【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
上 下
69 / 146

置いて行かれたルイ

しおりを挟む
 突然、オリビア嬢が窓から飛び出してそれをルカ追い、その後を護衛騎士マリア隊長がついて行くまでの流れは本当にあっという間であった。特に扉付近にいたマリア隊長の動きは目で追うのがやっとだった。勿論、僕も行きたかったが後ろにいたウィリアム副団長がオリビア嬢が動いた瞬間に僕の両手肩を掴んだ。そして、「お任せ下さい」と言われ動けなくなった。

 素晴らしい連携だと思うが簡単に押さえられてしまい悔しい気持ちもあった。

 「大丈夫です。ルカを追いませんから」

 もぬけの空になったベッドを見ながら、ウィリアム副団長に伝えると謝罪と共に手を離してくれた。ため息をつきながら、開いた窓に視線を向けるとクラーク卿いた。窓から身を乗り出して娘を探しているようである。
 この状態の心当たりをクラーク卿に聞こうとしたが、彼の青ざめた顔を目にするとその意味はないと思った。

 とりあえずは待つしかない。マリア隊長が追ったのだから、見つけ次第戻るだろう。

 そういえば、以前マリア隊長にルカの話をした事を思い出した。彼女に聞けば殆ど鍛錬を行っていなかったルカの強さの理由がわかるかと思ったのだ。彼女はルカの護衛騎士として彼を見守ってきたのだ。しかし、彼女は予想外であるという顔をした後ニヤニヤとしていた。あまりいい方向に進むように思えない。彼女にルカの話をしたのを後悔したが後の祭りである。

 ルカたちかなり待ったが状態に変化がない。僕の後ろに立ち周囲の様子を確認しているウィリアム副団長にひたすら窓の外を見ているクラーク卿だ。いい加減痺れを切らしてきたため、ウィリアム副団長の方向いた。

 「いつまでもこの状態でいるつもりですか」

 その瞬間、跪く。そして何も心配する事はないというような穏やかな顔で僕の方を見上げた。その余裕ある顔が僕の胸をざわつかせる。

 「護衛騎士のマリアの報告を待つつもりですが、ルイ第一王子殿下の御命令があれば従います」

 そうですか。
 予想通りの答えであった。今すぐルカを探しに行きたいというのが僕の思いであるがそれが得策ではないことくらいは理解している。じっとウィリアム副団長を眺めていると……。
 
 「失礼いたします」

 突然ウィリアム副団長が立ち上がると扉に向かった。扉が開かれるとそのにはルカとマリア隊長に抱かれたオリビア嬢がいた。僕はすぐに近寄ろうとしたがルカは手のひらを僕に見せてそれを止めた。
 窓の外を見ていたクラーク卿は扉が開く音に気づき振り向いた。「オリビア」と泣きそうな声をあげ駆け寄る。しかし、オリビア嬢の近くまでくるとウィリアム副団長に静止させられた。

 「妨げしまい、申し訳ありません。ご令嬢は怪我をなさっているようです。治療致します」

 動揺するクラーク卿にはっきりと告げるとウィリアム副団長の指示でマリア隊長はオリビア嬢をベッドに寝かせた。オリビア嬢の足は痛々しいほどに腫れ上がっていた。クラーク卿の顔は真っ青だ。しかし、どうしていいかわからずにウィリアム副団長に素直に従っている。

 それからすぐに扉を叩く音がして、ウィリアム副団長が扉を開けるとルイの護衛騎士アーロ隊長がいた。アーロ隊長は大きな箱を渡すとすぐ護衛にもどるようで扉をしめた。ウィリアム副団長は足早に護衛騎士マリア隊長のとこへ行くと、アーロ隊長から貰った箱を渡した。治療が始まるようである。
 その間ルカはずっとオリビア嬢から離れない。今はベッドで眠るオリビア嬢の手を握っている。

 なんなんだ。

 そもそも、僕たちはオリビア嬢を利用しにきたのだ。怪我ぐらいで彼女を心配する意味が分からない。ルカは彼女を苦手としていたのに今は心配しているようである。

 外で何があったんだ。

 やっぱり、自分も行くべきであったとウィリアム副団長を睨む。ウィリアム副団長は僕の視線など気にならないようで、オリビア嬢の治療の様子と当たりの状況を確認している。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。

蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。 此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。 召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。 だって俺、一応女だもの。 勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので… ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの? って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!! ついでに、恋愛フラグも要りません!!! 性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。 ────────── 突発的に書きたくなって書いた産物。 会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。 他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。 4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。 4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。 4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました! 4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。 21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!

拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4
ファンタジー
王都は整備局に就職したピートマック・ウィザースプーン(19歳)は、勇者御一行、魔王軍の方々が起こす戦闘で荒れ果てた大地を、上司になじられながらも修復に勤しむ。平地の行き届いた生活を得るために、本日も勤労。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...