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第19話 人工呼吸

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生徒会の仕事が終わり、レイージョに部屋へ戻ろうと誘った。しかし、用事があると断られ一人寮に向かった。
よくあることであるが、寂しかった。
校舎から寮までは数分の距離であるが、一度外に出なくてはならなかった。

日が完全に沈んでいたが、外灯や月あかりがあるため歩くのに不自由はなかった。しかし、夜道は寂しいかった。
この時間になると、出歩く生徒はおらず時々警護の人間が歩いていた。

「やぁ」

突然話しかけられて、心臓が遥か彼方に行ってしまうかと思った。胸を抑えながら、声の方を向くとワイシャツにネクタイが見えた。
相手と身長差があり、目の前に服しか見えなかった。

「寮にもどるのか?」

上から声がして、顔が上げるとカナイがいた。

「はい」
「送ろう」と言った表情は前髪で見えなかった。

以前、髪を結んであげたが彼はすぐにとってしまったようだ。あの時以降、髪を上げている姿はない。

「髪……」
「あぁ」と言いながら以前結んだ髪ゴムを見せた。「顔を周囲にさらすのは良くない」
「そうなんですか?」

彼も整った顔立ちをしているが、顔を隠しているせいかあまり噂は流れてこない。

「あぁ」短く返事をした。
彼の表情は髪に隠されてよく分からなかった。視線も分からないため何を考えているのか読めず不気味であった。

「それだと、表情がわかりません」
「それがいい」

自分の考えを相手に悟られたくないということだろうか。
そんな、得体の知れない人間に送ってもらうのは気持ちが悪く感じた。

「そうですか。では、私はこれで失礼します。送って頂かなくて構いません」
「暗い。危ない」
「顔の見えない人間と一緒にいる方が危険です」

カナイは少し考えてから手に持っていたゴムで髪を後ろにしばった。

すると、整った顔に鋭い漆黒の瞳が現れた。
その視線は、無数の矢を浴びているように痛く感じた。

「お前は何がしたい?」
「へ?」

唐突な質問に戸惑った。
鬼のような顔で見られたら答えづらい。

「アキヒト様はお前を側妃にしたいという。国を思えばそれが正しい選択だ。彼が出して条件は悪くはなかったはずだ」

“側妃”という言葉を聞いて、ため息と共に顔を歪ませた。王太子に会うたびに“なれ”と言われて、ユウキも他に方法がないなら側妃を進める。

「なんだ? 好いた人間でもいるのか? 添い遂げたいとか?」

カナイの言葉に真っ先に浮かんだのはレイージョであった。

光り輝く銀色の長い髪。
やさしく自分を映すレイージョの青い瞳。
真っ白の透き通った肌は美しく傷一つない。
微笑めば女神。

考えるだけで顔が火照った。

「それは誰だ?」
「……」

レイージョ・アクヤークの名前を言えるわけがない。

「なるほど、言えない人間か」
「……」
「村の人間か?」

平民が貴族に嘘をつくことは許されない。発覚すれば生まれた村を殲滅させられてしまう。だから、ミヅキは黙るしかなかった。

「僕が知っている者か?」

確信に近づくたびに心臓の音が早くなり、落ち着かない。

「だんまりか」とカナイは何度か頷いた。「そうだなぁ。相手は貴族か?」

何も答えていないのにどんどん真相に近づいていくのが怖かった。その場から逃げたかったが、足が震えて動かなかった。
カナイと視線を合わすことができない。

「クラスの人間じゃないだろう。交流がなさすぎる。生徒会か」
「……」
「僕やユウキなら公言すればいい。それだけの魔力があれば結婚も可能だろう」
「そうなんですか?」

