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計画
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叔父に謝罪された。彼に謝られたのは初めてであったため驚いた。ついでのように国王が「ごめんね」と言う。こちらの謝罪は素直に受け取れなかった。申し訳ない気持ちがないとは思わないが軽いのだ。国王相手に文句を言っても仕方ないと思い口に出すことはなかった。
叔父はまず国王の目的について話してくれた。国王自身が言ったように彼は国王でいたくない。そもそも、王位継承権も破棄したかったのだ。それを止めたのが法務大臣であり国王のいとこのアーサーだ。だからアーサーは国王に対して全面的に協力するらしい。
「名誉の為に伝えるが兄上は全ての公務を内容の良し悪しともかくとして全力で行っている」
「なんか刺のある言い方だけど……確かに手を抜いたことはないよ。ただ国王も王妃も仕事も忙しすぎる。僕はエマとゆっくり過ごしたい」
私は眉をひそめた。国王の“エマと過ごしたい”という言葉に違和感を覚える。今回の裁判は王妃とハリー・ナイトの不倫により彼が裁かれるのではないのか。もしかして私は根本から間違っているのかもしれない。
椅子に座り直すと改めて今回の裁判内容の説明をお願いした。すると叔父は頷いて説明する。
「判事を引き受けてくれるのだから勿論今回の裁判について詳しく話そう。しかしルカも知っていることが多いと思う」
そんなことはない。そもそも私はハリー・ナイトが裁かれる理由すら間違えていた。本当に私が判事をするならば内容を確認したい。この裁判でハリー・ナイトだけではなくその周囲の人間の人生が変わってしまう。
私は叔父の説明を黙って頷きながら話を聞いた。
「まず、ハリー・ナイトの罪状だが奴隷法違反だ。貧困地域で行われているとされる闇奴隷市への関与している。闇市への関与は一般市民でも罪が重いが彼は騎士であるから理由によっては極刑を免れない」
私は目が点になった。予想していた罪状と全く違う。この罪状とさっきの国王の発言を組み合わせるとエマ第二王妃は不倫していない。ハリー・ナイトとの不倫をする前に別の容疑で捕まったということか。
「騎士団がハリー・ナイトを調べ、闇市への関与が発覚した。騎士団が彼を調べるきっかけとなったのがルカの行動だ。一年前騎士団へ行きハリー・ナイトを探したそうだな」
一年前に騎士団を訪れたことを忘れるわけがない。推しメンの騎士団長に会うことができたのだ。
よく考えれば王子が探していた人物を調べないわけがない。
叔父は更に闇市の詳しい話をしてくれた。闇市の事は漫画でも出てくるので知っている。確かジャスパーと言う仮面の男が牛耳っているはずだ。主人公がそのジャスパーを倒して奴隷を助けるはずであるが主人公のアイラはまだ自国にいる。このままでは主人公なしで話が進んでしまうがそれを止める術が私にはない。きっと闇市も一掃するつもりだろう。
「ハリー・ナイトは恐らくであるが奴隷大国であるルキア帝国の者だ。ルキアから奴隷を闇市に流している」
ルキア帝国。奴隷商売で大きくなった国である。我が国もこの国から奴隷取引をしている。城には奴隷がいないため私は奴隷というものにあった事がない。
「裁判ではハリー・ナイトがルキア帝国から奴隷を流していた事を明らかにしてほしい」
仕事が増えている気がする。元々は裁判への参加だったはずが、裁けと言われて今度は真実の追求だ。
「今回の主役はルカとルイだ。一年前ルカは、ハリー・ナイトが貧困地域出身であるにしては優秀すぎると感じ騎士団を使いハリー・ナイトを調べ、彼が貧困地域にきたのは最近であり元はルキア帝国の騎士であるのとを突き止める」
いやいや、それを調べたのは騎士団であり、支持したのは恐らくトーマス騎士団長とウィリアム副団長だ。その功績を私が奪うなどあり得ない。私は叔父を睨みつけるが「国のため」と言って話を続けた。
「ルカはルイと協力して、闇市の壊滅し奴隷制度の廃止そして、ルキア帝国との同盟及び貿易を破棄。奴隷制度の廃止は恐らく貴族から反感をうけるであろう。だが、奴隷を廃止しなければ我が国の先はない」
私がルイと協力することにより“次期国王と次期摂政が協力関係にある”ことの証明とするのか。これだけ大きな事をすれば大抵の人間は協力関係にあることを認めるであろう。しかし、奴隷制度廃止による貴族の反発はどう抑えればよいのだろう。全貴族に反発されたらいくら王族でも抑えることは難しいと思う。そう考えながらふと天井を見上げると小さな白い紙が貼ってあった。
「あれはなんですか」
