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第48話 子どもだからなんて言わせない
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貴也は自宅に帰宅すると、冷蔵庫を開けてそこにあった食事を一口食べると自室に行き机に向かった。寝る時間を定めたためいつもより勉強時間が短くなり焦っていた。
勉強を始めて少し経つと、真横で人の気配がしたため振り向いた。「のりちゃん?」いきなり現れた憲貞に驚き悲鳴のような声で彼の名前を言った。
「これ」
憲貞が自分のスマートフォンを差し出した。どうやら誰かにつながっているようであり、貴也は恐る恐るスマートフォンを耳に当てた。
『どーいうことだよ?』
「え?」
電話の向こうで和也の声が聞こえた。
『なんで、ちゃんとメシ食わねぇんだよ』
「あぁ、寝る時間が長くなったら勉強時間が足りないだよ」
『食え。俺は漫画我慢して勉強すんだらお前はちゃんとメシ食え』
「漫画? なにそれ、関係なくないか?」
『ある。同じ行動するんだろ。俺は漫画読まねぇお前と同じように勉強するから、お前は俺と同じようにメシ食え』
「えー」
和也の言い分に不満があった。受験生なのだから漫画を我慢するのは当たり前であり勉強時間を減らすのは違う。彼の反論しようとすると、憲貞が怖い顔した見てきた。
「健康が一番だ。貴也が食事を食べないのなら私は帰宅する。貴也の迷惑になりたくない」
憲貞を落ち着かせようと笑顔で微笑み「俺は大丈夫だよ。そんな顔しないで」と優しい言葉を投げかけるが効果がなく「なら、帰る」ときっぱりと言われた。
会話が電話の向こうにいる和也に聞こえたようで笑いがした。それが癇に障ったが、ここで自分の意見を通すと憲貞がいなくなってしまう気がした。
「わかったよ。食事に行こう」
スマートフォンに向かって告げるとそれを憲貞に返した。憲貞はスマートフォンを耳にあて和也と少し話すと礼を言って電話を切った。
最近は半分くらいしか食べていなかったため、全て食事をお腹に入れると苦しさを感じた。給食は毎回完食しているため自分が少食であるとは思っていなかった。しかし、食べないと食べられなくなるのだと改めて感じた。
食事が終わりシャワーを浴びるとすぐに机に向かったが、あっという間に約束の時間になってしまい憲貞に寝るように言われた。
仕方なく、ベッドに入ったが眠くはない。数十分して憲貞の寝息が聞こえた。
そっと、ベッドから起き上がり憲貞の顔を覗き込み寝ていることを確認すると机に向かった。
時間がない。もう、6年の夏だ。夏期講習もすぐそこに迫っている。
スマートフォンで自分のテストの結果を見ると焦っていた。千葉最難関校や御三家の合格率は50%を超えない。
深呼吸をして、テキストを開いた。
キリの良いところまで来ると時計を見た。日付が変わっていたため慌ててやめてベッドに入った。
朝5時15分に目覚ましをセットした。
目覚ましが鳴る前に目を覚まし身支度を終えると、憲貞が起きてきた。
「おはよう」と眠そうな顔をする憲貞に優しく返事を返した。
憲貞が顔を洗いに行っている間に、机に向かい勉強を始めた。戻ってくると憲貞もローテーブルに向かった。
チラリと彼の様子を見ると、まず計算から行っている。
それが終わると朝食を食べた。昨日、憲貞と和也に怒られたから今日はテーブルに着き母が用意した食事を全て食べた。
学校の準備をしながら、なんとなく憲貞に声を掛けた。
「のりちゃんとはいつから夏休み?」
「夏期講習の前日だ」
「同じだねぇ。学校で講習とかあるの?」
「あるが、母が塾の方に申し込んでるからそっちに出る」
「なんで? 学校の方が安そうじゃん」
「金か。それは分からんが学校は難関中向けの講座がないからかな」
「そうなの? だって、殆ど外部受験するんだよね? そんで、御三家とか受かるだよね?それを学校の売りにしてんじゃないの?」
憲貞は学校の準備を終えると、“うーん”と悩んだ。
「それなんだが、別に学校は外部受験を推奨しているわけではない。確かに男子は殆ど受験するのだが女子はそうではない。なんと言うか……」
憲貞は眉を下げて困った顔をした。
「子どもがどこの学校に行ったというのは母たちの立場に関わってくる」
「なにそれ? 自慢したいってこと?」
