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突然息ができなくなった。まるで水攻めにあっているようで、声も出ない。
「う……」
苦しくて、苦しくて、目を開けた。
イズクに口と鼻を抑えられていた。口の中には液体がはっているように感じた。
必死で手足をばたつかせ、暴れるとイズクは手を離し見下ろしてきた。
「うぇ……」
四つん這いになり口に入っているモノをその場に吐き出した。ベッドの上にピンクのゼリー状のモノが広がった。それはウニョウニョと動いている。
気持ちが悪い以外の感想はない。
まだ、喉にソレがいる気がしたが、出てくるのは唾液と変な咳だ。肩で大きく呼吸をして気持ちを落ち着かせるとゴロリと横たわった。
ベッドを汚してしまった事に罪悪感を持ちながら天井を見た。すると、イズクが視界に入った。この状況の説明を聞こうとしたが声が出ない。
「おはよう。カズ」
満面の笑みを浮かべるイズクに背筋が寒くなった。
「苦しいよね。ごめんね。でも必要なことなんだ」
眉を下げたイズクに抱き起こされた。反射的、身体がビクリと動くと「大丈夫」とイズクは穏やかな微笑みを浮かべた。この状況で優しくふるまうイズクの精神を疑った。しかし、彼の表情を見ると、納得した。
正しい事をしているという絶対の自信がイズクの何にあるのだろう。その根拠は分からないが。
椅子に座らされると、イズクは汚れたシーツを外して袋の中にいれていた。その袋の中に縄が見えたが、気にしないようにした。
ベッドはイズクの手によって、あっという間に入ってきた状態と同じになった。その事には気持ち悪さがなくなり手足が自由に動くようになっていた。
「イズク」
「ん?」
「なにした?」
真剣な顔でイズクを見たか、彼は上機嫌で笑ている。
「カズがずっと俺と一緒に居てくれるなら特に今までと変わらない生活ができるよ」
「……」
答える気がないようであった。
「さっきのゼリー見たいのはどこから持ってきたんだ」質問を変える事にした。
「リュウマにもらったんだ」
二マリと笑うイズクを見ると、ただもらったようには思えなかった。
「コレの効果は?」
「カズが俺の側から離れなけなければ特に何もないよ」
上機嫌のイズクにカズマは大きなため息をついた。
『イズクから離れたら発動』というのは条件らしい。何を定義に離れるというのか。殆ど一緒に過ごしてはいるが、時には手分けして仕事をする事や自由にする時間がある。状況によっては数日離れる事もがある。
「あはは、そんなに不安そうな顔しないで。退団しなければいいだけの話だから」
離れるとは物理的な距離ではない事はイズクの今の言葉で分かった。
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