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悠が現在、住んでいる所よりも駅から歩くが建物自体は綺麗であった。今住んでいる建物にはないオートロックが完備されている所も気に入った。
「とりあえず、あたしの部屋おいで」
言われるままに階段を上がり、彼女の部屋に入った。
ワンフロアで、トイレとバスが別あった。
ローテーブルに案内され、カーペットの上に座った。
「お茶でいいよね」
「うん」
他人の家に上がるのは初めてで落ち着かなかった。何をしていいか分からずにあたりを見回した。
「かしこまらないでよ」
お茶と氷の入ったグラスを持った一香が笑いながら戻ってきた。
グラスをローテーブルに置くと、対面に一香は座った。
「どう?」
「……あ、悪くはないかと」
間取りは今と一緒だ。駅から離れているがそれはそこまで気にならない。オートロックがついていた所を見ると今より家賃があがる可能性があった。
「あ~、家賃気にしてる?」
ちいさな声で返事をするとあっさり、家賃を教えてくれた。
「え、そんだけ」
今の住んでいる場所よりも大幅に下がる。正樹と同じ建物に住めるということも含めて好条件であった。
「同じ場所に住んでも不安はあるわよね」
「……うん」
交際を公にしたとしても、正樹のクラスにいる二人の女子の存在は気になった。
「そんな、君にコレをあげる」
一香は勢いよく、小さな箱をだした。それは桃色の包装紙で包まれ水色のリボンが掛けられていた。
「開けていいの?」
「ダメよ」一香は箱を抑えた。「これは正樹にあげなさい。そしてつけるように伝えるのよ」
「……つけるもの?」
ニヤリと笑った一香は、ポケットから小さな鍵を出した。それにはチェーンがついていて首からかけられるようになっていた。
「これは悠ちゃんにあげる」
「鍵……?」
首を傾げると一香は楽しそうに笑っていた。
「心配しないで。嫌なら捨てていいからさ」
「それは……」
捨てるという言葉に気が引けた。しかし、訳の分からない物を恋人に渡すのは不安だった。
「不安なら本人に聞いて見ようか」そう言うと一香にスマートフォンを操作した。「身につけてくれるかもよ」
彼女の言葉を不快に感じた。一香が正樹に恋愛感情がない事は知っている。しかし、他の人間からもらった物を恋人が身につけているというのは気分が良くない。
インターフォンがなったと思ったら扉が開く音がした。
「玄関、開いてたの?」
悠が心配すると一香は「開けといた」とヘラへラ笑った。
「そんな無用……」そこまで言いかけて言葉をとめた。「正樹?」
彼はファイルを握りしめている。
「めちゃくちゃ速い到着ね」
一香が連絡してから、一分と立っていない。
「お前が、ゆうちゃんにイタズラするとか言うから慌てたんだ」
焦ったからといって瞬間移動できるわけではない。どう考えて、到着が速すぎる。
「あら、恵の事言えないわね」
正樹は苦い顔をしながらローテーブルの上にあった箱を見て言葉を失い、一香を睨みつけた。
正樹は乱暴に頭をかきながら「どういうつもりだ?」と一香に言ったが彼女は笑っているだけだった。
正樹が心配そうな顔をして悠に近づこうとした。するとビクリと身体が勝手に動いた。それを見て正樹は足を止めた。
「アハハハ、怯えられてやるんのー」
一香が笑った。
「とりあえず、あたしの部屋おいで」
言われるままに階段を上がり、彼女の部屋に入った。
ワンフロアで、トイレとバスが別あった。
ローテーブルに案内され、カーペットの上に座った。
「お茶でいいよね」
「うん」
他人の家に上がるのは初めてで落ち着かなかった。何をしていいか分からずにあたりを見回した。
「かしこまらないでよ」
お茶と氷の入ったグラスを持った一香が笑いながら戻ってきた。
グラスをローテーブルに置くと、対面に一香は座った。
「どう?」
「……あ、悪くはないかと」
間取りは今と一緒だ。駅から離れているがそれはそこまで気にならない。オートロックがついていた所を見ると今より家賃があがる可能性があった。
「あ~、家賃気にしてる?」
ちいさな声で返事をするとあっさり、家賃を教えてくれた。
「え、そんだけ」
今の住んでいる場所よりも大幅に下がる。正樹と同じ建物に住めるということも含めて好条件であった。
「同じ場所に住んでも不安はあるわよね」
「……うん」
交際を公にしたとしても、正樹のクラスにいる二人の女子の存在は気になった。
「そんな、君にコレをあげる」
一香は勢いよく、小さな箱をだした。それは桃色の包装紙で包まれ水色のリボンが掛けられていた。
「開けていいの?」
「ダメよ」一香は箱を抑えた。「これは正樹にあげなさい。そしてつけるように伝えるのよ」
「……つけるもの?」
ニヤリと笑った一香は、ポケットから小さな鍵を出した。それにはチェーンがついていて首からかけられるようになっていた。
「これは悠ちゃんにあげる」
「鍵……?」
首を傾げると一香は楽しそうに笑っていた。
「心配しないで。嫌なら捨てていいからさ」
「それは……」
捨てるという言葉に気が引けた。しかし、訳の分からない物を恋人に渡すのは不安だった。
「不安なら本人に聞いて見ようか」そう言うと一香にスマートフォンを操作した。「身につけてくれるかもよ」
彼女の言葉を不快に感じた。一香が正樹に恋愛感情がない事は知っている。しかし、他の人間からもらった物を恋人が身につけているというのは気分が良くない。
インターフォンがなったと思ったら扉が開く音がした。
「玄関、開いてたの?」
悠が心配すると一香は「開けといた」とヘラへラ笑った。
「そんな無用……」そこまで言いかけて言葉をとめた。「正樹?」
彼はファイルを握りしめている。
「めちゃくちゃ速い到着ね」
一香が連絡してから、一分と立っていない。
「お前が、ゆうちゃんにイタズラするとか言うから慌てたんだ」
焦ったからといって瞬間移動できるわけではない。どう考えて、到着が速すぎる。
「あら、恵の事言えないわね」
正樹は苦い顔をしながらローテーブルの上にあった箱を見て言葉を失い、一香を睨みつけた。
正樹は乱暴に頭をかきながら「どういうつもりだ?」と一香に言ったが彼女は笑っているだけだった。
正樹が心配そうな顔をして悠に近づこうとした。するとビクリと身体が勝手に動いた。それを見て正樹は足を止めた。
「アハハハ、怯えられてやるんのー」
一香が笑った。
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