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第57話 寂しいと言ってる暇はない
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貴也は机ではなく、憲貞が勉強していたローテーブルの前に座っていた。お互い勉強していただけ多く会話をしたわけではないが、いなくなったことで胸に穴が開いたようであった。
この事態をまねいた自分に不甲斐なさを感じていた。
大きく息を吸うと、ローテーブルの上にテキストを出し勉強した。
ふと気づくと23時であった。テキストをまとめるとシャワーを浴び冷蔵庫を開けた。そこには、母が作った料理があった。憲貞がいないため量が少なくなっていた。その横にはゼリータイプの栄養ドリンクがあった。
「新に買ってきてくれたのか」
ゼリータイプの栄養ドリンクに手を伸ばしたが、止めた。憲貞や和也が自分のことを心配し気遣ってくれたことを思い出した。
「俺はいい友人を持った」
そう言って母の作った料理を温めると食べた。食べているうちに視界がぼやけて、箸を持っている手が濡れた。悲しくて悔しくて仕方なかった。
泣くつもりはなかったが涙が止まらなかった。
「その友人に俺ができることは」
腕で顔をふくと皿を空にした。そして、それを流しに入れて自室に戻るとまたローテーブルに向かった。
日付が変わっても勉強を続けた。
窓からの光で目を覚ますと、自分がローテーブルに頭をつけて寝ていたことに気づいた。その時、憲貞が同じ格好で寝ていたのを思い出して笑いがこみあげてきた。
小さく息を吐くとまた、勉強を始めた。
数時間経つと学校へ行く時間になった。行きたくない気持ちが強かったが、和也に憲貞の様子を聞きたかったため重い腰を上げた。
憲貞にメールをしたのだが“大丈夫”としか返ってこないため詳細がよく分からなかった。
学校に着くと、ランドセルを放るように机に置き和也にもとに飛んで行った。
「ねぇ、のりちゃんは? どう?」
挨拶もなしに言いたいことだけを言う貴也に和也は眉をひそめて「おはよう」と言った。すると、貴也はバツの悪そうな顔をして挨拶を返した。
「のりちゃんは大丈夫だ。大丈夫で逆にすげーよ。オヤジの授業って初めて受けたがスパルタすぎる。のりちゃんは平気な顔でついていっているんだよ」和也は大きくため息をついた「朝の計算の授業に参加しなかったら、ベッドの周りにプリントが並べられていて、それをやらないとベッドから降りれねぇんだよ」
和也の文句は更に続いた。
「だいたいさ、やるかやらないかは自分次第みたいなこと言っているくせにさ。結局強制だぜ」
「のりちゃんはやっているんだよね」
「あいつはドMだ」そう言いながら、指を指された「お前もドMだ」
苦痛が嬉しいわけじゃないから“ドM”ではないと思いながらも、憲貞の元気な様子が聞けて安心した。
「自習室にも来なくなったら心配していたんだよ」
「塾の授業以外は、鬼といるよ。勉強は塾講師と鬼の前でしかやってねぇ」
「鬼……。お父さんがそんなに怖いのか?」
「勉強教えている時のオヤジは鬼以外のなんでもねぇ」
和也は顔を青くして身体を震わせていた。
「でも、のりちゃんはメールでいい人だって言っていたよ」
「あ? のりちゃんにはな。鬼の言われたこと全部こなしているからな」
「叶も頑張ればいいじゃん」
「できねぇ」
顔を机につけたため、表情が見えなくなったがいい顔はしていないだろ。
「そうか。がんばれ」としか言えず、貴也は自席に座ると寝た。屋上で寝ていて探された日から授業中に睡眠をとっても誰も何も言わなくなった。担任も嫌な顔をすることがなくなったので安心して眠ることができた。
学校が終わると、すぐに自宅に帰り塾に向かった。
授業が始まる前に、講師を捕まえて分からない問題の解説を聞きたかった。やはり、解説を聞くと理解できるのだがテストになると分からなくなる。
自習室で解説してもらった問題を解き直してから教室にはいった。
先に教室にいた森田日向子と岡田光一に挨拶をしてから自席に座った。すると、すぐに講師がきて授業が始まった。授業が始めると一瞬で教室の空気が張り詰める。いつもふざけた事を言っている光一も一切笑わない。
ピリピリと刺激的なこの空気が好きだ。
授業が終わり教室を出ると、憲貞と和也の姿があった。声を掛けようとしたが、彼らはわき目もふらずにエレベーターの方へ向かったのでやめた。
彼らも頑張っているのだが邪魔してはいけない。
自習室で勉強していると、光一が志望校別の特別講習を受けるのかと聞かれた。
来月から始まる特別講義の受講テストは合格していた。行くつもりである事を伝える光一は素っ気ない返事を返した。
