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第58話 特別講習
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志望校別の特別講義は日曜日にある。たまたま、会場が隣駅の近くであったため自転車で向かった。
会場は入ると、鉛筆の音だけが響きは話し声が全く聞こえなかった。上位クラスも授業中は緊張感があったがそれ以外は穏やかだ。
ここは異常だ。
だが、それがまたいいと思った。
貴也はホワイトボードに書かれている席の番号を確認して座った。場所は真ん中よりすこし後ろだ。
成績順だ。
これは今の自分の位置なのだと心に刻みこんだ。
講師が来て授業が始まると一層空気が張りつめた。その空気に気持ちが悪くなったが、深呼吸をして自分を落ち着かせるとホワイトボードをみた。
授業のペースは速い。
一瞬でも気を抜くと置いてかれる。
「それでは演習をすこしやりましょうか」
講師が演習をするテキストのページを言い終わった瞬間、一斉に鉛筆が動く音がした。
貴也も遅れないようにすぐに取り組んだ。数分後、前の方で鉛筆を置く音がした。
焦れば、焦るほど計算がうまく行かない。
あと少しで計算が終わるという所で「そこまで」という講師の声が聞こえた。
講師は問題の解説を始めた。解説を聞けば、それほど難しい問題ではなかった。
いつもそうだ。聞けば分かるが、自力は時間が掛かる。
休憩時間も、周囲の生徒は勉強していた。
張りつめた空気はゆるむことはなかった。自分がどれだけ甘い世界にいたのか痛いほど理解した。
どこかで、“大丈夫”、“受かる”という気持ちがあった。
快晴中を舐めているつもりはなかったが、考えが甘かったと反省した。
一番前に座る、生徒がおそらく合格率80%なのだろう。12月の最後のテストではそこまで上ると誓った。
外に出ると真っ暗であった。
自転車で走ると夜風が冷たく、コートを着ているのに寒さを感じた。ハンドルを持つ手がかじかんだ。
「手袋が必要だね」
自宅に着くと冷たくなった手に息をかけながら、エレベーターに乗った。
中は暖房がきいており、幸せな気持ちになった。
住居フロワーに着くと、早足に部屋に向かった。そこで鍵を開けようとしたが、手が思うように動かなかった。
そうこうしているうちに、鍵が開く音かした。不思議の思っていると顔を出したのは母であった。
「おかえり」と暖かく迎えられると照れくさかった。今までこんな事は一度もなかった。
「仕事は?」
「あぁ、早めに切り上げた」
「切り上げた?」
“終わった”ではなく、“切り上げた”と言う言葉が引っかかった。
「しばらくは、20時くらい帰宅。夜勤もしない」
「なんで? 居なくてもちゃんと勉強しているよ」
「そうだね」
母が悲しそうに笑う意味が分からなかった。
中位クラス以下の子どもで勉強しなくて1月は親がつきっきりで勉強を見ると言う話しを聞いたことがある。しかし、自分には該当しないと思っていた。
「快晴中の合格率は半分だけどしっかりやるよ。今までも1人でこなし結果を出してきたでしょ」
「そうだね」母は頷くと「ご飯できているよ」と行ってリビングに促された。
食事に時間を裂きたくないため、母の申し出は断りたかった。しかし、出資者には逆らえない。
母がいることは負担だった。憲貞のことで助けてもらった事は感謝ているが、構われそれに時間を使うのは嫌だった。伝えて、話し合いに時間が消費されるのも最悪だ。
貴也は、返事をするとリビングに行き数分で食事終わらしシャワーを浴びた。
目の前で、母は酒を飲んでいたが特に会話をしなかった。時間の無駄だ。
今まで、ほとんど関わらなかったくせにと言う気持ちもあった。憎んでいるからそう思う訳ではない。どう接して良いのかわからないのだ。
