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村と言っても数件の家があるだけの集落だ。宿場兼酒場が一軒ある。おそらく先行した人間がいると踏んできた。
「あれ? お前どうしたの」
村の入り口でイズクが少年に声を掛けられていた。
「お前、服も着てないし……」少年は眉を寄せた。「親いねぇのか?」
「親……」イズクは首を傾げた。「どうだろう……」
「え、どこから来た?」
「どこ……」
イズクが来た道を指さすと少年は目を大きくした。
「森? あそこは狂暴な魔物はでるんだぞ」
「魔物? 倒したよ」
「何言ってんだ。あっ……」カズマと目が合うと少年は黙り、少し考えてから安心した顔をした。「なんだ、お父さんいるんか」
「お父さん?」
イズクは怪訝な顔をしてカズマ見て「違うよ」ときっぱり否定した。
「兄貴か?」
「同い年だよ。幼い頃から一緒なだけ」
「え」少年はイズクとカズマを何度も見て比較した。イズクは少年と大差ない背格好だがカズマは175㎝あり、誰から見ても成人男性だ。
少年が近づいて来ると、カズマの服を引いた。カズマが少年の身長に合わせてかがむと彼は口を耳元に近づけてきた。
「息子さん大丈夫?」
「うー……まぁ」
イズクの言っている事は全て真実だ。だかそれを説明するのが面倒くさく『息子』というならそれを受け入れた。次合うか分からない相手だ。まともに取り合う必要はない。
「そうだ。君、余っている服ないか?」
そう言って金貨を渡すと少年は目を大きくして満面の笑みで「待ってて」とその場を去った。
もう戻って来ないかもしれないが、それはそれでよかった。服を期待したわけじゃない。これ以上詮索されるのを避けたかった。
「うー……」
イズクは不満そうな顔をして走り去る少年を見ていた。子どもに間違われるなんていつもの事でありそれを利用している事もある。不快に感じても仕方ない事だ。
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