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イズクの大きな真っ直ぐな瞳で見られると言葉が出なくなる。目の前でサラサラとした金色の髪が揺れている。
彼は戦闘でしか見た事がない真剣な顔をしている。普段、ヘラヘラと緊張感のない顔をしているが、顔に力を入れればそれなりに整った作りをしている。これで身長があればモテたかもしれないが幼く見えてしまうのでいつもいい人で終わっている。
「不満があるなら何でも言って」
イズクが怒鳴ると当時に扉を叩く音がした。イズクがビクリと体を動かして、ゆっくりと扉の方を見た。
更に扉を叩く音がした。
何を戸惑っているか知らないが、出ない訳にはいかない。カズマは立ち上がり扉に向かうとその後ろにイズクがぴったりとくっついた。
身長のせいもあり、甘える幼子にように見えた。
「どなた?」
「呼ぶ遅くにすまない」
扉を開けたが身長が高すぎて顔が見えない。それに気付いたようで彼は腰を少し落とし、顔を見せた。
「アンギさん。どうしたんですか?」
「リリの言ったことだ。少し時間をもらえるか」
アンギは小さな声で申し訳なさそうに言った。カズマはチラリとイズクの方を見た。彼は不満そうな顔をしてたが、さきほどリリが言った件についてなら聞かない訳には行かない。
「どうぞ」
室内に案内すると、テーブルに対面に座った。通常サイズのテーブルであるがアンギが座ると子ども用のように見えた。イズクはカズマの隣に座り下を向いている。
「朝、リリが騒ぐ前に話をしたかったために夜遅くに申し訳ない」
リリが騒ぎ出したら、面倒くさいと思うのは同じなのだと知ると同情できた。
「勇者殿」
「……」
イズクは黙って眉を寄せアンギを睨みつけた。それに、彼は言葉を止めた。しかし、頭を振ると口を開いた。
「先ほど、リリが言った事をどう考えている?」
「……」
イズクは黙っている。確かに勇者メンバーの退団は即答できる案件ではない。じっくりと吟味する必要がある。
「なんのこと?」
イズクは腕組み、足を大きく広げた。さっきまでカズマにすがるような態度をしていたのが嘘のようであった。しかし、これが普段の彼だ。いつもの調子に戻ったようで安心した。
「俺ら寝てたんだよね。迷惑」
「寝てはなかったろ」
リリの話を進めたかったので、アンギを追い出そうとするような発言を止めた。
「俺は寝てたよ。だから、さっさと用件言ってもらえる?」
夜中に来たのは事実であるため、アンギは頭を下げ謝罪しながら返事をした。
「カズマ殿を追い出すってリリが言った件だ」
「……」イズクは心底不愉快そうに眉を寄せた。「カズが嫌なら君らが出てきばいいじゃん」
「えっ……、まぁそうだな」
「そう伝えて」イズクは立ち上がると、アンギの腕を引いた。「言えないなら俺から朝、話すから」
アンギは抵抗したわけではないが、協力的ではない2メートルを超える男を軽々とイズクは引っ張っていた。小さな身体でやってのけるから周りから驚かれ高評価につながる。
「そもそも、自分以外の退団申請は勇者以外に権利がない」
「だから、相談しにきた」
立ち上がったアンギが止まると、腕を引いているイズクも足を止めた。
「何度も同じ事言わせないで」イズクはアンギの腕を掴む手に力を入れると、身体を引き勢いをつけた。「嫌な奴が出ていけばいい。自分の退団申請なら俺の許可は必要ないよ」
アンギが何かを言おうとしたが、イズクは聞く耳を持たずアンギを外に出した。
彼は戦闘でしか見た事がない真剣な顔をしている。普段、ヘラヘラと緊張感のない顔をしているが、顔に力を入れればそれなりに整った作りをしている。これで身長があればモテたかもしれないが幼く見えてしまうのでいつもいい人で終わっている。
「不満があるなら何でも言って」
イズクが怒鳴ると当時に扉を叩く音がした。イズクがビクリと体を動かして、ゆっくりと扉の方を見た。
更に扉を叩く音がした。
何を戸惑っているか知らないが、出ない訳にはいかない。カズマは立ち上がり扉に向かうとその後ろにイズクがぴったりとくっついた。
身長のせいもあり、甘える幼子にように見えた。
「どなた?」
「呼ぶ遅くにすまない」
扉を開けたが身長が高すぎて顔が見えない。それに気付いたようで彼は腰を少し落とし、顔を見せた。
「アンギさん。どうしたんですか?」
「リリの言ったことだ。少し時間をもらえるか」
アンギは小さな声で申し訳なさそうに言った。カズマはチラリとイズクの方を見た。彼は不満そうな顔をしてたが、さきほどリリが言った件についてなら聞かない訳には行かない。
「どうぞ」
室内に案内すると、テーブルに対面に座った。通常サイズのテーブルであるがアンギが座ると子ども用のように見えた。イズクはカズマの隣に座り下を向いている。
「朝、リリが騒ぐ前に話をしたかったために夜遅くに申し訳ない」
リリが騒ぎ出したら、面倒くさいと思うのは同じなのだと知ると同情できた。
「勇者殿」
「……」
イズクは黙って眉を寄せアンギを睨みつけた。それに、彼は言葉を止めた。しかし、頭を振ると口を開いた。
「先ほど、リリが言った事をどう考えている?」
「……」
イズクは黙っている。確かに勇者メンバーの退団は即答できる案件ではない。じっくりと吟味する必要がある。
「なんのこと?」
イズクは腕組み、足を大きく広げた。さっきまでカズマにすがるような態度をしていたのが嘘のようであった。しかし、これが普段の彼だ。いつもの調子に戻ったようで安心した。
「俺ら寝てたんだよね。迷惑」
「寝てはなかったろ」
リリの話を進めたかったので、アンギを追い出そうとするような発言を止めた。
「俺は寝てたよ。だから、さっさと用件言ってもらえる?」
夜中に来たのは事実であるため、アンギは頭を下げ謝罪しながら返事をした。
「カズマ殿を追い出すってリリが言った件だ」
「……」イズクは心底不愉快そうに眉を寄せた。「カズが嫌なら君らが出てきばいいじゃん」
「えっ……、まぁそうだな」
「そう伝えて」イズクは立ち上がると、アンギの腕を引いた。「言えないなら俺から朝、話すから」
アンギは抵抗したわけではないが、協力的ではない2メートルを超える男を軽々とイズクは引っ張っていた。小さな身体でやってのけるから周りから驚かれ高評価につながる。
「そもそも、自分以外の退団申請は勇者以外に権利がない」
「だから、相談しにきた」
立ち上がったアンギが止まると、腕を引いているイズクも足を止めた。
「何度も同じ事言わせないで」イズクはアンギの腕を掴む手に力を入れると、身体を引き勢いをつけた。「嫌な奴が出ていけばいい。自分の退団申請なら俺の許可は必要ないよ」
アンギが何かを言おうとしたが、イズクは聞く耳を持たずアンギを外に出した。
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