平民が貴族と結婚できるというのは驚いた。貴族に気に入られた平民が妾にされ飽きたら捨てられてという話はよく聞く。

「あぁ、王族じゃないしな」そう言って少し考えた。「ユウキの家は少し問題があるかもしれないが僕の家は大丈夫だ。僕と結婚するか?」
「いやです」即答した。

王太子ほど、嫌悪感があるわけではない。むしろ、何もない。彼の事がよく分からないのだ。

「そうか。ではどうする?」
「側室回避方法は御三家貴族との結婚ですか?」
「そうだな。それが簡単だ。その魔力が国から出ず、国に貢献してくれればいい。御三家貴族以外の貴族に力を持たれては困るし平民など問題外だ」
「御三家貴族が反乱を起こすことは考えないのですか」

御三家貴族への信頼が厚いなと思った。自分が王ならそんなに大切な魔力を自分以外に渡したくないと思った。

「王族と言っても血縁関係があるわけじゃないだ。エラーヒト家は、御三家貴族で出来ている家系だ。アキヒト様は今の国王の子だが母の王妃はショータ家の者だ。側妃はクラーイ家だ。前国王はクラーイ家からエラーヒト家に養子になっている」

初めて聞く話だが、カナイが平然と話している所を見ると誰もが知っていることなのだろう。

「だから、王太子の婚約者はアクヤーク家なんですね」

ミヅキの言葉にカナイはゆっくりと頷いた。

「それでは、外部の人間が王家に入ったら大変ですね」
「王妃も側室も御三家貴族当主の承諾が必要だからまず外部に人間は入れないが高魔力の場合は別だ」

王家の事情は理解したが、側室になる気もユウキやカナイと結婚する気もなかった。御三家貴族なら誰もいいと言うなら、レイージョと結婚したかった。しかし、王太子の婚約者であるゆえにそれは叶わない。

高魔力者である自分を国に留めておくためにレイージョは優しくしてくれた可能性はあると思っていたが考えないようにしていた。いつか、側妃になることや御三家貴族の誰かと結婚することを強要されるかと思うと心が死にそうになった。

「そこでだ」カナイは言葉を止めてじっとミヅキを見た。「お前が一緒にいたいと思う人間はだれだ?」
「……」
「僕でもユウキでもない御三家貴族か?」

ここまで言われたら、頷くしかなかった。
問い詰めるような話し方をしていたが、彼はきっと知っていたのだろう。

「その方を裏切らないと誓えるか?」
「それは勿論です」
「そうか。では、裏切ったら命を持って償えよ」
「はい」

その時、カナイは寮の方を見て顔をしかめると「では」と一言いってその場から足早に去って行った。
まるで、何かから逃げるようにいなくなったことにミヅキはキョトンとしてその場に立ち尽くした。

「ミヅキ」後ろから聞きなれた声がした。
その声に心が温かくなり、振り返ると寮の扉からレイージョが走ってきた。いつも優雅に歩いている彼女にしては珍しい慌てようだ。

レイージョに会えたのが嬉しくて落ち込んでいた気持ちがなくなった。

「レイ様」

地面を蹴って、レイージョの元へ行くと彼女に飛びついた。すると、抱きしめてくれた。
レイージョの小ぶりであるが形の良い胸に顔をうずめた、彼女の匂いに包まれて幸せな気持ちになった。

「ミヅキ、大丈夫? 今の、カナイ・クラーイよね。何か言われた? 珍しく髪を上げていたみたいだけど……」
「だ、大丈夫です。髪は私が、表情が見えない人間と会話できないと言ったので上げてくれました」
「あら」

レイージョはすこし身体を離すとミヅキの瞳を見た。
そして、優しく微笑みながら「意見を言えてえらいわ」と褒められた。
それが嬉しくて仕方なかった。

「それでどんな話をしたの?」

カナイとの話をレイージョにして話していいか迷った。話すと自分の気持ちがレイージョに伝わってしまい恥ずかしくも怖くもあった。

この気持ちを彼女に否定されたら立ち直れない気がした。
レイージョに突然冷たくされても、何を言われても笑って従おうと思っていたが好きという気持ちが膨らめば、膨らむほど貪欲になっていく自分がいた。

