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思い出す

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 おじさんは椅子に座りなおすとすぐに国王の魔法ついて教えてくれた。国王は魔法を使えるが魔法陣を使えない事をおじさんは漫画に知識で知っていた。ただ、歴史が変わっているため漫画の知識をすべて信用するわけにはいかなかった。
 だから、今回の国王の演説で魔法の有無を調べたのだ。今回の事件がなくとも国王の演説はよく行われているため試す機会はいくらでもある。

 そして検証結果、国王の魔法は相手を魅了することができる。ただし記憶や性格を変化させることはできないというものだった。

「魔法にかかると、無条件で国王陛下をすばらしいと思うのです」

 とおじさんは言っていた。私も国王の演説を聞かなくてはいけないと思った。しかし体調が悪くその場から退去した。発作がおきなければそのままおじさん同様に国王に魅了されていた。

「別に国王陛下が悪というわけではないよ」

 ルイが言った。確かにそうなのだ。悪ではないが国の様子から有能ではないと思った。もし国王が魅了魔法を使えなければとっくに国が崩壊していたかもしれない。

「国王陛下がご健在のうちに国を立て直さなくてはいけないね。後はルキア帝国がどうでるかだけど……。それもアンドレーと女帝の関係性にもよるかな」

 ルイの言葉にうなずいた。その通りだ。アンドレーとルキア女帝との関係はいったどういったものなのだろうか。

「あの……」

 おじさんがちいさな声が聞こえた。私もルイもそれに気づき、おじさんの顔を見た。おじさんは眉をさげて、ちいさく手を上げていた。

「ルキア帝国の女帝レギーナは最初、他の奴隷と同じように弟君を買いました。彼は魔法や剣術にたけており更に美しい顔であったため女帝レギーナは気に入ったのです。弟君も優しくされて彼女に依存していきます。女帝には下心もありました。パレス王国の魔法の力がほしかったですね」

 この世界ではパレス王国の王族しか魔法を使うことができない。それは機密事項であったが今回アンドレーがルキア帝国にわたったことで魔法の詳細が伝わってしまった。

「弟君の魔法能力は素晴らしいです。弟君と女帝レギーナの息子ハリーも弟君の能力を受け継いでいます。彼らは魔法陣なして魔法が使えますし全てではありませんが古代語も理解しています。だから女帝レギーナが彼らを大切にしているのかもしれませんね。
 そしてパレス王国への闇市の元締めと騎士団員として侵入は国の崩壊が目的です」

 おじさんは一呼吸おいて、私たちを見た。
 アンドレーが国の崩壊を望んでいる事は知っている。国を崩壊させるために王妃にハリー・ナイトをけしかけるのだ。国王を不安定にさせれば国が崩壊しやすいと考えたのだろう。

「弟君の城への襲撃は彼の独断だと思いますが闇市やハリーの騎士入団は女帝レギーナが手を貸しています。漫画では弟君が城に襲撃しません。今回なぜかハリーと闇市のつながりが発覚しています。しかし漫画では発覚しませんし……」

 おじさんは口もとに手を当てて考えていた。私はおじさんの顔を見て口をひらいた。

「ハリー・ナイトと闇市を繋げるきっかけを作ったのは私です」

 おじさんに、私が前世を思い出して騎士館に言った話をした。その時ハリー・ナイトは転送魔法陣を使い移動していたようで、見つけることはできなかった。しかし、そこから騎士団がハリー・ナイトを調べたのだ。

「待って!!ハリーが転送魔法陣を使えたということはもしかしてその父も……」

 突然、おじさんが大声を上げた。そして、立ち上がり部屋を飛び出した。よほど慌てていたのだろう。敬語を使うのを忘れていた。
 訳が分からなったが私とルイも追いかけた。扉にいた衛兵が険しい顔をしたが私は「大丈夫です」と伝えた。そう言わなければ応援をよんで大騒ぎになったしまうところだ。
 騎士の護衛がいなくて本当によかった。襲撃事件で騎士の数が減りおじさんの方に人数をさけなかったのである。騎士がいたらあっという間におじさんも私たちも止められていた。
 前を走るおじさんを見ると骨折は完治したのだとのんきな事を考えてしまった。そんな余裕があるほど、おじさんの足は遅い。
 敬語を忘れるくらい慌てるのだから相当な理由なのだと思い、おじさんの横につくと理由を聞いた。

「あ……はぁ……」

 どうやら、走るのに背一杯で話す余裕がないらしい。私は前を向いたまま後ろを走るルイを呼んだ。するとルイは「わかった」と言っていた。
 それから数秒後、おじさんの身体が浮いた。おじさんは驚いてその場に座り込んだ。座り込んだまま私の走る速さに合わせておじさんも進んでいる。

「大丈夫ですか?ルイの魔法ですよ。どこへ行きたいのです?」

 優しく声を掛けるとおじさんは胸を抑えて呼吸を整えていた。あまり運動をしない上位貴族であり怪我をして数か月動かなかったのだ。走れるわけがない。

「て……そう、転送……ま、魔法の……」

 まだ、呼吸が整わないため何言っているのか分からない。私は走りながらおじさんに近づこうとした。すると……。

「転送魔法陣の部屋だよ。まずいかも」

 後ろを走っていたルイは私を追い越すときに叫んだ。浮いたおじさんはルイの後を追っていった。私は急いで走る速度をあげるとルイとおじさんを追いかけた。
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