上 下
118 / 146

おじさん令嬢は女好き

しおりを挟む
 ルーク訪問の翌日、私は不規則に揺れる馬車の中から外を見ていた。王都を出たあたりから街の雰囲気がガラリと変わった。街にいる人間は増えたように感じるが楽しげな会話どころか声さえあまり聞こえない。王族の馬車だから整備されているところを通っていると思う。しかし、お世辞にもきれいな道とは言えない。
 おそらく路地に入れば悪臭が漂っているのであろう。 
 私の乗る馬車には私の護衛騎士である五番隊隊長マリアも同乗していた。馬車の外には五番隊に所属する数名騎士が馬に乗り馬車の横を歩いている。前を走る馬車にはルイが乗っている。そこにはルイの護衛騎士である四番隊長が同乗している。彼の馬車の周りには私の馬車同様、ルイの護衛騎士がいる。
 今回は遠出であるため私たちの護衛騎士以外の隊もおり、更に救護部隊も同行している。
 とても大掛かりである。

「マリア隊長」

 私が窓から目を離しマリア隊長の方を見ると背筋を伸ばし周囲にアンテナをはっていた。
 私が声を掛けたのに気づくと返事をして私の方に顔を向ける。馬車の中にいるためいつものようにひざまずくことができない代わりに頭を下げた。

「マリア隊長はオリビア嬢の護衛によくついていましたか」

「はい。暴れて怪我をした事がありましたから数日は私が任務につきました。落ち着いてから他の者にまかせております。同性の方が落ち着くという事で他の班にも護衛を依頼しました」

 マリア隊長は丁寧に説明してくれた。私がおじさんを城に呼んだだめ、本来はおじさんの護衛業務は全て私の護衛騎士である五番隊でまかなわれるが隊に女性騎士がすくないため他の隊から派遣してもらったそうだ。

「オリビア嬢が女性騎士を願ったのですか」

「おっしゃる通りです」

 マリア隊長の言葉を聞いて、おじさんに苛立った。
 あのおじさん、少女という立場を利用してやりたい放題じゃないか。
 騎士は平民が多いため王族や貴族のように美しい顔ではないが普段の訓練で引き締まった身体は美しい。実際マリアの無駄のない身体は服の上からでもカッコよく思う。
 ドMのおじさんはかっこいい女性と過ごせてさぞかし幸せだっただろう。
 だだ、おじさんが希望したとしても騎士の任務に関わることだから権限のある人間の許可が必要なはずだ。

「オリビア嬢の希望を許可したのはルイですか」

「その通りです。ですから、ルイ第一王子殿下とルカ第二王子殿下の護衛騎士で任務につかせて頂きました」

 淡々と説明するマリア隊長に「そうですか」と返事をした。おじさんの部屋へは騎士一人しか配属していないため二部隊あれば他の任務に支障なくまわすことができるだろう。
 おじさんのそんな希望は叶える必要はないのに手をまわす事といい、女の子を紹介する発言といい、ルイはおじさんの関心を女性に向けておきたいらしい。

『好きだからに決まっているでしょ』

 ふとルイの言葉を思い出した。
 おそらく、オリビア嬢が私に興味を示さないように。そして、私がオリビア嬢に関心を持たないようにするための防壁だ。
 そんなことしなくても、自ら女の子の紹介や女性騎士を希望がするくらいの女好きなのだからおじさんが男の私を恋愛対象にする事はない。また私も変態おじさんには興味はないどころかひいている。
 いくら利害一致したからといってあの人と一生付き合わなくてはならないかと先が思いやられる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈 
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...