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愛
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襲撃事件から数ヶ月がたち、戴冠式も無事終了することができた。前国王の魅了魔法の効果は切れているはずであるが反乱がおきる様子はない。
アーサーの話では闇市の潜伏していたグレース殿下の弟であるアルバート殿下が抑えてくれているとの話である。
グレース殿下らの協力のもと税金を見直したことに効果があったみたいだ。今までは各領地の貴族に一存していたがそれをすべて洗いなおしたのである。すると、色々でてきて結果、民の税を減らすことができたのだ。
「税金……」
目の前に座る可愛い義理の妹、カミラがペンと紙を持ち必死に勉強をしている。先月誕生祭を迎え4歳になったカミラは本格的な学習がはじまったのである。
本当は、彼女には私が教えようと思っていたがルイが摂政の仕事と兼用は難しいと判断したので家庭教師はおじさんだ。
今日は税金の授業であったため、国内の現状と共に税金の話を私がした。
彼女にはしっかりと国内外の情勢を学ぶ必要があるのだ。なにせ、ルイも私も子どもがいない。そのため王位継承権は今カミラにある。今後も子どもを作るつもりはないのでカミラが次の王となるだろう。
「それでは今日はここまでにしましょうね」
私の斜め横に座っているおじさんは優しく言うと手にしていた本を閉じた。するとカミラはにこりと笑い、優しく本を閉じると礼をいった。
おじさんの授業はとても分かりやすい。そして、可愛いらしい女の子の外見をしているため悔しいことにカミラはとても懐いているのだ。
「これからエマ王太后行くのですか」
「はい。母上のお腹に触ると動いているのがわかるのです」
カミラは嬉しそうに話す。
エマ王太后のお腹には今、命が宿っている。数ヶ月の襲撃事件で、クリスティーナ前宰相とアーサーそして前国王の会議に参加できなかったのはそれが理由であった。
おそらくお腹にいる子どもが次の摂政となる。
「オリビア様とお兄ちゃまは、まだここに居られますか」
「そうだね。カミラは退室していいよ」
私が退室許可を出すと嬉しそうに笑い、席を立つと私たちに挨拶をして扉を出ていった。本来は私たちが退室しないとカミラは部屋から出ることができない。だから退室許可を求めたのである。
カミラが退室したのを確認すると私はおじさんの方を見た。
「オリビア嬢はアイラ様の事を知っていたのですか」
ずっと聞きたかった質問をおじさんに投げかけた。本当はもっと早く聞きたかったのだがおじさんも私自身も忙しく時間がとれなかった。またこんなことは二人きりの時に話をしたかった。
「なんでしょうか?」
おじさんはニヤリと笑う。さっきカミラに向けた表情とはまったく違う。私の言いたい事が分かっていてあえて知らないふりをしているのだ。
意地が悪い。
「……」
私がしばらく目を細めて見ているとおじさんは眉を下げて謝罪した。
「そんな顔をしないでください。お話します」
そういうと手を頬にあてさすっていた。私は何も言わずにおじさんのから一切目を離さなかった。するとバツの悪そうな顔した。
「おっしゃるとおりです。私はアイラ様が出身国で不当な扱いをうけた事から男性を好きではない事を知っていました。更に権力が大好きなことも……その上でルイ国王陛下に紹介を頼んだのです」
そう、ルイがおじさんに紹介する女性というのはアイラだった。おじさんは全てを知っており、それをルイに説明して紹介を求めたのだ。彼女を得るために魔法契約をすることに応じたらしい。
「だって……ずっと主人公が大好きだったですよ」
「女同士ですよ」
「すばらしいじゃないですか」
おじさんは頬を真っ赤に染めてほほ笑んでいる。
夢属性の百合なの?
「でも、適当にあしらわれていませんか」
アイラはおじさんに好意的ではない。最初は私の婚約者ということで丁寧に接していた。しかし、婚約者は名ばかりであり自分に思いを寄せていると知った途端、眉を寄せていた。
「それもまたいいです」
おじさんは両手を頬にあてると身体を左右に振った。とても可愛らしい姿で一瞬見惚れてしまった。
しかし、女の子にそでにされて喜んでいる中年男だ。冷静に考えると気持ちが悪い。
コンコン
扉を叩く音がしておじさんが返事をした。私が視線を扉に移すと開き、ルイが現れた。
「ルカ」
ルイは挨拶もしないで私に駆け寄ってきた。その後ろからゆっくりと入室する影があった。その者は背中まで伸びた漆黒の髪に髪と同じ色をした瞳を持っている。
アイラ……。
アイラは丁寧、おじさんと私に挨拶をした。その数秒後にはおじさんがアイラの隣にいた。
このおじさんの行動力はすごいと思う。
「国王陛下」
そう言って私が立ち上がるとルイは人差し指を私の口元に持ってきて「ルイだよ」と言った。
アイラは真横で口説いているおじさんを無視して細い目で私を見ている。
ルイは人目がなくなるとすぐに国王をやめてしまう。アイラには婚約前からすべて話してあったようで彼女にも素を隠そうとしないのだ。
「国王陛下、ルカ摂政、私はこれで失礼します」
そう言ってお辞儀をすると出て言ってしまった。それを見ておじさんも私たちに挨拶をするとアイラを追って出ていってしまった。
「アイラ様はなぜここに来られたかな」
アイラの十分もこの部屋に滞在しなかった。しかも私には挨拶しかしていない。
「わかんない?」
「うん」
「なんて言ったらいいのかな?」
ルイは二人が出て言った扉をじっと見て考えていた。そして「あ」っと何かを思い出したようで声をあげた。そして私の顔をみた。
