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休憩
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クリスティーナは罪人であるが、孫のオリビア嬢は私の婚約者候補でありルイと魔法契約をしている。そして、息子である副団長ウィリアムは母であっても国の仇となる判断し躊躇なく討伐したその国への忠誠心は疑いようがない。そのことによりクラーク家の取り潰しはなくなった。
それはつまり、クリスティーナを罪人として発表できないという意味である。
よって国王陛下病死とクリスティーナ宰相は病死扱いとなった。
クリスティーナ宰相の死はともかく、国王が殺害されて病死扱いになるのは漫画と同じだ。漫画補正かと思ったが犯人が違う。漫画で国王を殺害するのはルイだ。主人公のアイラを溺愛したルイは彼女に危害を加えた国王を憎んでいた。
侵入者については他国の謀反ものとして処刑されたことになった。アンドレーと言う名前を出すわけにはいかない。そもそもアンドレーの兄である当時まだ王子であったフィリップ国王の暗殺未遂を公共していない。アンドレーもまた病死となっている。
この世界では子どもが病死することは珍しくなく、生まれてきた子ども全員が大人になることの方が珍しい。大人でも病気になれば助からないことも多い。だから隠さなくてはいけない死はすべて病死扱いなのだ。
そこまで考えてあたりを見回す。休憩中のため、会議室にはアーサーと私しかいなかった。アーサーは動きたくても動けないのかもしれない。なんだか顔色が悪い気がするがそれを指摘しては悪いと思った。
体調のことは自分が一番よく知っているだろう。無理してでも出たい会議なのだ。
私は席を立ちアーサーのそばに言った。私の気配に気づいたようで声をかけなくても、包帯まみれのアーサーが私の方を見た。
「なぁに?」
そう言ってニコリ笑うアーサー。「大丈夫ですか」なんて安易な言葉はかけられない。大丈夫ではない。本当なら今すぐに横になった方がいい。
「ありがとうございます。アーサー殿が戦わなければ……」
「別にお礼はいいよ。僕は僕が守りたいものがあっただけだから」
そう言ってチラリと叔父が座っていた席を見た。
普段はお互いそっけない態度だが、二人は仲が良い。漫画のBL枠はこの二人なのだ。しかし、チャラ男×クールは私の好みとは違うので、漫画の時は二人に余り興味がなかった。
勿論、今は大好きだし、信頼している。だからこそ逆にそういう事を考えづらくなった。
3次元も範囲外なんだよね。私は地雷が多い。
漫画でのエマ第二王妃は不倫を国王に疑われ心を病み自殺している。王妃である姉の死に叔父も心を病むのだ。だからアーサーは叔父を連れて国を出た。
彼もまたアレクサンダー王家の血が流れるものだ。依存性は高い。だから叔父が国に滞在しているうちは彼が住むこの国を守るために力になってくれると思い、次も役職につくことをお願いしたのだ。
「そうですか。それではこれからもよろしくお願いします」
私の言葉にアーサーはニコリと笑い「仰せのままに」と頭を下げた。今までは王子とはいえ、役職がなく年下であったが今後は違う。
アーサーは“体調のため座ったまま、膝つかない”事を詫びた。
私はまだ正式に摂政にはなっていないためかしこまる必要ないと思った。それに周囲の目がなければ今まで通り接してもらって構わない。
そもそも、私は摂政の仕事を全く理解していない。本来ならば職務につく前に前摂政付きとして仕事をするが今回はすぐにルイが国王に即位するため叔父が摂政のままでいるわけにはいかない。表向きだけでも私が摂政となる必要があるため、叔父にはしばらくは補佐をしてもらう。
問題は王妃だった。エマ第二王妃がしばらく職務を行う事になるがいつまでそのままという訳には行かない。
昨日その確認をしたらルイは"候補はいる"と言うのだ。ルイは以前"結婚したくない"と言っていたが国王になる以上それは免れない。そして王妃は我が国では職務であるが他国同様"妻"という役割もある。
