【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
上 下
135 / 146

思い出す

しおりを挟む
 おじさんは椅子に座りなおすとすぐに国王の魔法ついて教えてくれた。国王は魔法を使えるが魔法陣を使えない事をおじさんは漫画に知識で知っていた。ただ、歴史が変わっているため漫画の知識をすべて信用するわけにはいかなかった。
 だから、今回の国王の演説で魔法の有無を調べたのだ。今回の事件がなくとも国王の演説はよく行われているため試す機会はいくらでもある。

 そして検証結果、国王の魔法は相手を魅了することができる。ただし記憶や性格を変化させることはできないというものだった。

「魔法にかかると、無条件で国王陛下をすばらしいと思うのです」

 とおじさんは言っていた。私も国王の演説を聞かなくてはいけないと思った。しかし体調が悪くその場から退去した。発作がおきなければそのままおじさん同様に国王に魅了されていた。

「別に国王陛下が悪というわけではないよ」

 ルイが言った。確かにそうなのだ。悪ではないが国の様子から有能ではないと思った。もし国王が魅了魔法を使えなければとっくに国が崩壊していたかもしれない。

「国王陛下がご健在のうちに国を立て直さなくてはいけないね。後はルキア帝国がどうでるかだけど……。それもアンドレーと女帝の関係性にもよるかな」

 ルイの言葉にうなずいた。その通りだ。アンドレーとルキア女帝との関係はいったどういったものなのだろうか。

「あの……」

 おじさんがちいさな声が聞こえた。私もルイもそれに気づき、おじさんの顔を見た。おじさんは眉をさげて、ちいさく手を上げていた。

「ルキア帝国の女帝レギーナは最初、他の奴隷と同じように弟君を買いました。彼は魔法や剣術にたけており更に美しい顔であったため女帝レギーナは気に入ったのです。弟君も優しくされて彼女に依存していきます。女帝には下心もありました。パレス王国の魔法の力がほしかったですね」

 この世界ではパレス王国の王族しか魔法を使うことができない。それは機密事項であったが今回アンドレーがルキア帝国にわたったことで魔法の詳細が伝わってしまった。

「弟君の魔法能力は素晴らしいです。弟君と女帝レギーナの息子ハリーも弟君の能力を受け継いでいます。彼らは魔法陣なして魔法が使えますし全てではありませんが古代語も理解しています。だから女帝レギーナが彼らを大切にしているのかもしれませんね。
 そしてパレス王国への闇市の元締めと騎士団員として侵入は国の崩壊が目的です」

 おじさんは一呼吸おいて、私たちを見た。
 アンドレーが国の崩壊を望んでいる事は知っている。国を崩壊させるために王妃にハリー・ナイトをけしかけるのだ。国王を不安定にさせれば国が崩壊しやすいと考えたのだろう。

「弟君の城への襲撃は彼の独断だと思いますが闇市やハリーの騎士入団は女帝レギーナが手を貸しています。漫画では弟君が城に襲撃しません。今回なぜかハリーと闇市のつながりが発覚しています。しかし漫画では発覚しませんし……」

 おじさんは口もとに手を当てて考えていた。私はおじさんの顔を見て口をひらいた。

「ハリー・ナイトと闇市を繋げるきっかけを作ったのは私です」

 おじさんに、私が前世を思い出して騎士館に言った話をした。その時ハリー・ナイトは転送魔法陣を使い移動していたようで、見つけることはできなかった。しかし、そこから騎士団がハリー・ナイトを調べたのだ。

「待って!!ハリーが転送魔法陣を使えたということはもしかしてその父も……」

 突然、おじさんが大声を上げた。そして、立ち上がり部屋を飛び出した。よほど慌てていたのだろう。敬語を使うのを忘れていた。
 訳が分からなったが私とルイも追いかけた。扉にいた衛兵が険しい顔をしたが私は「大丈夫です」と伝えた。そう言わなければ応援をよんで大騒ぎになったしまうところだ。
 騎士の護衛がいなくて本当によかった。襲撃事件で騎士の数が減りおじさんの方に人数をさけなかったのである。騎士がいたらあっという間におじさんも私たちも止められていた。
 前を走るおじさんを見ると骨折は完治したのだとのんきな事を考えてしまった。そんな余裕があるほど、おじさんの足は遅い。
 敬語を忘れるくらい慌てるのだから相当な理由なのだと思い、おじさんの横につくと理由を聞いた。

「あ……はぁ……」

 どうやら、走るのに背一杯で話す余裕がないらしい。私は前を向いたまま後ろを走るルイを呼んだ。するとルイは「わかった」と言っていた。
 それから数秒後、おじさんの身体が浮いた。おじさんは驚いてその場に座り込んだ。座り込んだまま私の走る速さに合わせておじさんも進んでいる。

「大丈夫ですか?ルイの魔法ですよ。どこへ行きたいのです?」

 優しく声を掛けるとおじさんは胸を抑えて呼吸を整えていた。あまり運動をしない上位貴族であり怪我をして数か月動かなかったのだ。走れるわけがない。

「て……そう、転送……ま、魔法の……」

 まだ、呼吸が整わないため何言っているのか分からない。私は走りながらおじさんに近づこうとした。すると……。

「転送魔法陣の部屋だよ。まずいかも」

 後ろを走っていたルイは私を追い越すときに叫んだ。浮いたおじさんはルイの後を追っていった。私は急いで走る速度をあげるとルイとおじさんを追いかけた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

婚約破棄を成立させた侯爵令嬢~自己陶酔の勘違い~

鷲原ほの
ファンタジー
侯爵令嬢マリアベル・フロージニス主催のお茶会に咲いた婚約破棄騒動。 浅慮な婚約者が婚約破棄を突き付けるところから喜劇の物語は動き出す。 『完結』

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。 此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。 召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。 だって俺、一応女だもの。 勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので… ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの? って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!! ついでに、恋愛フラグも要りません!!! 性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。 ────────── 突発的に書きたくなって書いた産物。 会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。 他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。 4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。 4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。 4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました! 4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。 21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...