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疑われて
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アーサーの話によると私は幼いことから魔法陣を書いていたらしい。本格的に習っていたわけではなく母上と一緒に紙に書いて遊んでいたのだ。母の祖国には魔法陣というものがなかったため興味津々だったそうだ。
しかし、ある日突然発動してしまい危険を感じた上層部が私に対して魔法陣禁止令を出した。それから魔法陣のお絵かきは出来なくなってしまった。
全く、記憶にない話が思い起こせば家庭教師から魔法陣の概要は教えてもらったが実際の発動方法は誰からも習っていない。
でも、アーサーが話したのではない事を知り安心した。
「ルカが天才なのは知っています。しかし、それがハリー・ナイトとの繋がりにはなりません」
ルイが私のことを天才と思っていたことを知り嬉しくなった。しかしその彼から負の感情を感じて喜ぶ気持ちは一気に消えた。はっきり言ってめちゃくちゃ怖い。
どうやら私がハリー・ナイトに魔法陣を教えたと疑われているらしい。それが事実ならば一年前に騎士館で彼を探すなど目立つことをするわけがない。そこまで私はバカだと思われていると知り落ち込む。そもそも騎士団使って調べたならば私との繋がりもわかるのではないだろうか。
「確かにね。でも疑惑は全て解消しておきたいだ。特にルカは第二王子だから」
どんなにルイに睨みつけられても国王の表情は優しい。この人は息子を愛しているが表現が下手なだけなのかもしれない。
「まだ、ハリー・ナイトの件は公になっていないけど“裏切り”というものにすこしでもルカが関わっては……今後のことを考えると良くはない。だから、ルカにはハリー・ナイトを裁いてもらい彼との繋がりはないことを証明してほしかった。それにルイも加われば兄弟の絆も一緒に示せる」
国王の必死な表情に心を動かされたようでルイは表情を緩めると椅子に座りなおした。そして大きくため息をついた。
「最初からそういえばいいじゃないですか」
国王相手に随分ふてぶてしい態度だと思う。それに素直ではない。それに、私といるときと大分態度が違う。しかし、部屋の重い雰囲気がなくなったのでよかったと思った。これで話し合いが始められると安心した。
そもそも“第二王子”に対して本当敏感になりすぎだと思う。“第二王子”だから裏切ったわけではなくあの人にはそういう傾向があったのだと思う。大体その人は今……。
「いや、それは本当に……」
「その裏切った第二王子って今どこにいるのですか……って、あ……」
考えごとをしていて国王の言葉に被せてしまった。
気づいた時には全員が私の方を見ており、緊張で身体が強張った。しかしルイがすぐに私の様子に気づき「大丈夫」と手を握ってくれた。症状が出たわけではなくただの緊張であったがルイの心遣いがとても嬉しかった。
私が割り込んだことに国王は驚き、叔父は怖い顔している。「無礼だ」と目を細める叔父に国王は手を軽く振りながら「いいから」と私に言葉の続きを促した。国王の指示に叔父は不満そうであったが口を閉じた。私が礼を言うと国王はニコリと笑顔を見せた。
「ルカは僕の弟アンドルーについてはどこまで知っているのかな。現在の生死及び居場所は分からないだよね」
国王は困ったような顔で教えてくれた。私は彼が奴隷として売られたことまで知っていると伝えてから売られた場所を教えてほしいとお願いすると国王は更に眉を下げた。
ずっと黙っていた叔父が身を乗り出して私を食い入るように見つめる。そして、口を開いた。
「もしかしてルカは彼がハリー・ナイトに魔法陣を教えたと考えているのかい」
しかし、ある日突然発動してしまい危険を感じた上層部が私に対して魔法陣禁止令を出した。それから魔法陣のお絵かきは出来なくなってしまった。
全く、記憶にない話が思い起こせば家庭教師から魔法陣の概要は教えてもらったが実際の発動方法は誰からも習っていない。
でも、アーサーが話したのではない事を知り安心した。
「ルカが天才なのは知っています。しかし、それがハリー・ナイトとの繋がりにはなりません」
ルイが私のことを天才と思っていたことを知り嬉しくなった。しかしその彼から負の感情を感じて喜ぶ気持ちは一気に消えた。はっきり言ってめちゃくちゃ怖い。
どうやら私がハリー・ナイトに魔法陣を教えたと疑われているらしい。それが事実ならば一年前に騎士館で彼を探すなど目立つことをするわけがない。そこまで私はバカだと思われていると知り落ち込む。そもそも騎士団使って調べたならば私との繋がりもわかるのではないだろうか。
「確かにね。でも疑惑は全て解消しておきたいだ。特にルカは第二王子だから」
どんなにルイに睨みつけられても国王の表情は優しい。この人は息子を愛しているが表現が下手なだけなのかもしれない。
「まだ、ハリー・ナイトの件は公になっていないけど“裏切り”というものにすこしでもルカが関わっては……今後のことを考えると良くはない。だから、ルカにはハリー・ナイトを裁いてもらい彼との繋がりはないことを証明してほしかった。それにルイも加われば兄弟の絆も一緒に示せる」
国王の必死な表情に心を動かされたようでルイは表情を緩めると椅子に座りなおした。そして大きくため息をついた。
「最初からそういえばいいじゃないですか」
国王相手に随分ふてぶてしい態度だと思う。それに素直ではない。それに、私といるときと大分態度が違う。しかし、部屋の重い雰囲気がなくなったのでよかったと思った。これで話し合いが始められると安心した。
そもそも“第二王子”に対して本当敏感になりすぎだと思う。“第二王子”だから裏切ったわけではなくあの人にはそういう傾向があったのだと思う。大体その人は今……。
「いや、それは本当に……」
「その裏切った第二王子って今どこにいるのですか……って、あ……」
考えごとをしていて国王の言葉に被せてしまった。
気づいた時には全員が私の方を見ており、緊張で身体が強張った。しかしルイがすぐに私の様子に気づき「大丈夫」と手を握ってくれた。症状が出たわけではなくただの緊張であったがルイの心遣いがとても嬉しかった。
私が割り込んだことに国王は驚き、叔父は怖い顔している。「無礼だ」と目を細める叔父に国王は手を軽く振りながら「いいから」と私に言葉の続きを促した。国王の指示に叔父は不満そうであったが口を閉じた。私が礼を言うと国王はニコリと笑顔を見せた。
「ルカは僕の弟アンドルーについてはどこまで知っているのかな。現在の生死及び居場所は分からないだよね」
国王は困ったような顔で教えてくれた。私は彼が奴隷として売られたことまで知っていると伝えてから売られた場所を教えてほしいとお願いすると国王は更に眉を下げた。
ずっと黙っていた叔父が身を乗り出して私を食い入るように見つめる。そして、口を開いた。
「もしかしてルカは彼がハリー・ナイトに魔法陣を教えたと考えているのかい」
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