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彼のこんな変な寝ぼけ方を見たのは始めであり驚いた。イズクの手の力が強まり抑えつけられている手に痛みを感じた。
足をばたつかせ「痛いって」と伝えるが彼の耳には聞こえてないようであった。
「リリの事なら気にしないでいいから。アンキの事も仕方なかった」
「何の話だ? あの人らなら昨日あったけど……」
しばらくの沈黙の後、拘束されていた手が軽くなった。
「え。あ、いや」イズクは首を振った。「ま、間違え」
「……」言っている事が意味不明でカズマは眉を寄せた。
イズクが背中から降りるとすぐにベッドに座り彼の顔を見た。
「あ、ま……」
いつも自信に満ち溢れているイズクが、動揺してカズマの顔色を伺うような目をしている。
「じゃ、あれ? 食事の事」
「……」
食事といえば、村人から出されたマズイ料理しか思い出せない。あの件をまだ、怒っているのかと思ったがそう言った様子はない。
「ごめん」
「え?」
イズクが謝った事に言葉を失った。反省をするが後悔せず謝罪もしないのがイズクだ。謝罪の言葉を使わないと言う意味ではない。人間関係の潤滑油として使う事はある。特に他人の代わり謝罪する事で自分の価値を上げる手段をよくとる。
そもそも、イズクはカズマにはどんな事があっても謝らない。やってもらって当たり前という考えから礼にかける。
「あの料理、カズの口を合わなかったんだよな。いや……、正直俺も美味しいとは思わなかった」
「そうなのか」
あまりにも美味しそうに食べるため、味覚に差があるだと思っていた。
「カズを貶めるようなこと言って申し訳なかった」
「……」
「今まで、辛かったよね。俺は本当に最悪だ」
「……辛い」
イズクに言われた事に怒りを感じることはあったが彼といて辛いと思った事はない。
「暴言をはき、傷つけたよね。許してなんて言えないけど、なんでもするか俺から離れないでほしい」
「寝ぼけているのか?」
「寝ていたけど、起きたよ」
「まぁ、そーだな」段々面倒臭くなってきた。「同じ勇者パーティーだから行動はともにするよ」
「嘘だ」大きな声を上げた。「今出ていこうとしたでしょ」
「あ~」
寝ていたと思ったのに、気づかれた事に驚いた。イズクは寝たら朝まで余程のことがない限り起きない。
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