【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

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国王の魔法

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 前世の記憶が戻りはじめて国王と食事をした時、ものすごく緊張して気持ちが悪くなった時の話をルイにした。ルイはあの時不安そうな顔をしていたため私の異変に気づかれているとは思っていたが、予想どおりであった。カミラが側におり悪化する様子がなかったため声を掛けなかったと言う。
 あの時は今ほど、仲良くなかったため声を掛けづらかったのかもしれない。掛けられたとしても私は「大丈夫です」と答えていただろう。

「自覚している不明だが、国王陛下は相手を魅了する魔法を使っているのではないかと思う。だから、以前の僕は国王陛下を絶対だと思っていた。また国民も同様なのだろう。ルカの発作も国王陛下の魔法に反応したものだと思う」

 なるほど。

 ルイの推測はしっくりときた。だから、演説で全民が国王に見入っていたようであったし、護衛騎士が国王陛下ばかり見て私を気にしなったのだ。
 そこでグレース殿下の屋敷に行く時みた国の様子を思い出した。あそこまで荒れていたら反乱がおきそうなものである。きっと国王の力があるから民は抵抗することはないのだ。

「そこで実験をしたんだ」

「実験?」

「そう。解除魔法陣を使った」

 確かに、そうすれば国王が魔法を使っていたとしても効果がすぐに消えて正気に戻るだろう。国王の演説は王位継承として必ず出席しなければならない行事だ。だから正気を保つため解除魔法の必須となるのはわかるが実験の意味がわからない。

「ルカ、体調は大丈夫だよね?」

 突然、体調の心配をされた。二か月前の怪我にしても発作にしても通常の生活に使用ない程度に回復している。そのため「大丈夫」と返事をしたがここで心配をする意味がよくわからなかった。
 ルイっていつも詳しい説明をしないで行動にするから困惑する。

「オリビア嬢のところに行くよ」

 オリビア嬢……。
 そういえば、おじさんを城に連れてきた時、私もルイに詳しい説明をしていなかったことを思い出した。兄弟だから似ているのだと思ったが、ルカの中身の私は兄弟ではない。不思議な感じがした。

「オリビア嬢のところへ行くけど、大丈夫?」

 私が返事をしないので再度ルイが声を掛けてきた。
 “オリビア嬢”と言う単語で違う事を考えてしまいその後を聞き流していた。

「え? なんで?」

 改めて、ルイの言葉の意味を理解して聞き返した。今の話の流れでおじさんが出てくる意味がわからなかった。もしかして、実験というのはさっきルイ自身に解除魔法を使用したことではなくおじさんが関係するというのか。
 おじさんはルイに女の子を紹介してもらえると期待して、彼のいう事を何でも聞いているみたいだ。本当にルイがおじさんに女の子を紹介できればお互いに良い条件である。しかし、おじさんが求める条件の女の子が実在するのか不安に思った。

「オリビア嬢に解除魔法陣をかけにいく。今回、彼女に国王陛下の演説を聞いてもらったんだ」

「オリビア嬢が国王陛下を魅了されているか確認するってこと? でも元々国王陛下を見入っているかもしれないよ?」

「彼女は国王陛下に対して何の感情もないよ。それは以前に彼女から聞いている。そして、演説や式典に一切参加していないだよね」

 ルイはニヤリと笑って説明した。
 そうだ、オリビア嬢は式典や演説に参加していないというよりできない。私にしつこくつきまとい、出られなくなったのだ。
 それにしてもルイはオリビア嬢の事だけではなく、おじさんが国王をどう思っているかも知っているとは流石である。


 演説は終わり、人々は各自持ち場に戻っていた。廊下ですれ違う使用人や騎士は高揚しているように感じられた。だれも演説について話している者はいなかった。だが誰しものが満足そうな顔をしていた。ルイも同じように感じたようであり、眉を寄せていた。
 私は途中で離れてしまったため演説内容をすべて知らないがなんとなく想像つく。
 オリビア嬢の部屋に着くと衛兵が扉を叩いて、私たちが来たことを伝えるとおじさんの返事が聞こえた。そこまではいつものと変わらない。
 入室して私が挨拶をするとおじさんは目を輝かせて私に駆け寄ったのだ。そして挨拶をするとすぐに国王のすばらしさについて語り始めた。

 その勢いに恐怖を感じた。
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