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目的は果たされた
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おじさんが指をさしたのは国王が映っている映像だ。国王はテーブルに手を置いて座っており、その横にクリスティーナ宰相がいる。
そこまではアンドレーが現れる前に見た映像と一緒だ。しかし、二人の騎士が国王よりも前に出て剣を構えている。その剣の先にいるのはアンドレーである。
アンドレーの後ろには出入口の扉があり、空いている。そして、人の足のようなものが見えた。おそらく扉の前を護衛していた衛兵か騎士であろう。
国王が立ち上がりアンドレーの名前を呼び近づこうとしたが騎士の一人が国王の前に手をだしそれをとめている。
『久しぶりですね。兄上』
アンドレーは丁寧な口調で挨拶したが、丁寧なのは口調だけである。片足に体重をかけ腕を組みニヤニヤと笑う様子はとても国王に会いにきた態度には見えない。
クリスティーナ宰相はアンドレーを睨みつけながら立ちあがり、国王に側へ移動した。騎士たちは二人を守るように更に前に出る。その間アンドレーから一切、目を離さない。
『国王陛下こちらへ』
クリスティーナ宰相が国王の手をひき、部屋の奥へ移動しようとアンドレーに背を向けた。そのため国王とクリスティーナの顔を見ることができた。
クリスティーナ宰相は突然、彼女は驚いた顔して立ち止まる。何かにぶつかったようだ。目の前の空間に触れている。
どうやら見えない壁があるようだ。
クリスティーナ宰相は勢いよく振り向きアンドレーを睨みつけている。
この二人はとても険悪に見える。取引をしている関係ではなかったのだろうか。それとも何かお互いに合図を送っているのか。
アンドレーは変わらず、ニヤニヤと笑いながら国王とクリスティーナ宰相を見ている。剣を向けられている騎士たちには興味ないようである。仮に騎士に攻撃をされてもきっとアンドレーにとっては“カに刺される”のと変わらないのだろう。その実力差を理解しているから騎士も迂闊に手を出さずにいるのだ。勿論護衛騎士だからアンドレーが攻撃をすれば敵わないと分かっても命をかけて戦う。
瀕死でも逃げずに戦っていたトーマス騎士団長を思い出した。
『宰相殿、今が好機ですよ』
アンドレーの言葉にクリスティーナ宰相は答えない。彼女はアンドレーの方を向いているため表情が見えないがきっと悔しい顔をしているだと思う。
しかし、クリスティーナ宰相が国王暗殺をするならば今がチャンスである。真横にいる国王を護身用のナイフで刺しアンドレーと共に逃げればよいのだ。
「なんでクリスティーナ宰相は実行しないのだろう」
私は映像を見たままつぶやいた。すると、おじさんは私の方を見て「できないですよ」と言ったので彼の方に視線を送った。
「国王殺しの犯人をかばうなんて宣戦布告じゃないですか。宰相が今国王を殺したらアンドレーは彼女とルキア帝国に迎え入れないですよ。まぁ、彼は襲撃事件をおこしているから、もしかしたら戦争は免れないのかもしれませんが……」
私の意見におじさんは即答した。確かにおじさんの意見はもっともだ。アンドレーがルキア帝国に所属しており襲撃事件を起こしたのならば宣戦布告と同義だ。
漫画ではルキア帝国の名前はほとんどでてこない。そもそもアンドレーとハリー・ナイトの関係もわからなかったのだ。知っているのは番外編をすべて読んでいるおじさんだけだ。
ずっと口に手をあてて考えていたルイが「待ってください」と言っておじさんの方を向き、自分の手の平を見せた。
「襲撃事件はアンドレーがハリー・ナイトを取り返すためにおこしたのですよね。そもそも、アンドレーとルキア帝国のつながりは明確なのでしょうか。そして、事実がどうあったとしてもルキア帝国が“捨てた奴隷の勝手な行動”と言うかもしれません」
おじさんは「そうですね」と言って眉をひそめ、視線を映像に移した。ルイも頷きながら映像を見る。
二人の言っている意味は分かる。しかし、画面の中の彼らがどう動くは彼ら次第だと思って私も映像を見たその瞬間、思わず口を押えてしまった。そして、ルイとおじさんの方を見ると二人は口を堅く結び、目を細めていた。
クリスティーナ宰相が国王の心臓に向かってナイフを刺していた。
彼女はナイフから手を離し、数歩下がりアンドレーを見るが彼は目を細めて何も言わない。
国王はナイフが刺さったまま前に倒れた。そして、国王が倒れた床は血で赤くそまり、その血はゆっくりと床に広まっていった。
国王の倒れる音で一人に騎士が振り向いた。兜を付いているため騎士の表情は一切わからない。
騎士は迷うことなくクリスティーナ宰相に剣を向けた、その剣に体重をのせるとそのままクリスティーナ宰相の胸に刺した。それは一瞬の出来事であった。
騎士がクリスティーナ宰相から剣をぬくと、そこから血が噴き出て、騎士の鎧はクリスティーナ宰相の血で真っ赤に染まった。騎士はそれを気にする様子はない。
クリスティーナ宰相が倒れて動かなくなったのを確認すると即座に国王の方へ向かった。
騎士が手当をしているが、望は薄いと思った。国王を殺そうとしていた私がそんなことを思うのはおかしいかもしれない。
『あはははは』
突然、アンドレーが笑い声聞こえた。画面越しでもはっきり聞こえるのだから、おそらく部屋に響き渡っている。
