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第一王子の思い
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今日は長い1日だった。いつもと変わらない天井を見つめる。ベッドにはいると様々な事を考えてしまう。その中心は常にルカの事だ。
長い期間、ルカには避けられている。将来は一緒に国を支えていかなくてはならない為もう少し関係を良くしたいと思っていた。そのため様々な方法で彼に関わろうとするがいつも逃げられてしまう。
ところが、今日は彼から声をかけてくれた。本当に心臓が飛び出すほど驚いたが嬉しく思った。
ルカは王族の規定通り四歳から家庭教師による学習を開始した。しかし、しばらくすると家庭教師から逃げ回りだし、更に僕の事を避けはじめたのだ。
おそらくは家庭教師が何かしたのだろうと思い、家庭教師を問い詰めたがわからなかった。叔父は“事を急ぐと良いことはない”と言う。しかし先の見えない状態は不安だった。
突然ルカが、朝食に現れた。朝食は気まぐれかと思ったがその後、僕と話がしたいと言うのだ。
これは距離を縮められると期待を持った。
結局、大して話しをしなかったが剣を交える事ができた。ルカの剣は初めてみる。彼は剣の授業を受けていないし鍛錬をしている姿も見たことがない。最初は剣を持ちふらふらしていたので心配した。しかし、それはいらぬことだったようであるとすぐに理解した。
初めはルカがケガをしない様に手を抜こうと考えていたが、気づくと本気になっていた。気を抜けば、押されそうになり焦りを感じた。ルカに話を聞きたがったがこれ以上踏み込むと逃げられる可能性を考えてやめた。
今でなくてもいい。
その日の夕食では国王の質問に堂々と回答にも驚愕した。そして、今までの問題点を誰かのせいではなくすべての責任は自分であるという発言は言葉を失った。
ずっと逃げていた彼が自ら進んだのである。これは応援しなくてはならない。
ルカが授業を受けなくなって数年後に家庭教師が僕とルカを比較してルカをバカにしているのは知った。しかし手を出すことを止められ何もできなかった。心苦しく思っていた。
大体、あれは家庭教師の逆恨みだ。彼の娘はルカに好意を持っていたがルカは避けた。ルカは彼女と接触を拒否したため娘はルカに近づけなくなった。その事が気に入らなかったが王族であるルカに表立って文句は言えないため嫌がらせをしたようだ。
浅はかだ。子ども相手だからバレないとでも思ったようだ。残念な方々を前にするとため息がでる。
ルカの事を考えれば考えるほど眠れない。頭を冷やそうと部屋の窓を開けると、そこにルカがいた。素振りをしている。
「ルカ」
思わず名前を呼んでしまった。その声に気づきルカが手をとめて僕に方を向く。
「兄上、いや、恥ずかしいところを見られました。不格好で見苦しいと思いますが初めてですので目を瞑って下さい」
真っ赤な顔をして、僕を見上げるルカは笑っていた。
その後ろにはサラが見えた。ルカはサラを苦手としているはずであったのに鍛錬に連れてくるなんて珍しいと思った。しかし、彼女は専属侍女であるため本来付き添っていても不思議ではない。
だから気にしない事にした。
「付き合うよ」
今日の事でいくつか確認したい事があった。ルカは慌てて手を前に出して振っている。全力で遠慮しているようだ。遠慮するルカに「大丈夫だよ」と一言伝えると着替えて階段をおり中庭に出た。
外は心地よい夜風がふいているが、目の前にいるルカは汗だくになり顔は真っ赤だ。いつもの爽やかな印象とは真逆である。男くささを感じる。
「いつからいるの?」
笑顔を作りなるべく優しく伝えた。ルカは二人で話そうとするとすぐに居なくなってしまうため言動には注意をはらった。
聞きたい事はたくさんあったが我慢して優しさを全面に出した。
