【完結】腐女子が王子~独身中年女性が異世界王子に転生、ヲタクの知識と魔法と剣術で推しメンの危機を守ります~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
上 下
54 / 146

ルイの気持ち

しおりを挟む
 そろそろ太陽が沈み始める頃、ルカの自室へ叔父とアーサー共に向かった。オリビア侯爵令嬢の誕生パーティーの話をするためである。
 ルカさん部屋にきてみてればサラが飛び出していた。少し前までは日常的な光景だったがルカが女性の記憶を取り戻したのを境にそれがなくなった。

 サラに何かキツイ事、言ったのかな?

 首を振り思い直した。ルカのアレは平民差別ではなくただの人見知りであることが半年前わかった。ルカは母が中心になり育児を行うといった特徴な育てられ方をしている。

 だから、他者へ警戒心が強い。
 
 半年前、ルカが突然変わってしまったようだった。しかし、今思い返せば最近は以前のルカぽさを感じることも多い。図書室に閉じこもるとき衛兵がいないのがいい証拠である。ルカはそばに心許さない人間がいるのを嫌っていたから衛兵から逃げて図書室にいたのだろう。
 
 記憶が戻った当日は騎士館に出向いたり、宰相の所へ行ったという話を聞いた時は驚愕した。
 時間がたち二つの記憶がルカの中で入り混じりはじめているのかも知れない。
 
 ルカの部屋に入るとテーブルに座り、オリビア侯爵令嬢の話をしようとした。しかし、ルカがサラの事を僕が思っているより気にしており話はサラに方に流れた。

 ルカが暗い顔をしている。心なしか身体が震えているように見える。アーサーが“サラは以前はよくルカの部屋を飛び足した”と言った。そこから母を思い出したのだろう。サラがルカの専属侍女となったのは母が亡くなってからだから余計に母の死とその話は結びつく。
 
 あの時は僕はほとんどルカと関わることができなかった。ルカにはっきりと“来ないで”と言われたのもあるがあの時の誰しものが彼をまるで腫れ物に触るような扱いをしていた。つまり誰もルカの侍女を敬遠してサラに押し付けたである。
 本来、専属侍女は生まれてすぐに決まる。この年になっての決定は前代未聞であった。

 押し付けたと言っても誰が侍女の最終決定をしたんだろう。

 当時、どんな思いがありサラを追い出しているのか僕は知らなかった。噂通り平民嫌いなのかと思っていた。

 しかし、ここ半年ルカと関わるようになりそれは違うと理解したはずであった。ルカの優しさにも触れていたのだからルカがサラを気にしていないわけがない。
 
 サラの話をせずにオリビア侯爵令嬢の話をしようとしたのは強引だったと反省した。
 
 クラーク侯爵が貧困地域に通っていると言う噂の真相を知りたいと思い事を急いでしまったと後悔した。

 「ルカ、サラと何があったか教えて欲しい」

 アーサーは“いつものこと”として片付けようとしているがそれは問題がある。ルカにはこれからオリビア侯爵令嬢にあってもらうのだ。ここは丁寧に対応しないとそれが難しくなってしまう。

 事情を知らない二人はオリビア侯爵令嬢の誕生パーティーに参加しなくていいと思っているのかもしれない。

 ルカは僕の方向に顔向けた。まだ、その顔は青く今にも泣きそうである。

 「あの…時は、サラに話かけようとした」

 声に自信がないが僕に対応敬語でないことに安心した。
 やっと僕を叩く事ができるぐらい心を開いてくれたのにそれが以前のように閉ざしてしまったのかと心穏やかではいられなかった。

 「サラは食事の準備をしてくれていて、その時私から…声をかけた」

 ゆっくりと小さな声で僕だけを見て話してくれた。叔父やアーサーがいるのに二人に視線を送ることはない。今のルカには気持ちに余裕がなく、もしかしたら二人の存在を忘れているのかもしれない。
 大体、二人に話すなら敬語を使うはずである。つまり、今の言葉は全て僕あてのものであるということだ。

 それがとても嬉しかった。

 叔父もアーサーもそれに気づいているようだか特に何も言わずに頷きながらルカの話を聞いている。

 ルカの特別は叔父やアーサーなく自分だと思うと高揚した。アーサーへのモヤモヤした気持ちなどなくなっていた。

 「すると、サラが私のそばにいたんだ。そしたら、何も伝えられなくなり身体が震えて自分自身が制御できなくなった。そうして良いかわからず、サラに退室を願うことが精一杯だっただよ」 

 そこまでで言葉を止めると視線が降りてしまった。唇をかみ、手が震えている。その時の事を思い出しているのだろう。

 「つまり、サラと話そうとすると極度の緊張におそわれるってことだよね」

 僕がルカの言葉をまとめて確認すると「サラだけじゃないけど」とルカはボソリつぶやいた。ゆっくりと叔父とアーサーが僕を見て頷いている。その目は“オリビア侯爵令嬢と会うのは無理ではないか”と言っているようであった。
 しかし、コレを克服しないとルカは前に進むことができないと思う。

 しかし、無理はできない…。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偽りの恋人と生贄の三日間

有坂有花子
ファンタジー
三日目に生贄になる魔女が、騎士と偽りの恋人としてすごす三日間 「今日から恋人としてすごして」 珍しい容姿と強い魔力から『魔女』と疎まれていたリコ。ともにすごしてきた騎士のキトエと、辺境の城で三日間をすごすことになる。 「三日だけだから」とリコはキトエに偽りの恋人として振るまってほしいとお願いし、キトエは葛藤しながらもリコのお願いに沿おうとする。 三日目の夜、リコは城の頂上から身を投げなければならない、生贄だった。 ※レーティングは一応です

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...