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置いて行かれたルイ
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突然、オリビア嬢が窓から飛び出してそれをルカ追い、その後を護衛騎士マリア隊長がついて行くまでの流れは本当にあっという間であった。特に扉付近にいたマリア隊長の動きは目で追うのがやっとだった。勿論、僕も行きたかったが後ろにいたウィリアム副団長がオリビア嬢が動いた瞬間に僕の両手肩を掴んだ。そして、「お任せ下さい」と言われ動けなくなった。
素晴らしい連携だと思うが簡単に押さえられてしまい悔しい気持ちもあった。
「大丈夫です。ルカを追いませんから」
もぬけの空になったベッドを見ながら、ウィリアム副団長に伝えると謝罪と共に手を離してくれた。ため息をつきながら、開いた窓に視線を向けるとクラーク卿いた。窓から身を乗り出して娘を探しているようである。
この状態の心当たりをクラーク卿に聞こうとしたが、彼の青ざめた顔を目にするとその意味はないと思った。
とりあえずは待つしかない。マリア隊長が追ったのだから、見つけ次第戻るだろう。
そういえば、以前マリア隊長にルカの話をした事を思い出した。彼女に聞けば殆ど鍛錬を行っていなかったルカの強さの理由がわかるかと思ったのだ。彼女はルカの護衛騎士として彼を見守ってきたのだ。しかし、彼女は予想外であるという顔をした後ニヤニヤとしていた。あまりいい方向に進むように思えない。彼女にルカの話をしたのを後悔したが後の祭りである。
ルカたちかなり待ったが状態に変化がない。僕の後ろに立ち周囲の様子を確認しているウィリアム副団長にひたすら窓の外を見ているクラーク卿だ。いい加減痺れを切らしてきたため、ウィリアム副団長の方向いた。
「いつまでもこの状態でいるつもりですか」
その瞬間、跪く。そして何も心配する事はないというような穏やかな顔で僕の方を見上げた。その余裕ある顔が僕の胸をざわつかせる。
「護衛騎士のマリアの報告を待つつもりですが、ルイ第一王子殿下の御命令があれば従います」
そうですか。
予想通りの答えであった。今すぐルカを探しに行きたいというのが僕の思いであるがそれが得策ではないことくらいは理解している。じっとウィリアム副団長を眺めていると……。
「失礼いたします」
突然ウィリアム副団長が立ち上がると扉に向かった。扉が開かれるとそのにはルカとマリア隊長に抱かれたオリビア嬢がいた。僕はすぐに近寄ろうとしたがルカは手のひらを僕に見せてそれを止めた。
窓の外を見ていたクラーク卿は扉が開く音に気づき振り向いた。「オリビア」と泣きそうな声をあげ駆け寄る。しかし、オリビア嬢の近くまでくるとウィリアム副団長に静止させられた。
「妨げしまい、申し訳ありません。ご令嬢は怪我をなさっているようです。治療致します」
動揺するクラーク卿にはっきりと告げるとウィリアム副団長の指示でマリア隊長はオリビア嬢をベッドに寝かせた。オリビア嬢の足は痛々しいほどに腫れ上がっていた。クラーク卿の顔は真っ青だ。しかし、どうしていいかわからずにウィリアム副団長に素直に従っている。
それからすぐに扉を叩く音がして、ウィリアム副団長が扉を開けるとルイの護衛騎士アーロ隊長がいた。アーロ隊長は大きな箱を渡すとすぐ護衛にもどるようで扉をしめた。ウィリアム副団長は足早に護衛騎士マリア隊長のとこへ行くと、アーロ隊長から貰った箱を渡した。治療が始まるようである。
その間ルカはずっとオリビア嬢から離れない。今はベッドで眠るオリビア嬢の手を握っている。
なんなんだ。
そもそも、僕たちはオリビア嬢を利用しにきたのだ。怪我ぐらいで彼女を心配する意味が分からない。ルカは彼女を苦手としていたのに今は心配しているようである。