あまりに不自然すぎるため天井の紙を指さして確認した。すると二人は動きをとめた。叔父の無表情は変わらないが国王の笑顔は消えた。怪しすぎる二人の行動から天井の紙がただの紙でないことはわかった。
「すべて話してくれるのですよね」
叔父はまず国王の目的について話してくれた。国王自身が言ったように彼は国王でいたくない。そもそも、王位継承権も破棄したかったのだ。それを止めたのが法務大臣であり国王のいとこのアーサーだ。だからアーサーは国王に対して全面的に協力するらしい。
「名誉の為に伝えるが兄上は全ての公務を内容の良し悪しともかくとして全力で行っている」
「なんか刺のある言い方だけど……確かに手を抜いたことはないよ。ただ国王も王妃も仕事も忙しすぎる。僕はエマとゆっくり過ごしたい」
私は眉をひそめた。国王の“エマと過ごしたい”という言葉に違和感を覚える。今回の裁判は王妃とハリー・ナイトの不倫により彼が裁かれるのではないのか。もしかして私は根本から間違っているのかもしれない。
椅子に座り直すと改めて今回の裁判内容の説明をお願いした。すると叔父は頷いて説明する。
「判事を引き受けてくれるのだから勿論今回の裁判について詳しく話そう。しかしルカも知っていることが多いと思う」
そんなことはない。そもそも私はハリー・ナイトが裁かれる理由すら間違えていた。本当に私が判事をするならば内容を確認したい。この裁判でハリー・ナイトだけではなくその周囲の人間の人生が変わってしまう。
私は叔父の説明を黙って頷きながら話を聞いた。
「まず、ハリー・ナイトの罪状だが奴隷法違反だ。貧困地域で行われているとされる闇奴隷市への関与している。闇市への関与は一般市民でも罪が重いが彼は騎士であるから理由によっては極刑を免れない」
私は目が点になった。予想していた罪状と全く違う。この罪状とさっきの国王の発言を組み合わせるとエマ第二王妃は不倫していない。ハリー・ナイトとの不倫をする前に別の容疑で捕まったということか。
「騎士団がハリー・ナイトを調べ、闇市への関与が発覚した。騎士団が彼を調べるきっかけとなったのがルカの行動だ。一年前騎士団へ行きハリー・ナイトを探したそうだな」
一年前に騎士団を訪れたことを忘れるわけがない。推しメンの騎士団長に会うことができたのだ。
よく考えれば王子が探していた人物を調べないわけがない。
叔父は更に闇市の詳しい話をしてくれた。闇市の事は漫画でも出てくるので知っている。確かジャスパーと言う仮面の男が牛耳っているはずだ。主人公がそのジャスパーを倒して奴隷を助けるはずであるが主人公のアイラはまだ自国にいる。このままでは主人公なしで話が進んでしまうがそれを止める術が私にはない。きっと闇市も一掃するつもりだろう。
「ハリー・ナイトは恐らくであるが奴隷大国であるルキア帝国の者だ。ルキアから奴隷を闇市に流している」
ルキア帝国。奴隷商売で大きくなった国である。我が国もこの国から奴隷取引をしている。城には奴隷がいないため私は奴隷というものにあった事がない。
「裁判ではハリー・ナイトがルキア帝国から奴隷を流していた事を明らかにしてほしい」
仕事が増えている気がする。元々は裁判への参加だったはずが、裁けと言われて今度は真実の追求だ。
「今回の主役はルカとルイだ。一年前ルカは、ハリー・ナイトが貧困地域出身であるにしては優秀すぎると感じ騎士団を使いハリー・ナイトを調べ、彼が貧困地域にきたのは最近であり元はルキア帝国の騎士であるのとを突き止める」
いやいや、それを調べたのは騎士団であり、支持したのは恐らくトーマス騎士団長とウィリアム副団長だ。その功績を私が奪うなどあり得ない。私は叔父を睨みつけるが「国のため」と言って話を続けた。
「ルカはルイと協力して、闇市の壊滅し奴隷制度の廃止そして、ルキア帝国との同盟及び貿易を破棄。奴隷制度の廃止は恐らく貴族から反感をうけるであろう。だが、奴隷を廃止しなければ我が国の先はない」
私がルイと協力することにより“次期国王と次期摂政が協力関係にある”ことの証明とするのか。これだけ大きな事をすれば大抵の人間は協力関係にあることを認めるであろう。しかし、奴隷制度廃止による貴族の反発はどう抑えればよいのだろう。全貴族に反発されたらいくら王族でも抑えることは難しいと思う。そう考えながらふと天井を見上げると小さな白い紙が貼ってあった。
「あれはなんですか」
あまりに不自然すぎるため天井の紙を指さして確認した。すると二人は動きをとめた。叔父の無表情は変わらないが国王の笑顔は消えた。怪しすぎる二人の行動から天井の紙がただの紙でないことはわかった。
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