そんな生活を続けているとあっという間にハロウィンが終わった。10月頭に林間学校があったが、貴也は行かなかった。和也は行ったと思っていたが、発熱したらしい。慣れない勉強づくしの生活で疲れが出たのだろうと思った。
会場は入ると、鉛筆の音だけが響きは話し声が全く聞こえなかった。上位クラスも授業中は緊張感があったがそれ以外は穏やかだ。
ここは異常だ。
だが、それがまたいいと思った。
貴也はホワイトボードに書かれている席の番号を確認して座った。場所は真ん中よりすこし後ろだ。
成績順だ。
これは今の自分の位置なのだと心に刻みこんだ。
講師が来て授業が始まると一層空気が張りつめた。その空気に気持ちが悪くなったが、深呼吸をして自分を落ち着かせるとホワイトボードをみた。
授業のペースは速い。
一瞬でも気を抜くと置いてかれる。
「それでは演習をすこしやりましょうか」
講師が演習をするテキストのページを言い終わった瞬間、一斉に鉛筆が動く音がした。
貴也も遅れないようにすぐに取り組んだ。数分後、前の方で鉛筆を置く音がした。
焦れば、焦るほど計算がうまく行かない。
あと少しで計算が終わるという所で「そこまで」という講師の声が聞こえた。
講師は問題の解説を始めた。解説を聞けば、それほど難しい問題ではなかった。
いつもそうだ。聞けば分かるが、自力は時間が掛かる。
休憩時間も、周囲の生徒は勉強していた。
張りつめた空気はゆるむことはなかった。自分がどれだけ甘い世界にいたのか痛いほど理解した。
どこかで、“大丈夫”、“受かる”という気持ちがあった。
快晴中を舐めているつもりはなかったが、考えが甘かったと反省した。
一番前に座る、生徒がおそらく合格率80%なのだろう。12月の最後のテストではそこまで上ると誓った。
外に出ると真っ暗であった。
自転車で走ると夜風が冷たく、コートを着ているのに寒さを感じた。ハンドルを持つ手がかじかんだ。
「手袋が必要だね」
自宅に着くと冷たくなった手に息をかけながら、エレベーターに乗った。
中は暖房がきいており、幸せな気持ちになった。
住居フロワーに着くと、早足に部屋に向かった。そこで鍵を開けようとしたが、手が思うように動かなかった。
そうこうしているうちに、鍵が開く音かした。不思議の思っていると顔を出したのは母であった。
「おかえり」と暖かく迎えられると照れくさかった。今までこんな事は一度もなかった。
「仕事は?」
「あぁ、早めに切り上げた」
「切り上げた?」
“終わった”ではなく、“切り上げた”と言う言葉が引っかかった。
「しばらくは、20時くらい帰宅。夜勤もしない」
「なんで? 居なくてもちゃんと勉強しているよ」
「そうだね」
母が悲しそうに笑う意味が分からなかった。
中位クラス以下の子どもで勉強しなくて1月は親がつきっきりで勉強を見ると言う話しを聞いたことがある。しかし、自分には該当しないと思っていた。
「快晴中の合格率は半分だけどしっかりやるよ。今までも1人でこなし結果を出してきたでしょ」
「そうだね」母は頷くと「ご飯できているよ」と行ってリビングに促された。
食事に時間を裂きたくないため、母の申し出は断りたかった。しかし、出資者には逆らえない。
母がいることは負担だった。憲貞のことで助けてもらった事は感謝ているが、構われそれに時間を使うのは嫌だった。伝えて、話し合いに時間が消費されるのも最悪だ。
貴也は、返事をするとリビングに行き数分で食事終わらしシャワーを浴びた。
目の前で、母は酒を飲んでいたが特に会話をしなかった。時間の無駄だ。
今まで、ほとんど関わらなかったくせにと言う気持ちもあった。憎んでいるからそう思う訳ではない。どう接して良いのかわからないのだ。
そんな生活を続けているとあっという間にハロウィンが終わった。10月頭に林間学校があったが、貴也は行かなかった。和也は行ったと思っていたが、発熱したらしい。慣れない勉強づくしの生活で疲れが出たのだろうと思った。
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