「大丈夫よ。ミヅキ」レイージョはそう言って抱き寄せた。「何があってわたくしは貴女の傍にいるわ」

レイージョの優しさに涙が出た。
彼女を信じたい。
傍にいたい。

“でも……”と思ってしまう自分がイヤだった。

「不安なのね」そう言って、レイージョは身体を離すとミヅキの手を引いた。

手を引かれて、部屋に戻ってくるソファに促された。座ってぼーっとしているとレイージョに紅茶を渡された。それを受け取ると、彼女は隣に座った。

紅茶を口に入れると、その香りで気持ちが落ち着いた。

レイージョが両手抱えられるサイズの小さな箱をローテーブルに置いた。ミズキはそれを不思議に思いながらじっと見た。
彼女は、微笑みながらミヅキが持っていた紅茶を取るとそっとローテーブルに置いた。

「あの……」
「手を出して」
「はい」

言われるままにおずおずと右手を出すと左だと言われた。
首を傾げると、利き手でない方がいいと言う。何がはじまるのか疑問であったが、不安はなかった。

レイージョは箱からシルバーの指輪を取り出すと、ミヅキの薬指にはめた。もう一つの指輪を自分の左手薬指にはめるとミヅキの手と合わせて、指輪同士をくっつけた。

「これは、魔道具」
「……はい」
「お互いの魔力を流すことでわたくしと繋がるわ」
「レイ様と……?」
「ええ」ゆっくり頷いたレイージョは穏やかな顔をしていた。「これで、お互いの場所がわかり、傷や命を共有するの」
「レイ様と一緒に死ねるのですね。しかも痛みまでも」

嬉しくて、嬉しくて、天に上る気持ちであった。

「うれしいの?」
「はい」

少し不安そうにするレイージョに、ミヅキは満面の笑みで即答した。

なぜ、平民である自分とそんな魔道具を使うのが分からなかったがレイージョの気が変わらないうちにさっさと結びたかった。
しかし、魔力を流すやり方が分からない。とりあえず、目をつぶりつけられた指輪に集中した。

すると、突然周りの音が聞こえなくなった。しかし不思議と不安を感じなかった。

しばらくすると映像が頭に中に流れてきた。

青い顔をした王太子がいた。そこは自分が生活する女子寮と同じつくりになっているため、男子寮ではないかと思った。

王太子はソファに座るカナイの前に立ち問い詰めているようであったが、カナイをいつもと変わらない無表情であった。

「どういうことだ」

いつもと全く違う荒々しい声を王太子は上げた。

「言われたからです」
「君は、カナイは言われたらなんでもするのか? 違うだろ」
「大したことでは、ありません」
「そんなことはない。だって、それを始めた理由があるだろ。彼女に見せたら……。もしかしてアレは本気か?」
「ええ」カナイは頷いた。「それでも結果的には問題がないと思います」

王太子はカナイの胸ぐらをつかんだ。それの手はプルプルと震えている。

「この前の話と違うではないか」感情に任せた大声を出した。「君が言うから、私は覚悟を決めて……」

その習慣、カナイは目を大きく開いた切羽詰まる王太子を見た。

「本気ですか?」そう言って、王太子の頬にふれるカナイの顔はまるで愛しい人を見るようであった。

「あぁ、私は……」

そこで、プツンと映像が切れると身体を抱きしめられている感覚があった。そして、「落ち着いて、大丈夫だから」という声が聞こえた。
その声がレイージョの物だとわかるまで時間が掛かった。

