【完結】腐女子が王子～独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります～

契約内容

　ルイとおじさんが何かの契約をしたらしい。おじさんとルイを交互に見る。ルイは穏やかに笑い、おじさんは気まずいのかキョロキョロと目を動かし落ち着つがない。

「たいしたことじゃないよ。ルカの婚約すること。それとクラーク卿と貧困地域の繋がりを知るため協力をお願いしただけだよ」

　まるで買い物を頼んだような口調でルイは言うが、それはたいしたことだと思う。大体おじさんは"恋愛対象は男じゃない"と言ったではないか。それなのに男と婚約を承諾させるなって……。でも、私も婚約してもらうつもりだったから人のことは言えない。
　契約と言っていたからルイがよい条件を提示したのだと思った。

「オリビア嬢の利益はなんでしょうか」　

「え……あ、その」

　言いづらいことらしくおじさんは挙動不審なり、私と視線が合わない。私は変なことを条件としたのかと眉を寄せた。
　それならば、おじさんに同情した気持ちを撤回する。

「たいしたことないよ。女の子を紹介するだけだよ」

「え」

　ルイの言葉に思わず変な声がでてしまった。女の子とどういうことだろうか。同性婚に偏見はない世界だが王子の婚約者がほかの人間と親しくするのは問題がある。ルイだったそんなことはわかっているはずだ。

「もちろん表向きにオリビア嬢に女性を紹介することはできない。大体、オリビア嬢がルカの婚約者じゃなくても王子の僕が紹介できるわけないよ」

「え」

「だから、僕の婚約者を紹介することにしたのだ。正しくはこれから婚約者にするのだけどね」

「え」

　ルイの言葉に“え”しか返せない。ようは私の婚約者とルイの婚約者をくっつけるって話だ。
　できないことはないと思う。
　同じ城に住むわけだから公にイチャつかなればいい。叔父とアーサーだって一見本当に結婚しているのか疑わしい態度をお互いいとっている。
　それはルイの婚約者になる人間が承諾すればの話である。

「ルイの婚約者と言うと次期王妃でしょ。我が国の王妃は多忙だよ。その上令嬢と付き合えなんて……。ルイと結婚できると思ったらオリビア嬢なのだよ」

「ルカは僕と結婚して仲良くできると思ったら実は偽造で本来の相手がオリビア嬢だった落ち込むのかい」

「当たり前だよ」

　オリビア嬢よりも明らかにルイの方が見た目が良い。王妃にはなれるから相応の権力は持つことができる。けど女の子ならカッコいい王子さまと一緒になりたいと思う。
　女性で、美しい男性よりキツイ顔の女性が好きで更に次期国王と結婚できる身分で政を行える知識のある人間なんているとは思えない。

「そうだよね。私なんか……」

　目の前のおじさんちいさい声でつぶやいた。落ち込んでいる。自分の言った言葉を思い出して後悔した。すべて事実であるが言い過ぎた。謝罪しようとして立ち上がると突然後ろに引かれた。そのままルイの膝に座らされると抱きしめられた。腕の上から抱きしめられているため動くことができない。

「ちょっと、ルイ」

　私が声をかけると「ああ」と抱きしめる手を緩めたが離さない。そしてなんだが嬉しそうである。