【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

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未知の世界

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 一番初めに異変がおきたのはルイに誕生パーティー参加を打診された時だ。一人で向かうと思い不安で一杯になったがルイが一緒に行くことを知ると落ち着いた。その後はサラの時だ。彼女が去った後ルイの力がこもった紙を握りしめていたら心が穏やかになった。今もそうだ、ルイに触れたら気持ちが楽になった。

 ルイには何か癒し系の力があるのではないか。

 それをルイに説明すると“う~ん”と口に手を当て考え始めた。

 「紙は確かに力を込めたけど、それ以外は側にいただけで力は使ってないだよね。症状を和らげる力ってのはどうかな」

 ルイの言うことも分かる。“症状を和らげる力”というには根拠が弱い。しかし可能性がゼロではないのらば私は試してみたいと思った。

 「でも、私の症状が治まるなら試してみたい」

 「そうだね。わかった」

 ルイは優しく微笑み応えてくれたけど、不安そうに見えた。今まで紙に力をこめたり、私の書いた魔法陣を発動したり能力は何度も使ってきた。その時は一度も不安な様子はなかった。

 「なにか心配?」

 今まで私を見ていた真っ青な瞳がテーブルに落ちた。何も言わないがきっと思うことがあるのだろう。協力してもらうのだから彼の思いは受け止めたいし気がかりな事はあるなら伝えてほしいと思う。

 「なんて言うか…僕の力をルカに直接作用させるってことでしょ。僕の力を僕が理解していないからそれをルカに使って大丈夫かなと思っただよ」

 ルイは暗い顔している。彼の言っていることや気持ちはわかる。私もルイにウサギ耳をつけてしまった時は動揺した。確かにどんな副作用があるかわからない未知の世界である。

 だけど…。

 「やらなければならない進めないだよ。なるべく安全な方法を考えよう」

 未来の事を考えたら、副作用を怖がってはいられない。このままでは大切な人を失ってしまうのだからなりふり構っていられないのだ。
 それはルイも分かっているようで暗い顔であるが私を見て頷いてくれた。

 自分のウサギ耳の時は人体への魔法陣使用を否定しなかったのに私の時は不安そうな顔をしてくれる。ルイは自己犠牲型なんだと思う。

 「安全な方法」

 ルイはなにやら呟きだした。テーブルを見ながら額に手を置き、その指は一定のリズムで額を叩く。暗い表情はなくなり真剣な顔をしている。

 安全な方法でルイの力を得るにはどうしたらいいのだろうか。

 ルカ自身や力を込めた紙に触れるだけで効果があるようであるから、彼が何か特別なことをする必要はない。

 「力を込めた紙を持ちあるけばいいかな」
 「それは僕も考えた。だけど、あの紙も何がおこるか分からないだよね」

 確かに“力を込めた紙”に魔法陣を書かずに長期間置いておいた場合どうなるか検証していない。少なくとも何枚か用意して保存状況を変えて、ある程度の期間は観察を見たいと思うが今はそれをしている時間がない。ルイの力を込めて長期間安全な物があればいいのだけど…。
 ルイの真剣な表情を見ながら頭を抑えて考える。

 「あれだよ」

 ルイが勢いよく顔をあげるとキラキラとした目で私を見る。

 
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