目を開けると、自分を抱きしめているレイージョが苦痛の表情を浮かべていた。驚いて彼女から離れようとしたが、抱きしめられて動くことができない。

「レ、レイ様」

声を掛けると「大丈夫」と苦しげな声を上げている。辛くて目を開けることができないようである。

顔を動かすとレイージョとミヅキの指輪が赤く光っていた。この光は、部屋の登録をした時に見た光と同じだ。

「え、これ? これが痛いのですか?」

ミヅキは止めようとしたがやり方が分からない。手を離そうとしたがぴったりくっついて離れない。

「私が、魔力を流そうとしたから?」動揺した。

レイージョは苦しそうなのに、ミヅキを右手で支え「わたしくしがいるから大丈夫」と言っている。辛いのに自分を優先してくれるレイージョに涙が出た。

「う……」と声を上げるとレイージョの呼吸が止まった。

「え、なんで。レイ様? レイ、レイ……」

敬語も忘れて必死に声を掛けたが、息をする様子はない。
少し考えたあと、レイージョを押してソファに倒すと自分がのしかかる形になった。

「レイ……」

涙を流しながら口づけをした。そして、自分の空気を必死にレイージョの中に入れた。何度も繰り返した。

「うっ、あ……」と言ってレイージョがむせて、咳き込んだ。

「レイ」と言いながら、彼女を横向きにして背中をなぜた。すると、彼女の口から赤い石が出てきて床に転がった。

「はぁはぁ」

レイージョは、呼吸を整えながらミヅキを見た。彼女は目に涙を浮かべて、口からは涎を垂らして貴族とは思えないほど乱れていた。それなのに小さな声で「ミ、ミヅキ。だ、大丈夫?」と心配してくれた。

「レイー-」

抱き着いて、涙を流した。本当に無事でよかった。
レイージョも抱きしめ返してくれた。そこで、くっついていた左手が離れていることに気づいた。
指輪はシルバーであったのに真っ赤に染まっていた。
レイージョの手を取り確認すると同じように赤くなっていた。

「レイ様これ」
「レイではいいわ。さっき呼んでくれたのよね?」レイージョはハンカチで自分の顔を拭きながら言った。

「そんな……」

「それに」そう言ってレイージョはミヅキの唇に触れた。「口づけ、嬉しいわ」

色々思い出して、顔が火照るのを感じた。心臓が早くなり今にも爆発そうにであった。

「いえ、あの……。婚約者がいるのに、私。でも、助けたくて」言葉が上手く発せずたどたどしくなっていたが、それをレイージョは微笑みながら見ていた。

「婚約者?」レイージョはすこし考えてからニヤリと笑った。「そうよね。ミヅキはわたくしの一番になりたいわよね。それにはあの人邪魔ね」
「邪魔なんて、そんな……」

慌てて首をふると、レイージョに睨まれた。

「なによ。キスまでしたのに一番になりたくないの?」
「いえ、なりたくないわけでは……。それにアレはキスじゃなくて、レイ様を助けるた……」

話している途中で、唇で口を塞がれた。そして舌で口をこじ開けられて、レイージョの舌が口の中に入りミヅキの舌に絡んだ。
くちゅくちゅと言う卑猥な音がした。

気持ちよくて何も考えられなくなった。

唇同士が離れるとき透明な糸がお互いの口を繋いでキラキラと光っていた。

「これでキスよね」
「……はい」

頭はふわふわして、思考が上手く働かなかった。
レイージョに頬を触れられ、彼女の顔が近づいてきた。またキスをされるのかとドキドキしたが唇が触れるか触れないかの距離で止まった。

「また、口づけが欲しくなった?」ニヤリとレイージョは笑った。「わたくしをレイと呼びなさい」
「……はい」

返事をすると、レイージョの唇の柔らかい感触がした。口を開け舌でレイージョの唇に触れると中に招かれた。
そこで、ゆっくりと舐めとられた。
全身に電撃が走り、身体が宙に浮いている気持ちになった。