それは相手がいるという事は祝福すべきことであるが複雑な気持ちだった。彼は私を"好き"と言って"結婚したくない"と言っていたのにと思ってしまう。
なんだか自分の気持ちが分からなくなったのだ。
会議の休憩が終了して皆が戻ってきた。ここから行われる会議は今後の国をきめる人事の決定だ。私情を挟んでいる場合ではない。
それはつまり、クリスティーナを罪人として発表できないという意味である。
よって国王陛下病死とクリスティーナ宰相は病死扱いとなった。
クリスティーナ宰相の死はともかく、国王が殺害されて病死扱いになるのは漫画と同じだ。漫画補正かと思ったが犯人が違う。漫画で国王を殺害するのはルイだ。主人公のアイラを溺愛したルイは彼女に危害を加えた国王を憎んでいた。
侵入者については他国の謀反ものとして処刑されたことになった。アンドレーと言う名前を出すわけにはいかない。そもそもアンドレーの兄である当時まだ王子であったフィリップ国王の暗殺未遂を公共していない。アンドレーもまた病死となっている。
この世界では子どもが病死することは珍しくなく、生まれてきた子ども全員が大人になることの方が珍しい。大人でも病気になれば助からないことも多い。だから隠さなくてはいけない死はすべて病死扱いなのだ。
そこまで考えてあたりを見回す。休憩中のため、会議室にはアーサーと私しかいなかった。アーサーは動きたくても動けないのかもしれない。なんだか顔色が悪い気がするがそれを指摘しては悪いと思った。
体調のことは自分が一番よく知っているだろう。無理してでも出たい会議なのだ。
私は席を立ちアーサーのそばに言った。私の気配に気づいたようで声をかけなくても、包帯まみれのアーサーが私の方を見た。
「なぁに?」
そう言ってニコリ笑うアーサー。「大丈夫ですか」なんて安易な言葉はかけられない。大丈夫ではない。本当なら今すぐに横になった方がいい。
「ありがとうございます。アーサー殿が戦わなければ……」
「別にお礼はいいよ。僕は僕が守りたいものがあっただけだから」
そう言ってチラリと叔父が座っていた席を見た。
普段はお互いそっけない態度だが、二人は仲が良い。漫画のBL枠はこの二人なのだ。しかし、チャラ男×クールは私の好みとは違うので、漫画の時は二人に余り興味がなかった。
勿論、今は大好きだし、信頼している。だからこそ逆にそういう事を考えづらくなった。
3次元も範囲外なんだよね。私は地雷が多い。
漫画でのエマ第二王妃は不倫を国王に疑われ心を病み自殺している。王妃である姉の死に叔父も心を病むのだ。だからアーサーは叔父を連れて国を出た。
彼もまたアレクサンダー王家の血が流れるものだ。依存性は高い。だから叔父が国に滞在しているうちは彼が住むこの国を守るために力になってくれると思い、次も役職につくことをお願いしたのだ。
「そうですか。それではこれからもよろしくお願いします」
私の言葉にアーサーはニコリと笑い「仰せのままに」と頭を下げた。今までは王子とはいえ、役職がなく年下であったが今後は違う。
アーサーは“体調のため座ったまま、膝つかない”事を詫びた。
私はまだ正式に摂政にはなっていないためかしこまる必要ないと思った。それに周囲の目がなければ今まで通り接してもらって構わない。
そもそも、私は摂政の仕事を全く理解していない。本来ならば職務につく前に前摂政付きとして仕事をするが今回はすぐにルイが国王に即位するため叔父が摂政のままでいるわけにはいかない。表向きだけでも私が摂政となる必要があるため、叔父にはしばらくは補佐をしてもらう。
問題は王妃だった。エマ第二王妃がしばらく職務を行う事になるがいつまでそのままという訳には行かない。
昨日その確認をしたらルイは"候補はいる"と言うのだ。ルイは以前"結婚したくない"と言っていたが国王になる以上それは免れない。そして王妃は我が国では職務であるが他国同様"妻"という役割もある。
それは相手がいるという事は祝福すべきことであるが複雑な気持ちだった。彼は私を"好き"と言って"結婚したくない"と言っていたのにと思ってしまう。
なんだか自分の気持ちが分からなくなったのだ。
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