上 下
8 / 31

8

しおりを挟む
彼のこんな変な寝ぼけ方を見たのは始めであり驚いた。イズクの手の力が強まり抑えつけられている手に痛みを感じた。
足をばたつかせ「痛いって」と伝えるが彼の耳には聞こえてないようであった。
「リリの事なら気にしないでいいから。アンキの事も仕方なかった」
「何の話だ? あの人らなら昨日あったけど……」
しばらくの沈黙の後、拘束されていた手が軽くなった。
「え。あ、いや」イズクは首を振った。「ま、間違え」
「……」言っている事が意味不明でカズマは眉を寄せた。
イズクが背中から降りるとすぐにベッドに座り彼の顔を見た。
「あ、ま……」
いつも自信に満ち溢れているイズクが、動揺してカズマの顔色を伺うような目をしている。
「じゃ、あれ? 食事の事」
「……」
食事といえば、村人から出されたマズイ料理しか思い出せない。あの件をまだ、怒っているのかと思ったがそう言った様子はない。
「ごめん」
「え?」
イズクが謝った事に言葉を失った。反省をするが後悔せず謝罪もしないのがイズクだ。謝罪の言葉を使わないと言う意味ではない。人間関係の潤滑油として使う事はある。特に他人の代わり謝罪する事で自分の価値を上げる手段をよくとる。
そもそも、イズクはカズマにはどんな事があっても謝らない。やってもらって当たり前という考えから礼にかける。
「あの料理、カズの口を合わなかったんだよな。いや……、正直俺も美味しいとは思わなかった」
「そうなのか」
あまりにも美味しそうに食べるため、味覚に差があるだと思っていた。
「カズを貶めるようなこと言って申し訳なかった」
「……」
「今まで、辛かったよね。俺は本当に最悪だ」
「……辛い」
イズクに言われた事に怒りを感じることはあったが彼といて辛いと思った事はない。
「暴言をはき、傷つけたよね。許してなんて言えないけど、なんでもするか俺から離れないでほしい」
「寝ぼけているのか?」
「寝ていたけど、起きたよ」
「まぁ、そーだな」段々面倒臭くなってきた。「同じ勇者パーティーだから行動はともにするよ」
「嘘だ」大きな声を上げた。「今出ていこうとしたでしょ」
「あ~」
寝ていたと思ったのに、気づかれた事に驚いた。イズクは寝たら朝まで余程のことがない限り起きない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

My Doctor

west forest
恋愛
#病気#医者#喘息#心臓病#高校生 病気系ですので、苦手な方は引き返してください。 初めて書くので読みにくい部分、誤字脱字等あると思いますが、ささやかな目で見ていただけると嬉しいです! 主人公:篠崎 奈々 (しのざき なな) 妹:篠崎 夏愛(しのざき なつめ) 医者:斎藤 拓海 (さいとう たくみ)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...