唇が離れた時には全身から力が抜けて一人では立てなかった。レイージョは優しく支えてくれ、頭をなぜてくれそれが心地よかった。

「レイ様、あの指輪のことと床にある石なんですが……」
「違うわよ」

言葉の途中で強く否定された。
穏やかに微笑むレイージョに見つめられて、「約束よね」と言われたので小さく頷いて言い直すことにした。

「レイ、指輪と床にある石のことなんですが」
「ええ」言い直したことでレイージョは満足そうに頷いた。「ミヅキ、手を合わせた後魔力を流そうとした?」
「はい」
「余りの大きな魔力に魔道具が想定外の反応をしたのよ。本来はお互いに魔力を流すと指輪が一瞬光って契約が成立するの。けど、ミヅキが魔力を流した途端、真っ赤に光って手が動かせなくなったの。その魔力がわたくしにも流れてきたようね」
「あ……」レイージョが苦しくなったのは自分のせいだとミヅキは落ち込んだ。

「気にしないで。助かったし、ミヅキに口づけをしてもらえたから役得よ」とレイージョは艶麗な笑みを浮かべた。それにドキリとして顔が熱くなるのを感じた。

「ふふふ」そんなミヅキの反応を楽しむように笑いながら、赤く染まった指輪を見た。「だからね、変体した指輪の効果は分からないのよね」

そう言いながら、立ち上がり床に落ちた石を拾った。

「あら、割れているわ」

レイージョは、綺麗に二つに割れた赤い石を見せてくれた。アリほどの大きさの石はキラキラと輝いて綺麗であった。

「綺麗ですね。1つ貰っていいですか?」

ミヅキの言葉に驚いたようだがすぐに頷いた後、待つように言われてその場を離れた。レイージョが離れると不安になった。
その時、レイージョが近くにいるような気がした。数メートル以内にいることがはっきりと分かった。

「レイの場所が分かる。これが指輪の力……?」
「多分ね」

戻ってきたレイージョが答えながら、ミヅキの横に座った。

「この指輪を使ったのは初めてだから、これがこの指輪の正常な機能なのかわからないわ。でも、お互いの場所が分かるのは安心できていいわね」
「……はい」

レイージョの“初めて使った”と言う言葉に安堵した。彼女に接近した人物がいたと思うと心穏やかではいられなかった。
だから、王太子なんて大っ嫌いだ。

「これ、上げるわ」

そう言って出したのは銀色小さなケースに鎖がついていた。それを受け取ると、ケースを開けて見た。中には赤い石が入っていた。

「ありがとうございます」
「つけてるわよ」
「はい」

レイージョの首元の方を見ると、彼女も同じネックレスをつけていた。

「お揃い」
「ええ、うれしい?」
「はい」

つけてもらったケースを握りしめて頷いた。そして、魔力を使っている時見たモノをレイージョに話すかどうか迷った。
その時、苦しみながらも自分のことを案じてくれたレイージョを思い出した。彼女に隠し事はいけないと思った。

「あの、その……」

つたない言葉で、ゆっくりと見たモノを説明した。彼女は急かすことなく聞いてくれたので話やすかった。

「それは予知夢か遠隔透視ですわね」全て話を聞き終わると、頷いた。「過去に今回のようなことあったかしら?」

レイージョに言われて、思い返してみた。そして、思い出した。
“レイージョが婚約破棄されるもの”と“王太子に教室から連れ去られるモノ”だ。この二つも丁寧にレイージョに説明した。

「教室から連れ去られるのは、似たようなことが現実にありました。というか、日常にように教室に迎えに来ます」

ため息交じりでいうとレイージョは「あらあら」と笑って返した。この話は有名なことであるためレイージョが驚かないのも無理はない。
しかし、目が笑っていないが怖かった。

「多分、予知夢ね。ミヅキの魔力による特殊能力じゃないかしら」
「じゃ、もしかして“婚約破棄”も」

「そうね」レイージョは意味深に笑った。「それは任せなさい」
「え……あの」

不安になりレイージョの瞳を見ると、優しく顎に触れられた。

「わたくしの全てをミヅキにあげるわよ」そう言うと、レイージョは唇を重ねた。
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