国王を手当していない方の騎士はアンドレー向けた剣を一切動かさない。
『立っているだけで、終わったな』
そういうと、アンドレーは消えてしまった。
そこまではアンドレーが現れる前に見た映像と一緒だ。しかし、二人の騎士が国王よりも前に出て剣を構えている。その剣の先にいるのはアンドレーである。
アンドレーの後ろには出入口の扉があり、空いている。そして、人の足のようなものが見えた。おそらく扉の前を護衛していた衛兵か騎士であろう。
国王が立ち上がりアンドレーの名前を呼び近づこうとしたが騎士の一人が国王の前に手をだしそれをとめている。
『久しぶりですね。兄上』
アンドレーは丁寧な口調で挨拶したが、丁寧なのは口調だけである。片足に体重をかけ腕を組みニヤニヤと笑う様子はとても国王に会いにきた態度には見えない。
クリスティーナ宰相はアンドレーを睨みつけながら立ちあがり、国王に側へ移動した。騎士たちは二人を守るように更に前に出る。その間アンドレーから一切、目を離さない。
『国王陛下こちらへ』
クリスティーナ宰相が国王の手をひき、部屋の奥へ移動しようとアンドレーに背を向けた。そのため国王とクリスティーナの顔を見ることができた。
クリスティーナ宰相は突然、彼女は驚いた顔して立ち止まる。何かにぶつかったようだ。目の前の空間に触れている。
どうやら見えない壁があるようだ。
クリスティーナ宰相は勢いよく振り向きアンドレーを睨みつけている。
この二人はとても険悪に見える。取引をしている関係ではなかったのだろうか。それとも何かお互いに合図を送っているのか。
アンドレーは変わらず、ニヤニヤと笑いながら国王とクリスティーナ宰相を見ている。剣を向けられている騎士たちには興味ないようである。仮に騎士に攻撃をされてもきっとアンドレーにとっては“カに刺される”のと変わらないのだろう。その実力差を理解しているから騎士も迂闊に手を出さずにいるのだ。勿論護衛騎士だからアンドレーが攻撃をすれば敵わないと分かっても命をかけて戦う。
瀕死でも逃げずに戦っていたトーマス騎士団長を思い出した。
『宰相殿、今が好機ですよ』
アンドレーの言葉にクリスティーナ宰相は答えない。彼女はアンドレーの方を向いているため表情が見えないがきっと悔しい顔をしているだと思う。
しかし、クリスティーナ宰相が国王暗殺をするならば今がチャンスである。真横にいる国王を護身用のナイフで刺しアンドレーと共に逃げればよいのだ。
「なんでクリスティーナ宰相は実行しないのだろう」
私は映像を見たままつぶやいた。すると、おじさんは私の方を見て「できないですよ」と言ったので彼の方に視線を送った。
「国王殺しの犯人をかばうなんて宣戦布告じゃないですか。宰相が今国王を殺したらアンドレーは彼女とルキア帝国に迎え入れないですよ。まぁ、彼は襲撃事件をおこしているから、もしかしたら戦争は免れないのかもしれませんが……」
私の意見におじさんは即答した。確かにおじさんの意見はもっともだ。アンドレーがルキア帝国に所属しており襲撃事件を起こしたのならば宣戦布告と同義だ。
漫画ではルキア帝国の名前はほとんどでてこない。そもそもアンドレーとハリー・ナイトの関係もわからなかったのだ。知っているのは番外編をすべて読んでいるおじさんだけだ。
ずっと口に手をあてて考えていたルイが「待ってください」と言っておじさんの方を向き、自分の手の平を見せた。
「襲撃事件はアンドレーがハリー・ナイトを取り返すためにおこしたのですよね。そもそも、アンドレーとルキア帝国のつながりは明確なのでしょうか。そして、事実がどうあったとしてもルキア帝国が“捨てた奴隷の勝手な行動”と言うかもしれません」
おじさんは「そうですね」と言って眉をひそめ、視線を映像に移した。ルイも頷きながら映像を見る。
二人の言っている意味は分かる。しかし、画面の中の彼らがどう動くは彼ら次第だと思って私も映像を見たその瞬間、思わず口を押えてしまった。そして、ルイとおじさんの方を見ると二人は口を堅く結び、目を細めていた。
クリスティーナ宰相が国王の心臓に向かってナイフを刺していた。
彼女はナイフから手を離し、数歩下がりアンドレーを見るが彼は目を細めて何も言わない。
国王はナイフが刺さったまま前に倒れた。そして、国王が倒れた床は血で赤くそまり、その血はゆっくりと床に広まっていった。
国王の倒れる音で一人に騎士が振り向いた。兜を付いているため騎士の表情は一切わからない。
騎士は迷うことなくクリスティーナ宰相に剣を向けた、その剣に体重をのせるとそのままクリスティーナ宰相の胸に刺した。それは一瞬の出来事であった。
騎士がクリスティーナ宰相から剣をぬくと、そこから血が噴き出て、騎士の鎧はクリスティーナ宰相の血で真っ赤に染まった。騎士はそれを気にする様子はない。
クリスティーナ宰相が倒れて動かなくなったのを確認すると即座に国王の方へ向かった。
騎士が手当をしているが、望は薄いと思った。国王を殺そうとしていた私がそんなことを思うのはおかしいかもしれない。
『あはははは』
突然、アンドレーが笑い声聞こえた。画面越しでもはっきり聞こえるのだから、おそらく部屋に響き渡っている。
国王を手当していない方の騎士はアンドレー向けた剣を一切動かさない。
『立っているだけで、終わったな』
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