外で何があったんだ。
やっぱり、自分も行くべきであったとウィリアム副団長を睨む。ウィリアム副団長は僕の視線など気にならないようで、オリビア嬢の治療の様子と当たりの状況を確認している。
素晴らしい連携だと思うが簡単に押さえられてしまい悔しい気持ちもあった。
「大丈夫です。ルカを追いませんから」
もぬけの空になったベッドを見ながら、ウィリアム副団長に伝えると謝罪と共に手を離してくれた。ため息をつきながら、開いた窓に視線を向けるとクラーク卿いた。窓から身を乗り出して娘を探しているようである。
この状態の心当たりをクラーク卿に聞こうとしたが、彼の青ざめた顔を目にするとその意味はないと思った。
とりあえずは待つしかない。マリア隊長が追ったのだから、見つけ次第戻るだろう。
そういえば、以前マリア隊長にルカの話をした事を思い出した。彼女に聞けば殆ど鍛錬を行っていなかったルカの強さの理由がわかるかと思ったのだ。彼女はルカの護衛騎士として彼を見守ってきたのだ。しかし、彼女は予想外であるという顔をした後ニヤニヤとしていた。あまりいい方向に進むように思えない。彼女にルカの話をしたのを後悔したが後の祭りである。
ルカたちかなり待ったが状態に変化がない。僕の後ろに立ち周囲の様子を確認しているウィリアム副団長にひたすら窓の外を見ているクラーク卿だ。いい加減痺れを切らしてきたため、ウィリアム副団長の方向いた。
「いつまでもこの状態でいるつもりですか」
その瞬間、跪く。そして何も心配する事はないというような穏やかな顔で僕の方を見上げた。その余裕ある顔が僕の胸をざわつかせる。
「護衛騎士のマリアの報告を待つつもりですが、ルイ第一王子殿下の御命令があれば従います」
そうですか。
予想通りの答えであった。今すぐルカを探しに行きたいというのが僕の思いであるがそれが得策ではないことくらいは理解している。じっとウィリアム副団長を眺めていると……。
「失礼いたします」
突然ウィリアム副団長が立ち上がると扉に向かった。扉が開かれるとそのにはルカとマリア隊長に抱かれたオリビア嬢がいた。僕はすぐに近寄ろうとしたがルカは手のひらを僕に見せてそれを止めた。
窓の外を見ていたクラーク卿は扉が開く音に気づき振り向いた。「オリビア」と泣きそうな声をあげ駆け寄る。しかし、オリビア嬢の近くまでくるとウィリアム副団長に静止させられた。
「妨げしまい、申し訳ありません。ご令嬢は怪我をなさっているようです。治療致します」
動揺するクラーク卿にはっきりと告げるとウィリアム副団長の指示でマリア隊長はオリビア嬢をベッドに寝かせた。オリビア嬢の足は痛々しいほどに腫れ上がっていた。クラーク卿の顔は真っ青だ。しかし、どうしていいかわからずにウィリアム副団長に素直に従っている。
それからすぐに扉を叩く音がして、ウィリアム副団長が扉を開けるとルイの護衛騎士アーロ隊長がいた。アーロ隊長は大きな箱を渡すとすぐ護衛にもどるようで扉をしめた。ウィリアム副団長は足早に護衛騎士マリア隊長のとこへ行くと、アーロ隊長から貰った箱を渡した。治療が始まるようである。
その間ルカはずっとオリビア嬢から離れない。今はベッドで眠るオリビア嬢の手を握っている。
なんなんだ。
そもそも、僕たちはオリビア嬢を利用しにきたのだ。怪我ぐらいで彼女を心配する意味が分からない。ルカは彼女を苦手としていたのに今は心配しているようである。
外で何があったんだ。
やっぱり、自分も行くべきであったとウィリアム副団長を睨む。ウィリアム副団長は僕の視線など気にならないようで、オリビア嬢の治療の様子と当たりの状況を確認している。
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