズクの能力?」
「そうだね」
「どんな?」
イズクが能力に覚醒したのは知らなかった。自分の異能を相手に伝える事は死に直結する事があるため、黙っていた事を咎めるつもりはない。
「まぁ、そのうちね」
「分かった」
教える気がないのならそれ以上追及するつもりはない。カズマがイズクに自分の能力を伝えたのはイズクに関わるからだ。
この能力も検証が必要だ。
「王都に向かうから」
「勇者試験難しいって聞くけど」
「俺は大丈夫」
根拠がないのに、絶対に受かるという自信が彼から溢れ出ていた。
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