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サラの家庭

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 王族が良いものだと思った事はない。政を担う王族が失敗している歴史を私は知っている。前世で嫌って思うほど習ったし覚えさせられた。

「綺麗事だね」

 アーサーは優しい口調であったがその言葉は胸に刺さった。彼はいつものように目を細めたまま、穏やかに微笑んでいる。それがまた怖い。

「でも、自分の意見を持つ事は大切だ。王族の発言は重いからね。責任は取らないといけないよ」

 そう前で置きをするとアーサーは騎士について説明を始めた。彼は入団試験前に死が確定される任務につくと可能性がある事を承諾している。勿論それは任務前に説明され断る事もできるがその時は退団しなくてはならない。退団と当時に騎士の権利がすべてなくなるため退団するものはいない。以前の生活に戻るくらいならば死を選ぶ者が多いのだ。
 騎士とは生産性のない仕事であるため利益がないのだ。軍事費としてさいた予算は明確な利益にはならない。国益を守るために必要な経費である。イザベラ女王から侵略戦争もしていないため他国から金品を奪うこともない現在は騎士に対して出費のみなのである。
 そこまで話をするとアーサーはサラを呼び、自分の状況を説明するように伝えた。サラは私全員が見える位置に来ると丁寧お辞儀をした。
 彼は姿勢を正して自分の身の上を丁寧な口調で教えてくれた。
 サラの出身は貧困地域に近い農村だ。作物は採れるが治安が悪いため盗難あった。その為6歳から10歳までの兄弟が24時間交代で監視を行っていた。
 兄弟の説明が気になり、何人するのか確認すると分からないと言う。“父”と呼ばれる人間が1人おり、その父に数十名の大人が従っていたそうだ。サラはどの大人から産まれたか分からないらしい。
 そこで産まれた事が全員兄弟だという。
 畑の監視は8~10人くらいの子どもで行う。次から次と盗みに来るので休む暇はなかったそうだ。夜が明けると兄弟の人数は大抵減っている。盗みにくる人間の年齢は様々だが皆武器を持っている。相手も本気だから負ければただではすまない。勝っても手足が動かなくなるとこもある。
 私は言葉を発する事ができずにサラの話を聞いていた。
 サラは更に話を続けた。
 家の人間は常に入れ替わるので誰かいなくなっても気にする者はいない。サラは9歳の時に騎士団の噂話を聞いたらしい。
 10歳になると畑仕事をさせられる。更に成人すれば接客の仕事が増える。接客の仕事とサラは言っていたが成人からと言うことは所謂、身体を売る仕事だろう。サラは悪くない顔立ちであるため相手には困らないと思った。
 サラはそれが嫌で10歳になる前に家をでた。誰から産まれたか分からないのに年齢が分かる理由を聞くと年に1回全員が一つ年をとるらしい。
 歩いて王都まで来ると試験を受けたらしい。貧困地域から歩くとなるとかなりの日数がかかる。毎日野党と戦い更に王都まで歩く体力があれば騎士団に受かるのも納得がいった。

「私は今の生活にとても満足しております。生活の質があがったこともそうですがなにより私が必要とされているこの環境がとても幸せ思います」

 サラの状況を同情するような発言をすると、サラは不思議な顔した。そしてよくある家庭環境だと教えてくれた。私は何も返せなかった。
 サラは話終わると丁寧お辞儀をしてくれた。

「話は以上だ。そこで、ルカに聞く。君はサラが今の任務についていることが反対なのだよね」

 アーサーは確認するように私の目見る。私はゆっくりと頷きながら、何を言われるのかと思い心臓が早くなるのを感じた。彼はルイの方をチラリとみてまた私に視線を移す。ルイは何か分かったように頷いた。
 分かったなら教えてほしい。私はまったくわからない。

「反対するからにはもちろん代替え案があるのだよね」

 そういうことか。
 アーサーの言うことはわかる。そりゃそうだ。“イヤイヤ”ばかりも子どもには発言はない。
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