5 / 146
迷子の王子
しおりを挟む騎士館で迷子になった。
右も左もよく分からず冷や汗がでてくる。
気持ちを落ち着かせるために廊下の壁に寄りかかりながら騎士団長と副団長のことを思い出す。二人には悪いことをしてしまった。特に騎士団長にはハリー・ナイトを探す様に依頼したのに、副団長が手伝うと言ってくれた時断った。
この後、ハリー・ナイトを連れてこられたらどうしよう。そもそも、私のこの行動が叔父に報告されるかもしれない。
叔父であるオリバー摂政の事を思い出した。彼はルカのことをよく気にしてくれるが、礼に厳しい。
事前連絡もなく騎士館にいったとなれば大目玉だ。
自分で招いた状況であるが、色々嫌になっていた。皆が幸せになって欲しいのだがどう行動していいかよくわからない。前世に戻りたい。
なんで私はここにいるのだろう。
気持ちが落ちる。前世で美人になりたいとは思った事があったが違う人物になりたいなんて思ったことない。きっと、これは夢だ。もうすぐに携帯のアラームがなり目が覚める。仕事いかなくちゃ。
それで、この夢の話をヲタク友達にして笑われるのだ。
「ルカ第二王子殿下、ここにいらっしゃいましたか」
トーマス騎士団長の声が頭の上の方で聞こえた。彼の存在はここが現実だと言っているようである。今はときめきではなくため息しかでない。
座り込む私に、膝をつけて視線を合わせてくれるが私は顔を隠すように下向いているため彼の表情はわからない。きっと迷惑だと思われている。
目だけでトーマス騎士団長の方を見る。
トーマス騎士団長は迷惑な顔などしておらず、優しく微笑んでいる。
騎士団長素敵だなぁ。
下を向いて黙っていたため体調を気にしてくれたのだろう。「大丈夫ですか」と聞いてくれる。私は、顔を上げながら返事した。
ここでこの世界を否定していても仕方ない。覚悟を決める必要がある。
事件まであと2年ある。この世界で頑張ろう。
今すぐハリー・ナイトにあっても私は何もできない。私がやるべき事は体力と知識をつける事だと思う。そもそも城の内部を把握していない時点で勉学をサボりすぎである。
「トーマス騎士団長、私を探してくれたですね。ありがとうございます。それと、ハリー・ナイトの事は探さなくて大丈夫です」
立ち上がり、騎士団長に笑顔で答える。そして、彼を連れてこられては困るので念を押す。私が立ち上がったことで膝をついているトーマス騎士団長の目線の高さが同じになった。トーマス騎士団長の顔はこうしてじっくりと見ると本当に整った顔していると思う。
実写化するとこうなるのか。
刈り上げられている質の良い金髪。綺麗な青い瞳は外国のアクション映画俳優そのものである。騎士団長であるからアクション映画俳優よりもハードな動きが可能なのであろう。
あまり私が見入ってしまったせいか次第に騎士団長の顔が赤くなる。もしかして、睨んでいるように思われたか。
「そうですか。それではお部屋までお送りいたします」
頭を下げていると立ち上がる。
私が頷くと“向かいます“と優しい笑顔を向けてくれた。心臓が早くなる。彼の笑顔は破壊的である。
私の歩く速さに合わせるように騎士団長は進む。後ろ姿も素敵すぎると見惚れながら私は騎士団長の後を追った。
トーマス騎士団長を近くで見ることができた。心が満たされている。
1
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる