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優しいルイ
しおりを挟む漫画は主人公であるソーワ王国第一王女アイラ視点を本編として各キャラクター視点の番外編がある。漫画の話を思い出してみる事にした。
ルイは優しい方であった。美しい見た目に優しい性格であり王道王子様のため人気キャラであった。その対象キャラがルカである。目的のためなら手段は選ばない部分がある。でも、それで効率的に物事が進んでいるので私は好きであった。
私も感情に流されるより合理的な方がいい。
たしか、ソーワ王国王女で漫画の主人公アイラがルカの婚約者となった時ルイとルカとぶつかるシーンがあった。
ルイの自室で2人が言い争っているのだ。
「アイラは私の婚約者ですから必要以上に近づかないで頂けますか」
突然、僕の自室に入って来たルカはかなり強い口調で言う。僕はとりあえずルカに落ち着いて貰うと笑顔で遣るべく優しく接する。
「でも、ルカはアイラを部屋に閉じ込めばかりでは可哀想だよ」
「アイラは婚約者ですが、人質です。それに第二王妃の事件から国王陛下はソーワ王国をよく思っておりません。ルイ第一王子もご存知でしょう。本来は国王はソーワ王国を侵略予定でした。しかし、アイラが私の婚約者になることで侵略はなくなりましたが陛下のお気持ちが変わったわけではありません」
眉を寄せたルカの口調は更にきつくなる。それでも尚、感情的になるルカが落ち着けるようにと優しく諭すように語りかける。
「でも、部屋に閉じ込めるのは可哀想だよ。閉じ込めたら奴隷と一緒じゃん」
「アイラ殿の安全のためです。そもそも、弟の婚約者に近づくのはよく見られません」
確かに弟の婚約者に近づく兄は良くない。それはわかる。しかし、我が国に来てから一度も部屋に出さないというのは違う。彼女にも人しての生活を与えるべきある。
「アイラは僕の妹になるだよ。多少の関わるべきだと思うよ。人質という言い方もどうかと思うよ。それじゃ本当に奴隷と同じではないか」
話のわからないルカにため息がでた。
「そうだ、我が国の奴隷も可哀想だよね。僕が国王になったら真っ先奴隷を解放するんだ」
イライラしているようであったから、ルカの最も喜ぶであろう言葉を使った。奴隷解放はおばあ様の時よりの願い。ルカ自身も強く願っていた。
しかし、ルカの顔色は険しさをました。
「待って下さい。奴隷解放は順をおうべきです。革命による奴隷解放ならすぐにでも問題ありませんが、王族によるものは準備が必要です」
何を言っているのだろうか。
「なんで?解放すれば奴隷は王族に感謝するよ」
それ以降何も言わずにルカは退出してしまった。僕はルカが退出した扉をじっと見つめていた。幼いころよりルカには避けられている。関わるのは公の場が今のように文句を言いに来る時である。それが本当にさみしく感じる。
まだ、日の入りにはだいぶ時間があるためアイラに会いにいった。ルカに注意られたが結婚したら妹となる存在である。
「ルイ第一王子殿下」
アイラに会いにいけば嬉しそうにしてくれる。
アイラは人質の意味もある婚約者であるため、部屋は王族が住むところが少し離れた場所あった。そして、アイラはその部屋が1人で出ることを許されていない。
ルイはアイラの部屋へは行きなれていたため、部屋の衛兵はルイの顔を見るとすぐにアイラを呼んでくれる。いくら未来の妹であっても自室に入るわけにいかないため、大抵は隣の応接室で話をする。
「アイラには兄君がいるだね。仲が良くてうらやましいよ」
アイラの兄は次期国王である。僕は会ったことはないがソーワ国に出向いたルカはあるのだろう。アイラと兄の仲睦まじい様子を聞くとあやかりたいと思う。
「ルカ第二王子殿下とはあまりお話されないのでしょうか」
アイラが気を遣うように聞いてくる。ルカとの関係をどう言葉にしていいか迷った。
「ルイ第二王子殿下はお優しい方ですのでいつかはルカ第二王子殿下も分かって下さいます」
優しい言葉が胸に染みた。
今まで、こんな風に僕を受け入れてくれる者はいなかった。
「そうかな。父にもルカにも怒られてばかりだ」
今日のことを思い出して落ち込む。
父からの指導は以前からあったが第二王妃の事件後からルカが人が変わったように厳しいこと言葉を投げかける。
「皆様ルイ第一王子殿下を思ってのことだと思います。殿下は素敵な方ですので自信を持ってください。私を気遣って下さる殿下を…」
最後まで言わずに言葉を止めて下を向く。言いたいことはなんとなく察することができただからこそそれ以上聞くことができなかった。
彼女の立場上けして言ってはいけない言葉である。僕もそれに答えることはできない。
忘れよう。
アイラはルカの婚約者でなければいけない。
少し前、父は第二王妃の不倫に憤激して彼女の血筋であるソーワ王国を侵略しようとした。
それを防ぐためにルカがアイラを婚約者にしたいと説得したのである。
ルカ自身ソーワに出向いた。
アイラの話ではソーワ王国の侵略か自分の婚約者として我が国に来るかをソーワ国王と第一王女であるアイラに選択させたという。
アイラは絶対に逃がさないためにだろう。
我が国は多くの国を侵略しているためソーワの侵略を止める必要はないと思っていたが、アイラに会ってからルイは意見を変えた。
ソーワ特有の黒い髪に漆黒の瞳のアイラは美しかった。彼女を手に入れるため侵略を止めたのだと思ったがルカはアイラにあまり会っていないようである。
「ごめんね。本当はもっと自由にしてもらいたいだけどね」
「いいえ、ルイ第一王子殿下が会いにきてくださいるのでとても嬉しく思っております」
ほほ笑む彼女はとても愛らしい。
「いつでも来るよ」
優しい微笑むと、アイラ顔赤くする。長く伸びた黒い髪が揺れ、漆黒の瞳がルイを見つめる。我が国の人間にない魅力にルイは心臓の音が早くなる。
アイラと何度も会ううちに彼女に惹かれていく自分がいることに気づいたが弟の婚約者に手を出すわけにはいかないと隠していた。
ある日、父に呼ばれルカとともに国務室に向かった。
そこで知らされたのはソーワ国王の病気であった。我が国も医者を派遣したが手遅れでありもって数ヵ月ということである。
「アイラを帰国させてあげられませんか」
アイラを父に合わせてあげたかった。父の最後に会えないなどそんな悲しいことはない。しかし、国王は理由も言わずに冷たく否定した。
国務室を後にした後アイラのソーワ帰国の相談をするとルカは軽蔑するような冷たい目でルイを見た。
「何を言っているですか。それと、国王からもあった通りソーワ国王の危篤をアイラもは勿論のこと他の者にも伝えないでください」
ルカの人形のよう美しいかった顔が歪み、冷たい青い目を細め、ため息をつく。
「それは余りにも鬼畜ではないか」
「ソーワ国王の危篤を知らせたら、帰国を願う気持ちが強くなり辛い思いをします」
「だから帰国を…」
「ありえません」
ルイの言葉をはっきりと打ち消した。
ルカとの話は平行線であり僕の意見は聞き入れられることはない。
それが本当に残念で仕方ない。
彼は自分と同じ金の髪に青い瞳であり非常に美しい顔を持つがいつも険しい顔をしているのでハッキリって怖い。
アイラなんて怯えてる。
あれで自分の意見に賛同してくれれば最高の相棒になれるのにといつも思う。
自室のベットの転がり、天井を見ながら今日あった出来事を思い返す。
「アイラの帰国だけは叶えたいなぁ。あ、そうだ」
正式な帰国がかなわないならば自分が手助けするればいいと気づいた。
それにはアイラに力をつけてもらう必要があった護身術でも構わないができれば騎士の指導がいい。
その足でトーマス騎士団長のところへ向かう。王女でも身を守ることが必要である説明したがトーマス騎士団長はいい顔をしなかった。横に控えていたウィリアム副団長も眉を寄せている。しつこい頼むとウィリアム副団長は苦笑した。
本当はソーワ国王の危篤とアイラの帰国を話したかったがそれはできなかった。
「では、ルイ第一王子殿下がご指導すれば宜しいかと存じます。ルイ第一王子殿下は隊長クラスに勝てる時があるではないですか」
「ウィリアム……はぁ」
ウィリアム副団長の言葉にため息をついてトーマス騎士団長はルイの顔見た。
「わざわざ、騎士館までおいで頂いたのです。私で宜しければいつでも受け致します」
トーマス騎士団長の配慮がとても嬉しく、礼を伝えるとその必要はないと言われた。ただ、これをアイラ自身が承諾してくれるか不安で会ったが快く受けてくれた。
「私は、自分の身は自分で守るべきたと思います」
嬉しそうに笑うアイラがとても可愛い。なぜ、こんなに可愛いアイラにルカが関わらないのか不思議であった。
アイラの剣術センスは驚かされた。
トーマス騎士団長も目を大きくして誉めていた。数週間で新兵では相手にならない程アイラは実力をつけたのだ。
これでアイラは帰国しても大丈夫だと安心した。しかしアイラ自身は帰国を渋っていた。だから“ソーワ国王の危篤”と伝えた。
アイラの顔色を変えた。
アイラの帰国で父は自分を罰する可能性あったが、それでもアイラを父に合わせてあげたかった。
現実はうまくいかないもので、ルイがアイラの帰国支援をする前にトーマス騎士団長がアイラを逃がしてしまったのである。
玉座の間
玉座の間に国王が座り、玉座より下の段の斜め左側にクリスティーナ宰相が控える。反対側にはルイとルカがいた。本来は参加する事はないが摂取と法務大臣が不在の為である。
玉座の間の中心には紐でつながれたトーマス騎士団長が座り、その横には険しい顔したウィリアム副団長立っている。
この光景がルイは信じられなかった。
第一王子である自分がアイラ帰国支援をしたのならば命までは脅かせれることはないが平民出身であるトーマス騎士団長では極刑は免れない。彼もそれは理解しているはずである。
「トーマス・ピーターソン。あなたはルカ第二王子陛下の婚約者であられるアイラ王女を城の外へ連れだした。そのままアイラ王女は所在不明にしました。違いはありませんか」
クリスティーナ宰相の淡々話す言葉、トーマス騎士団長は言葉なく頷いた。
「理由を話してください」
「閉じ込められては哀れに思いました」
それだけでトーマス騎士団長がアイラの帰国支援をするなどありえない。そんな理由で逃がすなら我が国には奴隷が1人もいない。騎士団の人間がそんな甘いではない。
なぜだ。
必死にトーマス騎士団長がアイラを逃がした理由を考えた。どう考えても自分と同じようにアイラに好意があったとしか思えなかった。自分の愛しく思う人を同様に愛し命をかけてくれた彼に敬意の念を抱く。
しばらくの沈黙が続くと国王か口を開いた。
「第二王子の婚約者を行方不明にしてしまった罪は重い」
トーマス騎士団長は覚悟を決めた様に国王を見つめる。
国王の冷たい響く声に嫌な予感がして、慌ててルイは自分がアイラの帰国は支援しようと思ったことを国王に進言しようとしたが言葉が出なかった。混乱していると国王の言葉が続いた。
何とか彼を助けたかった。
「更に、逃げたソーワ王国のアイラ王女にも罪がある。よって、トーマス・ピーターソン、騎士団長の身分剥奪及び斬首刑とする。ソーワ王国王女アイラ・モーリー逃走のため、ソーワ王国を侵略する。この作戦については追って会議を行う」
覚悟を決めていたトーマス騎士団長が大声でうたえる。
「全ては私一人の罪です。アイラ王女を無理やり私の独断で逃がしました。王女は知らない土地に連れて行かれ自力で戻るのとはできません」
「罪人トーマス・ピーターソンの斬首刑、今執行する」
ルイは必死に声を上げようとするが一言も言葉がでない。身体中から嫌な汗が出てきてた。
国王はトーマス元騎士団長の話に耳を傾けずウィリアム副団長を見る。“やれ”と目で指示してる。
クリスティーナ宰相が国王を見るが何も言えない。
他のものも同様である。
国王の命令は絶対である。
裁判で唯一、国王の判決に意義を唱えることのできる王妃と摂取はいない。
ルカは表情を動かさずに事の成り行きを見ていた。ルイは耐えきれずに目を瞑ろうのしたがそれをできなかった。動くことさえできない。
ウィリアム副団長は口を頑く結び覚悟をきめる。トーマス元騎士団長ももう何も訴える事はなく静かにその時を待った。
ウィリアム副団長の剣が正確にトーマス騎士団長の首に下ろされる。
赤い血がウィリアム副団長の顔につく。
トーマス騎士団長の首がゴロリと床に落ちると、後から体が横に倒れた。
ポタリポタリ…
ウィリアム副団長の剣から落ちる血が静まり返った玉座の間に響く。
ルイが国王を見ると国王は裁判開始の時と変わらない表情をしている。
その表情がとても憎かった。
関わりが少なく何考えているか分からず威圧的な父は幼いころからルイにとって恐怖の存在であった。
しかし、怖がっている場合ではない。
国王は玉座の間から退出するのをじっとルイは睨んでいた。
そんなルイをルカが引っ張って一緒退出する。
ルイを自室の椅子に座らせるとルカは何も言わず退室しようとした。それをとめるためルイは乱暴に服をひいた。
「僕に何をした。裁判中言葉が出なかった」
「失礼ながら私がふさがせて頂きました」
魔法陣か?
いくつかの石版の魔法陣を発動させるくらいしかできないルイはそんな魔法陣があるのかと驚いたが今はそれどころではない。
「僕が話せればトーマス騎士団長が助かったかもしれない。本当は僕がアイラ逃走を支援しようとしてた。しかし、その前にトーマス騎士団長が逃がしただけなんだ」
必死にルカに訴えるが伝わない。
「そうですか。しかし、結果は罪人トーマスの行いです」
ルカは冷たく言い放つと部屋を出て行った。
ルイは目の前のテーブルを力いっぱい叩いた。何度も叩いたため手が切れ血が出る。
「罪人トーマス、何を。彼は素晴らしい騎士団長である。それなのになんて言い方だ。父も父だ、なぜ、なぜ」
全てを呪った。
もう何も信じられなかった。
ただ、あの国への侵略はなんときても止めなくてはならない。アイラの帰る国を守らなくてはならない。
ルイは守る方法を一つしか思いつかなかった。
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