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強敵

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 おじさんが指さした映像はさっきまでアーサーとアンドレーが戦っていた場所だ。
 しかし今は……。

「アーサー殿」

 私は思わず大きな声が出てしまった。そんな自分に急いで両手で口を押えた。映像には倒れて動かないアーサーが映っていた。周りにアンドレーの姿はない。
 まさか……。
 私の手から汗が出てきた。今すぐに助けたかったがアーサーのいる場所は破壊されていてどこよく分からない。

「でもこんなに激しい戦闘ならば私たちのいる場所にも振動がおきそうですよね」

 おじさんが目を細めて画像を見ながら言った。おじさんはとても冷静だった。
 そんなおじさんを見て、私も気持ちが落ち着いた。今、アーサーの場所が分かり助けにいったとしてそこにアンドレーがいたら私は終わりだ。
 勝てるわけがない。

『う……』

 倒れていたアーサーが動いた。どうやら生きているようで、私はほっと胸をなでおろした。
 しかし、安心して呆けている場合ではない。アンドレーの居場所を確認しなくてはいけない。私は映像の中をじっくり見たが、破壊された部屋には、起き上がろうと必死に動くアーサーしか見つけられない。
 しかし、突然映像が切れた。今まで映像を映していた紙が真っ白のだだの紙になってしまった。
 それを全員が眉をひそめて見ていた時、目の前にある転送魔法陣が光った。私とルイそれからおじさんが驚き、それに注目するとそこから手が出てきた。あまりに予想外にでき事に動けずにそれを見続けた。
 手の主はあっという間に私の前に現れた。

「覗き見とはいい趣味だな」

 転送魔法陣を背にして私たちの目の前にたった人物は、金髪で碧い瞳の美しい国王そっくりな顔であった。彼は私たちを見るとニヤリと笑った。

 アンドレーだ。

 国王と同じ顔であるのに、悪人顔に見えるのが不思議で仕方ない。性格が顔ににじみ出ているのだ。
 よく見ると、彼の手には紙が握られてきた。おそらく、魔法陣の紙だ。そこから私が見ているのがバレたのだ。
 私は座ったままの姿勢で彼を見上げた。彼から殺意を感じられないのに恐怖で動けなった。それは他の二人も同じようである。

 アンドレーは床にちらばっている魔法陣を見て驚いていた。

「これはすごい。城内部を確認できるのか」

 私の隣でおじさんが震えているのが分かった。ルイはアンドレーから一切、目を離さず睨みつけている、そして右手は魔法陣のある胸ポケットに当てている。戦闘体制だ。

「そんなに殺気立たなくとも、君たちと戦いにきたのではない」

 そう言うとアンドレーは私たちから視線外して、ばらまかれている映像の紙をしばらく見ていた。そして「これは」と言って一枚の紙を拾った。それをじっくりと見るとニヤニヤと楽しそうに笑っている。

「フィリップの魅力魔法を解除できたのか」

 どうやら、アンドレーは国王の映像を見ているようだ。

 アンドレーが国王をフィリップと呼び捨てるのは彼を国王と認めたくないからだろうか。おじさんの話では彼は最後まで現国王の即位を反対したいたのだ。

「君たちは優秀だな。魔法解除は過去誰一人として成功していない」

 ルイと私の顔を交互に見下ろすとニヤニヤと非常に楽しそうに笑っている。そしてまた、映像に視線を戻すと「だからコイツは厄介だった」と睨みつけている。

 おそらく国王の事を言っているのだろう。今のアンドレーの台詞からすると国王の魅力魔法は私達以外に解けないようだ。それは他の魔法も含まれるのだろうけど。

 ブオ

 突然隣で音がしたと思ったら、視界が明るくなったと思ったら、アンドレーの周りが燃えた。しかし、それはあっという間に消えてしまった。
 私はルイの方を見るとアンドレーを睨みつけながら胸ポケットに触れている手と反対の手をアンドレーに向けていた。
 どうやらルイがアンドレーに火を放ったらしい。アンドレーは全く気にしていないが、彼に放った火の魔法はそんなに弱いものではない。森を焼き払うイメージで私が書いたものだ。

 格の違いを感じる。

 だが、ルイの攻撃で私の中恐怖を抑えることができた。アンドレーから殺気は感じない上に戦う気がないと言っているが、そんなもの信じられる訳がない。
 私もルイの様にいつでも戦えるようにしないといけない。

 おそらく勝てないけど……。

 アンドレーは私たちの様子を見ながら楽しそうにしている。攻撃をしたルイに対しては鼻笑っていた。
 完全にバカにされている。

「よりによって、この女の魅力魔法を解いたのか。ククッ」

 またしばらく、国王の映像を見ると、アンドレーが声を出して笑った。その笑い方はまるでアニメの悪役のようである
 そして「なるほどな」と何度と頷いている。

 “この女”とは多分、クリスティーナ宰相の事だろう。映像の紙をアンドレーが持っているため今のどういう動きがあったのかわからないため彼の言動から想像するしかない。

 アンドレーは目を細めてルイと私を見たい。ルイは相変わらずアンドレーを睨みつけて、手を胸ポケットから離さないところを見るとまだ攻撃する機会を伺っているようだ。

「お前たちをあの女のやっている事を知って魅力魔法を解除したのか」

 私はアンドレーの問いかけに答える気はなかった。彼は楽しそうにベラベラと喋っているが、私はこちらの情報を渡す気ない。
 ルイやおじさんも同じ気持ちのようである。もしかしたら、おじさんは恐怖で言葉を失っているだけかもしれない。その証拠に身体の震えがとまらない。

「フンッ。まぁ答えなくても構わない。お前たちはあの女の目的を知っているのだな。よく調べられたものだ」

 クリスティーナ宰相の目的とは国王暗殺してルキア帝国の地位をもらうということだろう。
 アンドレーがそのことに感心しているところを見ると、取引の話は外部にもれない様に慎重に事を進めていたのだろう。まぁこんな危ない話なのだから当たり前だ。
 私たちもおじさんから聞かなければ分からなった。おじさんの前では秘密は意味をなさない。

「それで、他人の手を使って父親殺しをしようとしているわけか。お前たちはそれでどういう事がおきるのかわかっているのか」

「民の解放、暴走は覚悟の上です。それが本来の姿でしょうか」

 ずっと黙っていたルイが口を開いたが胸ポケットの手を離すことはしない。
 アンドレーはルイが言葉を発したのが意外だったようで目を大きく開いてルイをみた。それからまたニヤリと笑う。

「全て知って、覚悟の上ということか」

 アンドレーはルイから視線を外し、私を見た。突然、目が合い心臓が飛び出るかと思った。アンドレーがルイの方見ていたから完全に油断していた。

 油断していい相手ではないが……。

「本当はハリーの命を奪ったやつに亡き者にしよと思ったが気が変わった」

 どうやら私は今殺させるところだったらしい。しかし、それにしては最初から殺気がなかった。気が変わったには今ではなくアーサーとの闘いを放棄した時かもしれない。

「お前たちの目的を果たす手伝いをしよう。その方が俺の目的も果たせるし、ルカ、お前への復讐を果たせそうだ。地獄を味わうがいい」

 そういうとアンドレーは姿を消した。アンドレーがいなくなったことにより場の雰囲気が一気に緩んだ。
 私は全身の力が抜けた。ルイもおじさんも同じようであり、疲れ切った顔をしていた。
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