侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
38 / 60

38

しおりを挟む
カトリーナの実兄で次期公爵リチャードの左右には裸同然の恰好をした女性がいた。女性はリチャードに寄り掛かり彼の顔の方を向いているのに視点があっていない。
しばらくすると、扉を叩く音がした。ハリソンが返事をすると裸のような恰好をした女性が二人入ってきた。彼女らも視点が定まっていない。どこを見ているかよく分からないが迷わずにハリソンとアルベルトの横に座った。
「失礼しーまぁす。レナと言いぃまぁす」
レナと名乗った女性はアルベルトの方を向き笑顔を作ったが目が合わない。それに、発音もおかしく聞きづらい。それはハリソンの隣に座ったカナという女性も同様だ。
異常な空間にアルベルトは言葉を発する事が出来なかった。
レナが胸にある大きな脂肪を腕に押し付けてきた。それが気持ち悪くて手を引くと、彼女は身体を強張らせた。
「……あぁ、もうしぃわけ、ありません」
それ以上、女性は近づいて来なかった。アルベルトは得体のしれない人物に恐怖を感じた。
「アルベルトは女性が苦手かな」
目の間で足を組み座るリチャードは左右にいる女性の胸に触れていた。彼女たちは顔を赤くし甘い声を上げている。
何のためにここに連れてこられたか理由が分からなかった。不安になり兄ハリソンの方を見ると、彼は寄りかかっている女性の存在を完全似無視していた。
「あの……、別に」
「まぁいい」リチャードはアルベルトの言葉を遮った。「それより我が愛しき妹が拾ってきたという女について聞きたい」
「はい……、でも……」
話そうとしたが、周りにいる奇妙な女性を見て言葉を止めた。
「アル、女の事なら心配いらないよ」ハリソンがアルベルトに微笑んだ。「ここにいる者は耳が聞こえず、目も見えない」
「……」
アルベルトは自分に寄りかかってきた女を見た。彼女は数センチ離れた場所に姿勢よく座っている。相変わらず視線が定まらずどこを見ているか分からない。
「外にいる子ら目は見えるけど、耳は同じ」
「……」
アルベルトが、眉を寄せるとハリソンは馬鹿にしたように笑った。
「分からないの? アルは可愛いね」
「……」
別に分からないわけではない。最初に考えていた通り、貴族向けの色屋として外部からの目を欺け、実際が密会の場としているのだろ。
アルベルトは視点の会わない女性を見て哀れんだ。
「女の子らを可愛そうに思っているの?」
「……」
「彼女らは屋敷の外でたらもっと劣悪な環境に生活しなくてはならない。それとも」ハリソンの瞳が目をそらそうとするアルベルトをとらえて逃がさない。「アルがこの子ら全員養う? それとも雇う?」
 出来ない事を知っていて言うハリソンの言葉に、自身の無力さを感じた。何も出来ない自分にイラ立ちを感じた。
「お前が人を揶揄するのは珍しいな」
クスクスを笑うリチャードにハリソンは目を細めた。
「可愛い弟ですからね。構いたいですよ。兄弟とはそういうものではないでしょうか?」
「まぁな」リチャードは大きく頷いた。「だから、今日は君を呼んだ」
リチャードの真っ青な瞳はカトリーナを思い出させた。よく見れば顔も似ている。髪の色だけが違う。
リチャードの髪はライトブラウンだ。
「可愛い妹が拾ってきた得体の知れない人間についてだ。報告によると『緑の瞳』を持つらしいな」
「はい」
アルベルトが返事をすると、ハリソンが妙な顔をした。その様子から『緑の瞳』の事を二人は知っているのだと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜転生した追放悪役令息が魔境でヴァイオリン練習していたら、精霊界隈でバズってました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
「お前を追放する——!」 乙女のゲーム世界に転生したオーウェン。成績優秀で伯爵貴族だった彼は、ヒロインの行動を咎めまったせいで、悪者にされ、辺境へ追放されてしまう。 隣は魔物の森と恐れられ、冒険者が多い土地——リオンシュタットに飛ばされてしまった彼だが、戦いを労うために、冒険者や、騎士などを森に集め、ヴァイオリンのコンサートをする事にした。 「もうその発想がぶっ飛んでるんですが——!というか、いつの間に、コンサート会場なんて作ったのですか!?」 規格外な彼に戸惑ったのは彼らだけではなく、森に住む住民達も同じようで……。 「なんだ、この音色!透き通ってて美味え!」「ほんとほんと!」 ◯カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました。 ◯この話はフィクションです。 ◯未成年飲酒する場面がありますが、未成年飲酒を容認・推奨するものでは、ありません。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

処理中です...