侍従の苦悩~お嬢様が自分は悪役令嬢だから家が没落すると大騒ぎして途方に暮れています~

黒夜須(くろやす)

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「それでは私もカトリーナ様の大切な侍女に入れてください」
困った顔をするカトリーナにティナは両手を合わせて首を傾げて願った。その姿は女神のような美しさがあった。
「分かりました」
ほのかに顔赤くしてカトリーナは承諾した。
「その代わり、私の部屋で一緒に暮らしてください。新米の侍女は大部屋にいかされます」
「大部屋でもかまいませんが」
「ティナ様を大衆と一緒にはさせられません」
カトリーナは『大部屋』に対して否定的であるが、平民が今まで住んでいたボロヤに比べれば数百倍設備も良く清潔感もある。
「シドニー家の侍女は貴族ばかりです。絶対にいじめを受けます。ですから、お側にいさせて下さい」
両手を合わせていた平民の手をカトリーナは挟む様に手を重ねた。
「……はい、ありがとうございます」平民は頬を赤く染めた。
平民が公爵令嬢と同じ部屋である事は気に入らないが、彼女が部屋の掃除を行ってくれるのは助かる。エマとアルベルトだけでは回すことが出来ない。だからあそこまで散らかった。
「では、ベッドを用意しましょう。それにドレスの必要ですね。アクセサリーは未使用の物が多くあります」
「ま、待って下さい。そこまでして頂く必要は……」
カトリーナは衣裳部屋から青い宝石が入ったネックレスを持ってきた。
「素敵ですよ」
そういって、カトリーナは平民の胸に当てた。宝石が小さくシンプルなデザインのため黒いワンピースを着ている平民にも似合っていた。
「これ……」平民はネックレスの宝石をじっと見た。「瞳と同じ色なんですね」
「ええ、そうです。ですからつけて頂きたく思っていました」
平民は宝石をぎゅっとにぎりしめた。
「カトリーナ様はそんなに私の事を思って下さったのですね」
涙を流しながら喜ぶ平民をカトリーナは嬉しそうに見守っていた。
「これをつけていればカトリーナ様といつも一緒にいる気がします」
「ええ、私……?」
「はい。カトリーナ様からご自身の瞳と同じ宝石のネックレスをもらえるなんて幸せです」
「……そうですか」
カトリーナは微妙な顔をしていた。 
「私はカトリーナ様のためなら何でもします。おっしゃって下さい」
「私の事は気になさらないで下さい。それよりドレスを用意しませんと」
「お待ちください。このネックレスはとても嬉しかったです。しかし、ドレスは必要ありません。着ていく所がありません」
「そんな事ありません。これから兄の誕生日パーティーがあります」
「ええ」平民は動揺した。「ありえません。貴族様の祝い事に参加するなんて……」
「殿下も参加されるのですよ」
嬉しそうに話すカトリーナとは対照的に平民はガタガタと体を震わせた。
「絶対に無理です」
平民の今までにない大きな声にカトリーナは目を多くして驚いた。
「人が多い場所は苦手でしょうか?」カトリーナは顎に手を当てた。「大丈夫です。私もいますし……」
涙目になり大きく首をふる平民にカトリーナは優しく微笑んだ後で少し考えた。
「実は、殿下を招待しているのです。そこなら護衛はいると思いますが少人数で会えます」
「ふぇ~」
平民は更に涙を流した。
彼女気持ちはよく分かる。先程、散々睨まれ圧を掛けられた人間と合わなくてはならないなんて肝が冷える。
「わ、わたし……、むり。むりです」
平民は座り込んで泣き始めた。
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