ルカは何も言わず、夜風が吹く音がする。やってしまったと思った。大抵、この沈黙の後逃げられる。
いつもは大して話さず居なくなってしまうが今日は会話ができている。この機会を逃したくなかったという思いが強くなり、ルカの両手を掴んだ。
すると、その手が震えている事に気づいた。落ち着きがなくなり目がキョロキョロと動き始める。
「ルカ」
ルカの異変に見覚えがあった。
夕食の時、国王と話した直後真っ青になっていた。心配したがカミラと話しているうちに落ち着いたようであった。そのため深刻にはとらえていなかった。
「大丈夫だよ」
とりあえず、カミラと同じように手を握り締め声をかける。ルカは何も言わない。震えているも収まる様子がない。呼吸が荒くなっていく。
手を握り締めるだけじゃだめなのか。じゃぁ……。
ルカを抱き締めた。それから“大丈夫”、“僕は味方だよ”何度も何度もルカに伝えた。次第にルカの震えが収まっていくのが分かった。
「ルカ」
体を離し、肩をつかみ名前を呼んだ。ゆっくり視線が合う。
「たまに、よくわからない状態になる」
呼吸を整えながら、僕の目を見て不安そうな小さな声で言った。動揺しているようであり、敬語を使うことを忘れている。
「あ……敬語。申し訳ありません」
どうやら自分で気づいたらしくすぐに謝罪した。敬語は必要ないことを伝える。別々の環境で育ったが血の繋がった兄弟である。本音でぶつかってほしいことを伝えたら”兄上の方が嘘くさい”と言う。しかし、その意味が分からずに詳しく聞いた。
「その笑顔」
ルカは僕の顔を指さした。驚きのあまりルカの肩にのせてあった手が下に落ちた。笑顔がなんだと言うのだ。
「楽しいから笑顔になる。私は兄上の貼り付け笑顔が好きではない」
確かに最初は意識して笑顔を作っていた。第一王子たるもの誰にでも優しく接しなくてはならないと習ったからである。笑顔の方が相手と話しやすい。
「社交辞令は必要だけど。私に本音というなら兄上も本音であるべきだと思う」
「つまり、思っている事を表情に出してほしいということだね」
どうやらルカは僕のことを知りたいと思っているらしい。それはとても嬉しいことだ。僕は何年も前からルカのことを知りたいと思っていた。
満面の笑みでルカの意見を承諾する。するとルカも同じような表情をした。いつもの笑顔よりいいと喜んでくれた。ルカとの距離が近くなり、今までの悩みが晴れたように感じた。
しかし、さっきのルカの様子は心配だ。落ち着いたようであるから詳しく聞きたいと思った。しかし、あまり触れてはいけない事ではないかと躊躇した。
すぐに首をふり、ルカを見る。本音で話せと言ったのはルカだ。
「さっきの症状は」
「たまになる。ルカの持病かな」
すぐに返答があったが、”ルカの持病”と変な言い方をする。ルカは君だろ。何かがおかしい。ルカが変わったのではなく何か違う要素がはいったようである。
「君には持病がないのか」
「ないね。人見知りだけど……」
そこまで言ってルカは”しまった”と口を押えた。
ひっかけようとは思ったがこんなに上手く行くとは思っていなかった。そういえば叔父がルカは迂闊で困ると言っていたのを思い出した。僕はルカとの関わりが少ないから彼の性格は聞いたものばかりである。けど、これはあまりにチョロいすぎると思った。
「詳しくその話聞きたいな」
ルカは青ざめ、焦っているようだ。彼は僕と本音で話したいらしいから容赦するつもりはない。ルカが視線を外せないように瞳の中を覗き込んだ。
「明日……」
確かに今日はもう遅い。明日を聞かせてくれると約束した。
鍛錬をする雰囲気ではなくなったため今日はこれで部屋に戻ろうと思い、サラに声を掛けようとさっきまで立っていた場所は見た。しかしそこには誰もいなかった。
侍女が何も言わずにいなくなるなんて無礼なことをありえない。
「ルカ、サラは?」
「え? 何言っているの? 最初からいないよ」
サラの確認をするとルカが不思議そうな顔した。
最初からいない?
