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第66話 併願校

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学校と塾、それに父の家庭教師をこなしていたら、あっという間に入試日となった。千葉日はそうとう偏差値を下げただけあってすんなり受かった。しかし、蓮中は苦戦した。

「マジかよ」

ノートパソコンを操作していた母の後ろで落胆した声を上げたのは和也だ。

「うん、次がラストチャンスだね。2月1日に本命受けたいでしょ? まぁ千葉日受かっているからいいけど」
「よくない。千葉日は行きたくない」

きっぱりと言うと、母を驚いた顔して振り返った。

「え? そんなに嫌やなの?」
「千葉日、東日は全部系列だよな。で、そこの系列大学のトップがまずい事していたじゃん」
「あ、ニュースでやっていたね。でも、現状そこしか合格ないよ」
「そーなんだよ。勉強してくる」

そう言うと自室に行き、ローテーブルに向かうと母がコピーしてくれた蓮中の過去問を並べた。十数回繰り返しているため、答えを覚えてしまっている回もあるが丁寧に解き方を確認した。

明日は試験であるため21時にはベッドに入った。

翌日、入試が終わり帰りの電車で、試験内容や出来具合を母に詳しく聞かれた。面倒くさいから問題用紙を見せた。

「お父さんと自己採点しといて」
「えー。夜、結果出るし1日の学校の勉強やりてぇ」
「そう。そうよね」

母は納得したようで頷いた。
帰宅してすぐに勉強に取り組んだ。食事と風呂以外は勉強に捧げた。今までで、一番勉強していた。

扉のノックと共に開く音がしたと思ったら、「ねぇ」と母の嬉しそうな声が聞こえた。和也が振り向くと返事をする前に。

「蓮中受かったわ」
「うん」

心底嬉しそうな母に、短く返事をするとローテーブルに向かい過去問を解いた。和也に反応の悪さに母はしょんぼりして部屋を出て行った。

和也は飛び上がって喜びたい気分を必死に抑えていた。今喜んだら1日の入試がダメになってしまう気がした。
第一志望が受かった訳ではない。

浮かれるな。
喜ぶな。
気を抜くな。

自分の頬を思いっきり叩くと、鉛筆を強く握った。
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