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第67話 憲貞の受験終了

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2月1日。

とうとうこの日が来た。
和也の父の付き添いの元、試験を受けた。本来は母が来ると言っていたが、憲貞は微妙な顔をしたことから和也の父が断った。

1月から学校を休みほとんどの時間を受験勉強に捧げた。その甲斐があって昨日で過去問6割とれるようになった。

「ありがとうございます」

試験が終わった後、礼を言うと「それは合格してから」と言われた。

発表は明日。

ここ以外学校を受けない憲貞の中学受験は終了した。
帰宅して昼食を食べると、和也の父に休むように勧められた。

階段を上がる足が重かった。
部屋に緊張の糸が切れたようで一気に身体が重くなり床に転がった。ベッドまで1メートルもないのだがその場から動くことができなかった。

天井をぼーっと見ていると眠くなった。

目が覚めると18時を超えていた。相当な時間寝ていたことに驚いた。
ぼーっとする頭をふりゆっくりと起き上がり、真っ暗な部屋を見まわした。寝た時と何も変わっていない。

その時、部屋の扉を叩く音がした。返事をすると和也の母が夕食を呼びにきた。

1月下旬から和也の母は仕事を休んでいるため、食事が美味しい。毎回手の込んだ料理を作ってくれる。

「母の料理食べたことないな……」

寂しい気持ちになり、リビングに向かった。
席に着くと、和也は「ごちそうさま」と言って席を立ちリビングから出て行ってしまった。

「あの子、余裕なくてバタバタしてごめんね」
「いえ……。いただきます」

手を合わせて挨拶をすると箸を持った。

「憲貞君、お疲れ様。特にこの1ヶ月は大変だったわね」
「本当に、ありがとうございます」

目の前にいる和也の両親に頭を下げた。すると、二人は優しく笑いながら憲貞の頑張りを褒めた。

「あの……、和也は今日の学校難しかったですか?」

遠慮がちに聞くと、和也の父は困った顔しながら答えた。

「午前中は無理だったね。午後は22時に発表だ。明日も同じ学校を受けるから気持ちが焦るよね」
「……」

返事に迷い言葉がでなかった。合格を待つだけの自分が、まだ受験が続いている和也に伝えられることなどないように思えた。
しばらく、沈黙が続くと和也の母が気を遣うように話題を変えた。

「明日から学校行くのよね」
「はい」
「朝食は6時くらいでいいかな」
「ありがとうございます」

憲貞は食事が終わるとシャワーを浴びてからベッドに転がった。
勉強しないで寝るというのが不安に感じで、起き上がり机に向かった。何をしようか考えてから、塾のテキストの苦手だった部分をやり直した。

「進学してからも役に立つだろ」

受験が終わり肩の力が抜けたようで、以前よりもスラスラと問題が解けていった。
実力がついている実感がした。

「解けると楽しいな」

初めて勉強が楽しいと思えた瞬間だった。
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