「受けないの?」
「受けないじゃなくて受けられないの」
拗ねたように光一が言ったのでそれ以上は声を掛けなかった。
この事態をまねいた自分に不甲斐なさを感じていた。
大きく息を吸うと、ローテーブルの上にテキストを出し勉強した。
ふと気づくと23時であった。テキストをまとめるとシャワーを浴び冷蔵庫を開けた。そこには、母が作った料理があった。憲貞がいないため量が少なくなっていた。その横にはゼリータイプの栄養ドリンクがあった。
「新に買ってきてくれたのか」
ゼリータイプの栄養ドリンクに手を伸ばしたが、止めた。憲貞や和也が自分のことを心配し気遣ってくれたことを思い出した。
「俺はいい友人を持った」
そう言って母の作った料理を温めると食べた。食べているうちに視界がぼやけて、箸を持っている手が濡れた。悲しくて悔しくて仕方なかった。
泣くつもりはなかったが涙が止まらなかった。
「その友人に俺ができることは」
腕で顔をふくと皿を空にした。そして、それを流しに入れて自室に戻るとまたローテーブルに向かった。
日付が変わっても勉強を続けた。
窓からの光で目を覚ますと、自分がローテーブルに頭をつけて寝ていたことに気づいた。その時、憲貞が同じ格好で寝ていたのを思い出して笑いがこみあげてきた。
小さく息を吐くとまた、勉強を始めた。
数時間経つと学校へ行く時間になった。行きたくない気持ちが強かったが、和也に憲貞の様子を聞きたかったため重い腰を上げた。
憲貞にメールをしたのだが“大丈夫”としか返ってこないため詳細がよく分からなかった。
学校に着くと、ランドセルを放るように机に置き和也にもとに飛んで行った。
「ねぇ、のりちゃんは? どう?」
挨拶もなしに言いたいことだけを言う貴也に和也は眉をひそめて「おはよう」と言った。すると、貴也はバツの悪そうな顔をして挨拶を返した。
「のりちゃんは大丈夫だ。大丈夫で逆にすげーよ。オヤジの授業って初めて受けたがスパルタすぎる。のりちゃんは平気な顔でついていっているんだよ」和也は大きくため息をついた「朝の計算の授業に参加しなかったら、ベッドの周りにプリントが並べられていて、それをやらないとベッドから降りれねぇんだよ」
和也の文句は更に続いた。
「だいたいさ、やるかやらないかは自分次第みたいなこと言っているくせにさ。結局強制だぜ」
「のりちゃんはやっているんだよね」
「あいつはドMだ」そう言いながら、指を指された「お前もドMだ」
苦痛が嬉しいわけじゃないから“ドM”ではないと思いながらも、憲貞の元気な様子が聞けて安心した。
「自習室にも来なくなったら心配していたんだよ」
「塾の授業以外は、鬼といるよ。勉強は塾講師と鬼の前でしかやってねぇ」
「鬼……。お父さんがそんなに怖いのか?」
「勉強教えている時のオヤジは鬼以外のなんでもねぇ」
和也は顔を青くして身体を震わせていた。
「でも、のりちゃんはメールでいい人だって言っていたよ」
「あ? のりちゃんにはな。鬼の言われたこと全部こなしているからな」
「叶も頑張ればいいじゃん」
「できねぇ」
顔を机につけたため、表情が見えなくなったがいい顔はしていないだろ。
「そうか。がんばれ」としか言えず、貴也は自席に座ると寝た。屋上で寝ていて探された日から授業中に睡眠をとっても誰も何も言わなくなった。担任も嫌な顔をすることがなくなったので安心して眠ることができた。
学校が終わると、すぐに自宅に帰り塾に向かった。
授業が始まる前に、講師を捕まえて分からない問題の解説を聞きたかった。やはり、解説を聞くと理解できるのだがテストになると分からなくなる。
自習室で解説してもらった問題を解き直してから教室にはいった。
先に教室にいた森田日向子と岡田光一に挨拶をしてから自席に座った。すると、すぐに講師がきて授業が始まった。授業が始めると一瞬で教室の空気が張り詰める。いつもふざけた事を言っている光一も一切笑わない。
ピリピリと刺激的なこの空気が好きだ。
授業が終わり教室を出ると、憲貞と和也の姿があった。声を掛けようとしたが、彼らはわき目もふらずにエレベーターの方へ向かったのでやめた。
彼らも頑張っているのだが邪魔してはいけない。
自習室で勉強していると、光一が志望校別の特別講習を受けるのかと聞かれた。
来月から始まる特別講義の受講テストは合格していた。行くつもりである事を伝える光一は素っ気ない返事を返した。
「受けないの?」
「受けないじゃなくて受けられないの」
拗ねたように光一が言ったのでそれ以上は声を掛けなかった。
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