では僕の見間違えだったのだろうか。
納得できないまま自室に戻ることにした。
長い期間、ルカには避けられている。将来は一緒に国を支えていかなくてはならない為もう少し関係を良くしたいと思っていた。そのため様々な方法で彼に関わろうとするがいつも逃げられてしまう。
ところが、今日は彼から声をかけてくれた。本当に心臓が飛び出すほど驚いたが嬉しく思った。
ルカは王族の規定通り四歳から家庭教師による学習を開始した。しかし、しばらくすると家庭教師から逃げ回りだし、更に僕の事を避けはじめたのだ。
おそらくは家庭教師が何かしたのだろうと思い、家庭教師を問い詰めたがわからなかった。叔父は“事を急ぐと良いことはない”と言う。しかし先の見えない状態は不安だった。
突然ルカが、朝食に現れた。朝食は気まぐれかと思ったがその後、僕と話がしたいと言うのだ。
これは距離を縮められると期待を持った。
結局、大して話しをしなかったが剣を交える事ができた。ルカの剣は初めてみる。彼は剣の授業を受けていないし鍛錬をしている姿も見たことがない。最初は剣を持ちふらふらしていたので心配した。しかし、それはいらぬことだったようであるとすぐに理解した。
初めはルカがケガをしない様に手を抜こうと考えていたが、気づくと本気になっていた。気を抜けば、押されそうになり焦りを感じた。ルカに話を聞きたがったがこれ以上踏み込むと逃げられる可能性を考えてやめた。
今でなくてもいい。
その日の夕食では国王の質問に堂々と回答にも驚愕した。そして、今までの問題点を誰かのせいではなくすべての責任は自分であるという発言は言葉を失った。
ずっと逃げていた彼が自ら進んだのである。これは応援しなくてはならない。
ルカが授業を受けなくなって数年後に家庭教師が僕とルカを比較してルカをバカにしているのは知った。しかし手を出すことを止められ何もできなかった。心苦しく思っていた。
大体、あれは家庭教師の逆恨みだ。彼の娘はルカに好意を持っていたがルカは避けた。ルカは彼女と接触を拒否したため娘はルカに近づけなくなった。その事が気に入らなかったが王族であるルカに表立って文句は言えないため嫌がらせをしたようだ。
浅はかだ。子ども相手だからバレないとでも思ったようだ。残念な方々を前にするとため息がでる。
ルカの事を考えれば考えるほど眠れない。頭を冷やそうと部屋の窓を開けると、そこにルカがいた。素振りをしている。
「ルカ」
思わず名前を呼んでしまった。その声に気づきルカが手をとめて僕に方を向く。
「兄上、いや、恥ずかしいところを見られました。不格好で見苦しいと思いますが初めてですので目を瞑って下さい」
真っ赤な顔をして、僕を見上げるルカは笑っていた。
その後ろにはサラが見えた。ルカはサラを苦手としているはずであったのに鍛錬に連れてくるなんて珍しいと思った。しかし、彼女は専属侍女であるため本来付き添っていても不思議ではない。
だから気にしない事にした。
「付き合うよ」
今日の事でいくつか確認したい事があった。ルカは慌てて手を前に出して振っている。全力で遠慮しているようだ。遠慮するルカに「大丈夫だよ」と一言伝えると着替えて階段をおり中庭に出た。
外は心地よい夜風がふいているが、目の前にいるルカは汗だくになり顔は真っ赤だ。いつもの爽やかな印象とは真逆である。男くささを感じる。
「いつからいるの?」
笑顔を作りなるべく優しく伝えた。ルカは二人で話そうとするとすぐに居なくなってしまうため言動には注意をはらった。
聞きたい事はたくさんあったが我慢して優しさを全面に出した。
ルカは何も言わず、夜風が吹く音がする。やってしまったと思った。大抵、この沈黙の後逃げられる。
いつもは大して話さず居なくなってしまうが今日は会話ができている。この機会を逃したくなかったという思いが強くなり、ルカの両手を掴んだ。
