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異変

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 私が声を掛けると、サラは笑顔で返事をして私の座るベットの側まで来てくれた。その笑顔がなぜか怖い。
 サラが近づくと心臓の鼓動が早くなる。私の目の前までくると膝をついて笑顔のままお辞儀をした。
 「何か御用でしょうか」
 サラが目の前に来ると言葉がでなくなる。サラの方を見ていられなくなり視線を落とし、膝の上にある自分の指をじっと見つめた。

 『クラーク家の事が聞きたいのですが…』

 言おうとした言葉が口から出てこない。サラは視線は外さず私の言葉を待っているようである。その沈黙が私を追い詰める。
 
 おかしい。
 
 私の中で何が起こっているのかよくわからないが、サラから離れることが一番よいと考えた。

 「もういいです。退室してください」

 私はその言葉を言うのが精一杯であった。
 すると、サラがビクリと体を震わせて次第に顔が青ざめていく。サラは気が動転しているしているようで動けずにいるようだ。 
 私の我儘であるから丁寧に伝えたかった。しかし、緊張のあまり私の手は震え次の言葉がまったく出てこなくなり、体が動かなかったので仕方なく目だけでサラをみた。すると、サラは身体を震わせながら立ち上がり「申し訳ございません」と頭を下げ退出していった。

 サラがいなくなると私はそのまま後ろに倒れ、胸を抑えるとそこには何かあるような感触があった。手をいれるとそこにはルイからもらった紙があった。
 以前触った時には何も感じなかった紙だが今は暖かく感じた。それを握りしめ、天井を見ながら深呼吸をすると次第に体の緊張がとけてきた。手の震えも収まり心臓の音もいつもとかわりがない。
 
 「なんだろう」

 声もでた。
 もう一度、さっきの感覚を考えてみる。サラだけではなく衛兵もの似たような感覚があった。衛兵の言葉に返事ができなかったのは今考えれば変な話である。

 この感覚を私は知っている気がした。

 騎士団長や副団長と会話との会話、その後の食事では国王への発言。更には国務室まで行き宰相に直談判をしている時だ。今回ほど酷くないが同じ状態になった。

 もっと幼い頃も経験した気がする。
 
 考えながら天井を見つめていると、扉の外から何人もの声がした。

 「なんだろう」

 それからすぐに扉を叩く音がしたので、返事をすると衛兵が扉を開けた。

 そこに現れたのは、ルイ、アーサーそして叔父であった。ルイか私の自室を訪れる事は最近多いので驚かなかったが、他二人の登場に驚愕した。私は慌てて持っていた紙を胸ポケットに仕舞うと立ち上がり、扉に向かった。

 嫌な予感がする。


 きっとサラの事だ。食事の準備をしてくれた彼女を追い出した事を怒られるに違いない。その証拠に3人とも険しい顔をして…

 あれ?してない。

 叔父は無表情だし、アーサーはにこやかに笑ってる。ルイは恐らく何考え事をしているのだろ。

 「はいるね。」

 扉の横で、何も言わず立ち尽くしてる私にアーサーは軽く声をかけると中に入って行った。それに叔父とルイも続いたので私も慌てて追いかけた。
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