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モヤモヤする

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 私とルイ、アーサーがにやけていると、刺さるような視線を感じた。恐る恐る視線の方を向くと叔父が目を細めている。そして、いつもより低いトーンで言葉を発した。

「今は何の話をする時間だい。法務大臣の君まで何をしている」

 アーサーは叔父に睨みつけられるとニヤニヤ笑いから真面目な表情すぐに切り替えた。ルイと私も私情を挟んだことを謝罪していた。確かにルイがトーマス騎士団長に好意がある話は今の話し合いにふさわしくはない。しかし、トーマス騎士団長に対して私は恋愛感情を抱いてないことが伝わったことは良かったと思う。嫉妬でルイと仲たがいしたくはない。

「申し訳ございません。摂政殿下。ハリー・ナイトが何かしらの魔法陣をルカに掛けている可能性があるという話ですよね」

 丁寧に謝罪するアーサーに叔父は頷いている。
 そういえば、アーサーは叔父に対して敬語で話していたのを思い出した。王弟である叔父の方がアーサーより身分が上のため当たり前である。しかし、いつも私たちには砕けた話し方をしているので新鮮に聞こえた。
 
「その時のルカは“ハリー・ナイトには会ってはいけない”と思ったのでしたら、ハリー・ナイトが掛けた魔法の効果はそれですよね」

 ルイに意見に同意するようにその場にいた全員が頷いた。
 私はその時の状況を思い出した。一年前の話であるが鮮明に思い出すことができ、ルカの記憶力の良さに感謝した。
“会ってはいけない”と思ったのはトーマス騎士団長がハリー・ナイトの部屋に入室した瞬間だ。つまりその時点ではハリー・ナイトは部屋にいてそこから転送魔法陣で移動していることになる。そしてウィリアム副団長と合流した時点、ハリー・ナイトは部屋の戻ってきており再度私に魔法をかけたと推測できる。

「じゃ、そこでハリー・ナイトはアンドレーに会いに行ったということかな」

 確かに辻褄があると思いアーサー意見に納得し頷いた。さっきアーサーが“ハリー・ナイトとアンドレーは顔合わせると会話もせずに数秒で別れる”と言っていた。つまりハリー・ナイトはジャスパーに定期的にあい“何か”をしてもらわないと我が国での生活が難しいということだ。

「そうですね。」

 アーサーの言葉に同意しながらルイは叔父のことをじっと見つめている。あまりに見るので叔父が理由を来た。するとルイは「容姿」と一言つぶやいた。その言葉で何かを思いついたようで、アーサーは細い目を大きくして手をたたいた。

「なるほどね。ルキア帝国、国民特有の容姿が魔法陣で隠しているのかな。もしくは女帝の特徴を受け継いでいるとしたら瞳が三色だよ。それが我が国の国民と大きく違う」

「それならハリー・ナイトは魔法陣使えるですから自分でやればいいじゃないですか」

 私の発言に「知らないのか」と叔父が目を大きくして驚いた。そして魔法陣は自分自身にかけることができないことを教えてくれた。

「ルカに魔法陣を教えたのは法務大臣ではないのかい」

「いいえ。教えられるわけ、ないですよね」

 叔父の質問のアーサーが暗い顔した。叔父も視線を下に向け「そうだった」と一言いった。
 どうやら私が魔法陣を学ぶことに問題があるようだ。しかし、叔父もアーサーもはっきり言わないのでわからない。ルイを見ると困った顔をして、視線を泳がせていることからルイも何か知っているようである。

「ごめんね。気になるよね。だけど僕からは何も言えないだよね。そういう規則があるのだ。知りたいなら母のグレースに聞いてほしい」

「すまない。私からも伝えることができない」

 二人に謝られては私もこれ以上追及することはできない。私自身のことなのに分からないという展開にモヤモヤした。しかし、明日グレース殿下に会う約束であるためその時わかるだろうと思った。



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