上 下
47 / 146

閉じこもる

しおりを挟む
 
 オリビア嬢
  彼女を思い出すと寒気がする。それほど強烈な人物なのであるが、あれから何年もたち年を重ねているから落ち着いていることを本気で願う。

 私は家庭教師の名前も知らなかった。興味なかったけど、今考えればきちんと理解すべきであった。王族の家庭教師は全員上流貴族である。

 アイザック・クラーク侯爵
 爵位を持つクラーク家を私は一つしか知らない。もし、アイザック・クラーク侯爵がクラーク公爵家であるが侯爵を名乗るということは…。
 
 オリビア・クラーク嬢も出会った時から“侯爵令嬢”であった。当時の私は彼女の父親が誰なのか気にしなかった。

 貴族の家系図は図書室にない。しかし、爵位についてはあったはずである。

 私は勢いよく立ち上がり部屋をでると衛兵の声をかけられたが図書室に行くといって衛兵の護衛を断る。しかし、残念ながらついてきた。
 自室の扉から出たのが失敗であったと後悔する。いつもは魔法陣の練習など見られたくないので衛兵にばれないように窓から出入りするのだ。

 「お待ちください」
 衛兵が全力で追いかけてくる。

 まこう。

 私の全力で走るとあっという間に衛兵と距離ができ、気分が良くなる。そのまま進もうとしたところで衛兵の大きな声が聞こえた。
 「これ以上行かれるのでしたオリバー様とアーサー様に報告致します」

 私はすぐに足を止めた。

 後ろから衛兵の走る音と荒い息が聞こえる。ため息をついて振り返り衛兵の方を見る。私がとまったのを確認すると歩きながら呼吸を整えているようであった。
 衛兵が近づいてくるにつれ私の心拍数があがる。私を守るための衛兵だがら私に何かするわけではない。注意程度である。それもとても優しい言い方だ。
 わかっているのにドキドキする。

 彼はよく、私の護衛をしてくれる1人である…そういえば私は彼の名前を知らない。今まで気にもならなかった。

 私のそばまで来ると膝をつき視線を合わせる。衛兵の顔をしっかり見たのは初めてであった。とても気まずい。

 「いつも窓からお出になられているのは存じております。多少の事は目をつぶるように仰せつかっておりますが本日はそういうわけにはまいりません」
 
 眉を下げて不安の顔で私を見る。私が黙って不満そうな顔がすると彼は首を横にふった。
 
 知っていて見逃してくれた。彼は私を心配してくれているようである。
 私は扉の外に人がいるのが嫌だった。いつもは自室の外のいる衛兵を邪魔だと思っていた。だから学習する時くるは一人になりたいと思い毎回逃げていた。

 申し訳気持ちになる。

 「ルカ様は倒れられてルイ様に運ばれ自室にお戻りになられたですよ。本日は自室でゆっくりお過ごし下さい」
 優しく丁寧な言い方であるが一切反論を許さない雰囲気がある。
 私は頷いて自室に戻ることを承諾した。私が自室へと足を進めると、衛兵はゆっくりと後からついてきた。

 本当は礼や謝罪をすべきであるところだろうができなかったのだ。何度か言おうとしたのだが、言葉が出ないまま自室に到着した。
 
 「ルカ様、もし本が欲しいのであれば用意いたしますがどうされますか」

 衛兵の気遣いに首を振る。ここでも礼も謝罪もできなかった。話しかけられたのだがら返事をすればいいと頭ではわかっているのだが、上手くいかない。

 部屋に戻りとベットの上にダイブして布団に顔をつける。色々思うことがあったが忘れることにした。

 爵位の事と貴族の事を考えよう。
 我が国の爵位については学んだが一族で爵位が違う理由がわからない。

 なんて書いてあったかな。

 図書の本は全部読んだが、一語一句覚えているわけではない。本の場所はわかるのに行けないのがもどかしい。

 各貴族の家系図は図書室にはないため、クラーク家どころかどの貴族の家系図も分からない。知りたい事があるのに学べないこの環境にイライラする。

 どうしよう。

 そんなことを考えていると眠くなってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。

光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。 ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…! 8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。 同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。 実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。 恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。 自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...