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「おーい」遠くの方から少年の声が聞こえた。彼は布袋を持って戻ってきた。
「あのさ……」カズマの前まで来ると息を整えながら布袋を渡した。「あのさ、母さんに言ったらあるだけ持っていけって。それでも金貨には足りないからって……」
「律儀だな」
「へ?」
「いや」
少年の行動から村の傾向を考えた。素直で堅実だけなら良い。ただ、ここは魔物のいる森の真ん中に位置する村。それだけとは思えない。親切心を疑うのは非礼であるが、そうでなれば旅などできないもの現実。
「ありがとう」
カズマはそう言って袋から上着とズボンを取り出すとイズクに投げた。
「あーー」
イズクは服をひろうと唸りながら、着はじめた。
「え? それだけ? 他のも」と少年は眉を下げて袋を差し出したがカズマは押し返した。
「旅してるかね。たくさんは持って歩けないんだ」笑顔を作りなるべく優しく声をかけた。はずなのに……。
「ひっ……」
少年は引きつった顔をした。それに、イズクは大笑いして近づいてきた。
「ごめんね。この兄ちゃん顔怖いから」
少年の服を着たイズクは外見年齢が更に下がっていた。それはヘラヘラとだらしなく緩んだ表情にも原因があった。
「でも、まぁ。この服だけでいいよ」
「そっか。でも……」
視線を落とし、モジモジとする少年の肩をイズクは軽く抱いた。
「んじゃ、ご飯ちょうだい。めちゃくちゃお腹すいてさ」
「あ、うん。じゃ家来て。聞いてみるから」
少年がイズクの手を引いた。その姿を見守ろうかとしたら、イズクに腕を掴まれていた。
拒否権はない。
少年の家は村へ入った所から数分の場所にあった。少年が服をもってくるのが早かった事に納得した。
家の外見は他の家のと同じ木製だ。
「母ちゃん」
少年が先に入り、カズマとイズクは玄関先で待っていた。
室内はきれいというよりは余計なものが一切ない。掃除は行き届いているようであるが、年数によるいたみがある。補修をしているような箇所もいくつか見える。
「なぁ、俺のおかげでただ飯が食べられるよ」
金貨一枚渡しているからただ飯ではない。
「やっぱり俺ってすごいだろ」
イズクが少年に声を掛けられずに村の酒場に向かえば金貨どころか銅貨で食事をする事ができた。威張られることは何もない。
「カズはさ。もっと愛想よくして方がいいよ。俺もみたいにすれば少しは好かれるじゃないの?」
両手で頬を捕まれ引っ張られた。痛くもかゆくもないが不快だ。
「ほら、すぐ黙って睨む。そういうとこ」
「……」
「だからメンバーとも上手く行かないじゃないの?」
あれらと慣れ合うつもりはない。まともに戦ってくれるならばそれでいい。最悪オトリになればいい。
「別に、イズクがいればいい」
「また、そんな事言って」イズクは照れた笑いを浮かべた。
「嘘でも世辞でもない」
本当にイズクがいれば問題はない。魔物の闘争心を受け入れ平気でいられるのはイズク以外にあった事がない。他は皆、狂人になり暴れ回る。肉体的に限界を超えると廃人となり使い者にならない。
だからイズクには感謝している。どこまで持つか分からないができるだけ長持ちしてほしい。
「そっか」
イズクは嬉しそうに鼻歌を歌っていた。
「あのさ……」カズマの前まで来ると息を整えながら布袋を渡した。「あのさ、母さんに言ったらあるだけ持っていけって。それでも金貨には足りないからって……」
「律儀だな」
「へ?」
「いや」
少年の行動から村の傾向を考えた。素直で堅実だけなら良い。ただ、ここは魔物のいる森の真ん中に位置する村。それだけとは思えない。親切心を疑うのは非礼であるが、そうでなれば旅などできないもの現実。
「ありがとう」
カズマはそう言って袋から上着とズボンを取り出すとイズクに投げた。
「あーー」
イズクは服をひろうと唸りながら、着はじめた。
「え? それだけ? 他のも」と少年は眉を下げて袋を差し出したがカズマは押し返した。
「旅してるかね。たくさんは持って歩けないんだ」笑顔を作りなるべく優しく声をかけた。はずなのに……。
「ひっ……」
少年は引きつった顔をした。それに、イズクは大笑いして近づいてきた。
「ごめんね。この兄ちゃん顔怖いから」
少年の服を着たイズクは外見年齢が更に下がっていた。それはヘラヘラとだらしなく緩んだ表情にも原因があった。
「でも、まぁ。この服だけでいいよ」
「そっか。でも……」
視線を落とし、モジモジとする少年の肩をイズクは軽く抱いた。
「んじゃ、ご飯ちょうだい。めちゃくちゃお腹すいてさ」
「あ、うん。じゃ家来て。聞いてみるから」
少年がイズクの手を引いた。その姿を見守ろうかとしたら、イズクに腕を掴まれていた。
拒否権はない。
少年の家は村へ入った所から数分の場所にあった。少年が服をもってくるのが早かった事に納得した。
家の外見は他の家のと同じ木製だ。
「母ちゃん」
少年が先に入り、カズマとイズクは玄関先で待っていた。
室内はきれいというよりは余計なものが一切ない。掃除は行き届いているようであるが、年数によるいたみがある。補修をしているような箇所もいくつか見える。
「なぁ、俺のおかげでただ飯が食べられるよ」
金貨一枚渡しているからただ飯ではない。
「やっぱり俺ってすごいだろ」
イズクが少年に声を掛けられずに村の酒場に向かえば金貨どころか銅貨で食事をする事ができた。威張られることは何もない。
「カズはさ。もっと愛想よくして方がいいよ。俺もみたいにすれば少しは好かれるじゃないの?」
両手で頬を捕まれ引っ張られた。痛くもかゆくもないが不快だ。
「ほら、すぐ黙って睨む。そういうとこ」
「……」
「だからメンバーとも上手く行かないじゃないの?」
あれらと慣れ合うつもりはない。まともに戦ってくれるならばそれでいい。最悪オトリになればいい。
「別に、イズクがいればいい」
「また、そんな事言って」イズクは照れた笑いを浮かべた。
「嘘でも世辞でもない」
本当にイズクがいれば問題はない。魔物の闘争心を受け入れ平気でいられるのはイズク以外にあった事がない。他は皆、狂人になり暴れ回る。肉体的に限界を超えると廃人となり使い者にならない。
だからイズクには感謝している。どこまで持つか分からないができるだけ長持ちしてほしい。
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イズクは嬉しそうに鼻歌を歌っていた。
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