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オリビア嬢と従者ルーク

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 王都にある一際目立つ屋敷がクラール家である。色とりどり綺麗な花が咲く大きな庭園はありその奥には屋敷が二軒建っている。住居用の屋敷と来客用の屋敷だ。来客用の屋敷は招宴のできる広間がいくつものあり、宿泊可能な部屋は数え切れないほどある。
 そこの一番大きな広間では着々と招宴の準備が行われいた。その準備が進むのを私は心を踊らせて見ていた。しかし、その気持ちを害する物が視界に入った。
 
 私は目を大きくしてドレスを両手で持ち上げた。そして、カッカと足をならしながら、私はグラス持った侍女に近づいた。
 
 「ちょっと、その貴方その趣味の悪いものなにかしら」

 呼ばれた侍女だけではなく、周りの侍女もびくりと身体を振るわせる。それがまた心地よかった。
 私を怖がり、言いなりになればいいと思う。そのためにお父様に買って頂いた奴隷だ。

 「……」

 グラスを持った侍女が何も言わずに下を向いて震えている。侍女が持つそのグラスは屋敷の招宴でよく使われる物であった。
 何も言わない侍女に苛立ち、私はそのグラスを侍女の手からお盆毎払った。

 ガッシャン

 彼女が持っていた全てのグラスが宙を舞い大きな音をたてて落下した。他の使用人は動けずにその場で固まっていることにも腹が立つ。

 さっさと散らばったグラスを片付けなさいよ。

 大体グラスを間違えたのだからこの侍女は謝罪をするべきである。そんな事簡単なこともできず立ち尽くす侍女に腸が煮えくり返る。足を広げそこに力をいれ、手に勢いをつけ思いっきり侍女の頬叩いてやった。すると、そのまま倒れた。侍女は頬を抑え動かない。

 信じられない状況である。明日、ここで行われる招宴は私の誕生パーティーである。それもただの誕生パーティーではない。ルイ第一王子殿下とルカ第二王子殿下がいらっしゃるのだ。
 それは全員に伝えたはずであるのに最高級の品物を用意しないなんて頭が逝かれてるか私に対する嫌がらせでしかない。

 倒れた侍女はそれでも謝罪をしない。私の頭に血登った。本当に何もできない侍女だ。足を上げ侍女を踏んづけてやろうとしたその時、扉が開く音がした。

 足を床下ろし、扉に身体をむけるとそこには従者のルークがいた。私の心はふわりと明るくなりルークの元に駆け寄った。

 屋敷の使用人は殆ど奴隷であるがルークは違う。私の乳母の子どもである。
 本来乳母の子どもは専属使用人となるため同性ある事一般的だ。だが、お母様曰わく幼い私はルークが気に入り離れなかったらしい。乳母には他にも子どもがいたがルーク以外に近寄らないかったからルークが選ばれたと言っていた。

 ルークは私の全てを理解している素晴らしい使用人だ。奴隷とは大違いだ。
 まだ、床に転がり動かない侍女を睨みつける。
 
 本当に奴隷は脳みそもないのね。

 「お嬢様、奴隷を傷つけては法に触れます」

 そんなのは知っているわ。

 しかも一度購入した奴隷を捨てる事できない。おかげで地下室は使えない奴隷でいっぱいだ。
 国の公認した奴隷を購入するから法に縛られるのだ。早く、貧困地域で売られてる奴隷が欲しい。アレなら使えない場合法に触れず処分できる。

 お父様に頼んだ貧困地域の奴隷はいつになったら届くのかしら。今から楽しみで心が躍る。

 ルークはチラリと割れたグラスの残骸を見た。そして、ルークが手招きをすると使用人たちがグラスを片付けはじめた。倒れた侍女はもうそこにいなかった、

 「グラス、間違えましたか」

 私の気持ちを察して、ルークは声を掛けてくれた。さすがルーク、私の気持ちをよくわかっている。私が頷くとルークは優しく微笑んだ。

 「今回は王子殿下たちがいらっしゃいますから全て最高級にしないといけませんね」

 そうよ。やっぱり私の気持ちがわかるのはルークだけよ。
 
 お父様もたまによく私の事がよくわからない様だけどルークは一度そんな事ない。私が望む言葉を常にくれるし、望む行動をしてくれる。

 「ルカ第二王子殿下と上手くいくといいですね」

 ルークのあまりの勘の良さに動揺した。私がルカ第二王子殿下との結婚を望んでいるということはこれから噂として流す予定であった。
 ルカ第二王子殿下と直接お会いしたの数年前の茶会一度きりだが、あの時の殿下を思い出すと頬があつくなる。

 「早く、殿下にお会いしたわ」
 
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