【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
上 下
101 / 146

ハリー・ナイトと魔法陣

しおりを挟む
 私の発作が出た時の事を細かく確認していく事になった。最初の発作はハリー・ナイトを探しに騎士館に行った時だ。場所はハリー・ナイトの部屋の前であることを説明すると叔父とアーサーの顔色が変わった。
 それに気づいたように、ルイは眉を寄せて確認するように叔父とアーサーを見た。

「今の話の流れだとハリー・ナイトは魔法陣を使えるのですよね。これは確証があることですか?僕とルカの見解はまだ“可能性”の段階ですが……」

二人の様子からあの場にアーサーがいなかったのであろう。だから、ルイはハリー・ナイトの魔法陣使用について質問したのだ。あの時の発作の原因がハリー・ナイトなら、何かしらの魔法をかけられたというかことだ。

「確証はあるよ」

 アーサーがチラリと叔父の方を見ると、叔父は「構わない」と頷いた。それに対して何度か頷くと私達の方を向いた。

「ルイは分かっていてアルバート叔父上の名前を出したんだよね。情報源はアルバート叔父上だよ」

 アーサーの言葉に「確実はありませんでした」と表情を動かさずにルイは答えた。アーサーは肩をすくめるとアルバート殿下について説明してくれた。彼は数年前から闇市に潜入している。そこで闇市の頭であるジャスパーとも接触している。
 潜入しているのならばハリー・ナイトの事は私達より先に分かっていたではないかと思ったがそうではないらしい。ハリー・ナイトの存在は隠されておりアルバート殿下が知ったのは騎士団からの情報らしい。
 ハリー・ナイトは貧困地域での存在は確認されているが闇市やジャスパーとの繋がりは全くなかった。それを暴いたのはウィリアム副団長だという。闇市に潜入しているアルバート殿下が気づかなかった事柄を騎士団員とはいえ外部の人間が調査できるのが不思議だ。それを口に出すとルイが困ったような顔した。

「彼は色々な繋がりがあるのだよ」

 アーサーは問題ないときっぱりと言い切った。ウィリアムは闇市や貧困地域と人間と取引しているという事はだろうか。前世の警察も無法者と取引していたから同じようなものだろうと思った。

「アルバート叔父上と騎士団でハリー・ナイトを調べた。どうやら定期的に闇市の頭であるジャスパーに会いに言っているようだね」

 アーサーの言い方だとアルバート殿下と騎士団が協力しているように聞こえるが実際は違うと叔父が教えてくれた。叔父たちはアルバート殿下と騎士団から別々情報を貰っているらしい。アルバート殿下には騎士団の事を伝えているがその逆はないという事だ。
 アルバート殿下の件は私に魔法陣を使ってまで忘れさせようとした事実であるからよく考えれば当たり前の事である。

「ただハリー・ナイトとジャスパーは顔合わせると会話もせずに数秒で別れる。そこでジャスパーが魔法陣を使っているみたいだね」

「え?では魔法陣は誰でも使えるということですか」

 私はアーサーの言葉に驚いて大きな声を出してしまった。ハリー・ナイト以外にも使えるという事はやっぱり、本来は誰でも扱える技術であり、それを王族が独占していたのだ。私はアーサーのセリフで確証したと思ったが二人は渋い顔をしている。

「私も姉たちも使うことはできなかったよ」

 叔父がゆっくりと首をふった。叔父のオリバー、そして彼の一番上の姉であり私たちの母であるルナ、二番目の姉であり第二王妃のエマは隣国パニーア共和国出身である。叔父とエマ王妃は黒い瞳と髪の国ソーワの血も流れているが我が国の血は一切ない。

「それは我が国の血筋ではないからですか」

「我が国の強欲な貴族たちは皆魔法陣発動を試しているよ」

 私の質問にアーサーが飽きられたように答えた。確かに王族が必死に隠してもそれは無理があるのかもしれない。石板魔法陣は遺跡だ。国中を探せばまだどこかに埋まっている可能性がある。つまり、王族の血には魔法陣を発動するための魔力があるという事だ。

「では、ジャスパーとハリー・ナイトと正体は一つじゃないですか」

 口を抑えながらルイが言った。ここまでヒントを貰えれば彼らの正体は誰でも想像することができる。闇市に王族のアルバート殿下が潜入している意味が理解できた。


 ジャスパーもハリー・ナイトも我が国の王族血縁者だ。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな
ファンタジー
―あらすじ― 異世界に転移したゲス・エストは精霊と契約して空気操作の魔法を獲得する。 強力な魔法を得たが、彼の真の強さは的確な洞察力や魔法の応用力といった優れた頭脳にあった。 ゲス・エストは最強の存在を目指し、しがらみのない異世界で容赦なく暴れまくる! ―作品について― 完結しました。 全302話(プロローグ、エピローグ含む),約100万字。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

処理中です...