すると、その手が震えている事に気づいた。落ち着きがなくなり目がキョロキョロと動き始める。
「ルカ」
ルカの異変に見覚えがあった。
夕食の時、国王と話した直後真っ青になっていた。心配したがカミラと話しているうちに落ち着いたようであった。そのため深刻にはとらえていなかった。
「大丈夫だよ」
とりあえず、カミラと同じように手を握り締め声をかける。ルカは何も言わない。震えているも収まる様子がない。呼吸が荒くなっていく。
手を握り締めるだけじゃだめなのか。じゃぁ……。
ルカを抱き締めた。それから“大丈夫”、“僕は味方だよ”何度も何度もルカに伝えた。次第にルカの震えが収まっていくのが分かった。
「ルカ」
体を離し、肩をつかみ名前を呼んだ。ゆっくり視線が合う。
「たまに、よくわからない状態になる」
呼吸を整えながら、僕の目を見て不安そうな小さな声で言った。動揺しているようであり、敬語を使うことを忘れている。
「あ……敬語。申し訳ありません」
どうやら自分で気づいたらしくすぐに謝罪した。敬語は必要ないことを伝える。別々の環境で育ったが血の繋がった兄弟である。本音でぶつかってほしいことを伝えたら”兄上の方が嘘くさい”と言う。しかし、その意味が分からずに詳しく聞いた。
「その笑顔」
ルカは僕の顔を指さした。驚きのあまりルカの肩にのせてあった手が下に落ちた。笑顔がなんだと言うのだ。
「楽しいから笑顔になる。私は兄上の貼り付け笑顔が好きではない」
確かに最初は意識して笑顔を作っていた。第一王子たるもの誰にでも優しく接しなくてはならないと習ったからである。笑顔の方が相手と話しやすい。
「社交辞令は必要だけど。私に本音というなら兄上も本音であるべきだと思う」
「つまり、思っている事を表情に出してほしいということだね」
どうやらルカは僕のことを知りたいと思っているらしい。それはとても嬉しいことだ。僕は何年も前からルカのことを知りたいと思っていた。
満面の笑みでルカの意見を承諾する。するとルカも同じような表情をした。いつもの笑顔よりいいと喜んでくれた。ルカとの距離が近くなり、今までの悩みが晴れたように感じた。
しかし、さっきのルカの様子は心配だ。落ち着いたようであるから詳しく聞きたいと思った。しかし、あまり触れてはいけない事ではないかと躊躇した。
すぐに首をふり、ルカを見る。本音で話せと言ったのはルカだ。
「さっきの症状は」
「たまになる。ルカの持病かな」
すぐに返答があったが、”ルカの持病”と変な言い方をする。ルカは君だろ。何かがおかしい。ルカが変わったのではなく何か違う要素がはいったようである。
「君には持病がないのか」
「ないね。人見知りだけど……」
そこまで言ってルカは”しまった”と口を押えた。
ひっかけようとは思ったがこんなに上手く行くとは思っていなかった。そういえば叔父がルカは迂闊で困ると言っていたのを思い出した。僕はルカとの関わりが少ないから彼の性格は聞いたものばかりである。けど、これはあまりにチョロいすぎると思った。
「詳しくその話聞きたいな」
ルカは青ざめ、焦っているようだ。彼は僕と本音で話したいらしいから容赦するつもりはない。ルカが視線を外せないように瞳の中を覗き込んだ。
「明日……」
確かに今日はもう遅い。明日を聞かせてくれると約束した。
鍛錬をする雰囲気ではなくなったため今日はこれで部屋に戻ろうと思い、サラに声を掛けようとさっきまで立っていた場所は見た。しかしそこには誰もいなかった。
侍女が何も言わずにいなくなるなんて無礼なことをありえない。
「ルカ、サラは?」
「え? 何言っているの? 最初からいないよ」
サラの確認をするとルカが不思議そうな顔した。
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