ツギハギだらけの翼~中学受験という名の戦いに自分の全てか掛けている。ふざけていない、常に本気だ~

黒夜須(くろやす)

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第53話 他者の評価

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塾が終わった貴也と憲貞は、夜道を自宅に向かって歩いていた。

「ねぇ、のりちゃんは俺の事どう思う?」
「突然だな」

唐突な質問に憲貞は驚いたが、唸りながら考えた。

「そんなに、悩まなくていいよ。えっと、頼りになるとか、頭がいいとか」

よく学校の女子に言われることだが言っていて恥ずかしくなった。それを聞いた憲貞がキョトンとした顔をしているので余計に羞恥心を煽った。

「別に何言ってもいいよ」
「うむ……。なんと言うか、危うい感じだ。プライドが高いがみたいだが、自己犠牲的で一緒にいると不安になるな」
「もしかして、叶の方が頼りになるの?」

恐る恐る聞くと、「そうだな」と頷いた。
ショックだった。

「それはしょうがないだろ」と言いながら憲貞は慰めるように貴也の肩を叩いた「別にそれが良いとか悪いという事ではなく性格だ。和也は感覚で生きているようだから貴也のように先読みして計画をすることは苦手だろう。今が良ければいい的なところあるから成績も悪い」
「じゃ、なんで俺より頼りになるんの?」貴也は不満そうに頬を膨らませた。それに声を出して憲貞は笑った。

「カズは、全力で助けてくれるがけして自分を犠牲にしたりしないという安心感かな。できないことできないとはっきり言うので信用もある」

貴也が玄関を開けると待っていると、憲貞は礼を言って室内に入った。

「カズは感情表現がストレートだから、嘘がない。貴也は優しいが、上辺だけの様に感じる時があるな。いや、和也に対しては感情をあらわにすることがあったな」

自室につき、鞄を下ろしながら憲貞の言葉に貴也は頷いた。
確かに、和也にはイライラすることが多い。勿論、今は感謝をしている部分もある。

「そう気に病むな。私はそんな貴也も気に入っている」

食事と入浴をすませると机に向かった。一緒に勉強すると宣言してから憲貞は必ず同じ時間に机に向かう。

憲貞は勉強について質問してくる事はなく、その場で悩んしまうので彼の進捗状況は常に気にしていた。必要あれば教えたり資料を提供したりしていた。

日付をこえたことに気づくと手を止めて、憲貞の方を見た。彼は必死に鉛筆を動かしていた。以前、船をこいでいた人間とは見違えた。

憲貞の声を掛けると「あぁ、寝るか」と言って布団に入ったので和也もベッドに転がり眠りについた。
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