「確か、オリビア嬢は彼女の事を“ツンデレ”と言っていたよ」
そう言ってルイはニコリと私にほほ笑んだ。
アーサーの話では闇市の潜伏していたグレース殿下の弟であるアルバート殿下が抑えてくれているとの話である。
グレース殿下らの協力のもと税金を見直したことに効果があったみたいだ。今までは各領地の貴族に一存していたがそれをすべて洗いなおしたのである。すると、色々でてきて結果、民の税を減らすことができたのだ。
「税金……」
目の前に座る可愛い義理の妹、カミラがペンと紙を持ち必死に勉強をしている。先月誕生祭を迎え4歳になったカミラは本格的な学習がはじまったのである。
本当は、彼女には私が教えようと思っていたがルイが摂政の仕事と兼用は難しいと判断したので家庭教師はおじさんだ。
今日は税金の授業であったため、国内の現状と共に税金の話を私がした。
彼女にはしっかりと国内外の情勢を学ぶ必要があるのだ。なにせ、ルイも私も子どもがいない。そのため王位継承権は今カミラにある。今後も子どもを作るつもりはないのでカミラが次の王となるだろう。
「それでは今日はここまでにしましょうね」
私の斜め横に座っているおじさんは優しく言うと手にしていた本を閉じた。するとカミラはにこりと笑い、優しく本を閉じると礼をいった。
おじさんの授業はとても分かりやすい。そして、可愛いらしい女の子の外見をしているため悔しいことにカミラはとても懐いているのだ。
「これからエマ王太后行くのですか」
「はい。母上のお腹に触ると動いているのがわかるのです」
カミラは嬉しそうに話す。
エマ王太后のお腹には今、命が宿っている。数ヶ月の襲撃事件で、クリスティーナ前宰相とアーサーそして前国王の会議に参加できなかったのはそれが理由であった。
おそらくお腹にいる子どもが次の摂政となる。
「オリビア様とお兄ちゃまは、まだここに居られますか」
「そうだね。カミラは退室していいよ」
私が退室許可を出すと嬉しそうに笑い、席を立つと私たちに挨拶をして扉を出ていった。本来は私たちが退室しないとカミラは部屋から出ることができない。だから退室許可を求めたのである。
カミラが退室したのを確認すると私はおじさんの方を見た。
「オリビア嬢はアイラ様の事を知っていたのですか」
ずっと聞きたかった質問をおじさんに投げかけた。本当はもっと早く聞きたかったのだがおじさんも私自身も忙しく時間がとれなかった。またこんなことは二人きりの時に話をしたかった。
「なんでしょうか?」
おじさんはニヤリと笑う。さっきカミラに向けた表情とはまったく違う。私の言いたい事が分かっていてあえて知らないふりをしているのだ。
意地が悪い。
「……」
私がしばらく目を細めて見ているとおじさんは眉を下げて謝罪した。
「そんな顔をしないでください。お話します」
そういうと手を頬にあてさすっていた。私は何も言わずにおじさんのから一切目を離さなかった。するとバツの悪そうな顔した。
「おっしゃるとおりです。私はアイラ様が出身国で不当な扱いをうけた事から男性を好きではない事を知っていました。更に権力が大好きなことも……その上でルイ国王陛下に紹介を頼んだのです」
そう、ルイがおじさんに紹介する女性というのはアイラだった。おじさんは全てを知っており、それをルイに説明して紹介を求めたのだ。彼女を得るために魔法契約をすることに応じたらしい。
「だって……ずっと主人公が大好きだったですよ」
「女同士ですよ」
「すばらしいじゃないですか」
おじさんは頬を真っ赤に染めてほほ笑んでいる。
夢属性の百合なの?
「でも、適当にあしらわれていませんか」
アイラはおじさんに好意的ではない。最初は私の婚約者ということで丁寧に接していた。しかし、婚約者は名ばかりであり自分に思いを寄せていると知った途端、眉を寄せていた。
「それもまたいいです」
おじさんは両手を頬にあてると身体を左右に振った。とても可愛らしい姿で一瞬見惚れてしまった。
しかし、女の子にそでにされて喜んでいる中年男だ。冷静に考えると気持ちが悪い。
コンコン
扉を叩く音がしておじさんが返事をした。私が視線を扉に移すと開き、ルイが現れた。
「ルカ」
ルイは挨拶もしないで私に駆け寄ってきた。その後ろからゆっくりと入室する影があった。その者は背中まで伸びた漆黒の髪に髪と同じ色をした瞳を持っている。
アイラ……。
アイラは丁寧、おじさんと私に挨拶をした。その数秒後にはおじさんがアイラの隣にいた。
このおじさんの行動力はすごいと思う。
「国王陛下」
そう言って私が立ち上がるとルイは人差し指を私の口元に持ってきて「ルイだよ」と言った。
アイラは真横で口説いているおじさんを無視して細い目で私を見ている。
ルイは人目がなくなるとすぐに国王をやめてしまう。アイラには婚約前からすべて話してあったようで彼女にも素を隠そうとしないのだ。
「国王陛下、ルカ摂政、私はこれで失礼します」
そう言ってお辞儀をすると出て言ってしまった。それを見ておじさんも私たちに挨拶をするとアイラを追って出ていってしまった。
「アイラ様はなぜここに来られたかな」
アイラの十分もこの部屋に滞在しなかった。しかも私には挨拶しかしていない。
「わかんない?」
「うん」
「なんて言ったらいいのかな?」
ルイは二人が出て言った扉をじっと見て考えていた。そして「あ」っと何かを思い出したようで声をあげた。そして私の顔をみた。
「確か、オリビア嬢は彼女の事を“ツンデレ”と言っていたよ」
そう言ってルイはニコリと私にほほ笑んだ。
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