鼻で笑った。
本気で、馬鹿馬鹿しいと思った。
「俺らの学歴は、俺らの地位だ。親じゃないよ」
「そういう世界もあるんだ」
どこか諦めた顔した憲貞を見て、不愉快に思った。
「俺らは親のアクセサリーじゃないよ」
「私たちはまだ、子どもだから親がいないと何もできない」
その言葉を否定しようとしたが、思い止まった。今ここで何を言っても理想論だ。
子どもだが、親の付属品ではないこと。
言いなりになる必要はないこと。
今の自分がどれだけの事ができるのか。
実績を持って証明しなくてはならない。
まずは母に誓ったこと。
守らなくてはならない。
子どもだから仕方ないなんて言わせない。
貴也は塾のテキストのコピーをランドセルに入れた。
勉強を始めて少し経つと、真横で人の気配がしたため振り向いた。「のりちゃん?」いきなり現れた憲貞に驚き悲鳴のような声で彼の名前を言った。
「これ」
憲貞が自分のスマートフォンを差し出した。どうやら誰かにつながっているようであり、貴也は恐る恐るスマートフォンを耳に当てた。
『どーいうことだよ?』
「え?」
電話の向こうで和也の声が聞こえた。
『なんで、ちゃんとメシ食わねぇんだよ』
「あぁ、寝る時間が長くなったら勉強時間が足りないだよ」
『食え。俺は漫画我慢して勉強すんだらお前はちゃんとメシ食え』
「漫画? なにそれ、関係なくないか?」
『ある。同じ行動するんだろ。俺は漫画読まねぇお前と同じように勉強するから、お前は俺と同じようにメシ食え』
「えー」
和也の言い分に不満があった。受験生なのだから漫画を我慢するのは当たり前であり勉強時間を減らすのは違う。彼の反論しようとすると、憲貞が怖い顔した見てきた。
「健康が一番だ。貴也が食事を食べないのなら私は帰宅する。貴也の迷惑になりたくない」
憲貞を落ち着かせようと笑顔で微笑み「俺は大丈夫だよ。そんな顔しないで」と優しい言葉を投げかけるが効果がなく「なら、帰る」ときっぱりと言われた。
会話が電話の向こうにいる和也に聞こえたようで笑いがした。それが癇に障ったが、ここで自分の意見を通すと憲貞がいなくなってしまう気がした。
「わかったよ。食事に行こう」
スマートフォンに向かって告げるとそれを憲貞に返した。憲貞はスマートフォンを耳にあて和也と少し話すと礼を言って電話を切った。
最近は半分くらいしか食べていなかったため、全て食事をお腹に入れると苦しさを感じた。給食は毎回完食しているため自分が少食であるとは思っていなかった。しかし、食べないと食べられなくなるのだと改めて感じた。
食事が終わりシャワーを浴びるとすぐに机に向かったが、あっという間に約束の時間になってしまい憲貞に寝るように言われた。
仕方なく、ベッドに入ったが眠くはない。数十分して憲貞の寝息が聞こえた。
そっと、ベッドから起き上がり憲貞の顔を覗き込み寝ていることを確認すると机に向かった。
時間がない。もう、6年の夏だ。夏期講習もすぐそこに迫っている。
スマートフォンで自分のテストの結果を見ると焦っていた。千葉最難関校や御三家の合格率は50%を超えない。
深呼吸をして、テキストを開いた。
キリの良いところまで来ると時計を見た。日付が変わっていたため慌ててやめてベッドに入った。
朝5時15分に目覚ましをセットした。
目覚ましが鳴る前に目を覚まし身支度を終えると、憲貞が起きてきた。
「おはよう」と眠そうな顔をする憲貞に優しく返事を返した。
憲貞が顔を洗いに行っている間に、机に向かい勉強を始めた。戻ってくると憲貞もローテーブルに向かった。
チラリと彼の様子を見ると、まず計算から行っている。
それが終わると朝食を食べた。昨日、憲貞と和也に怒られたから今日はテーブルに着き母が用意した食事を全て食べた。
学校の準備をしながら、なんとなく憲貞に声を掛けた。
「のりちゃんとはいつから夏休み?」
「夏期講習の前日だ」
「同じだねぇ。学校で講習とかあるの?」
「あるが、母が塾の方に申し込んでるからそっちに出る」
「なんで? 学校の方が安そうじゃん」
「金か。それは分からんが学校は難関中向けの講座がないからかな」
「そうなの? だって、殆ど外部受験するんだよね? そんで、御三家とか受かるだよね?それを学校の売りにしてんじゃないの?」
憲貞は学校の準備を終えると、“うーん”と悩んだ。
「それなんだが、別に学校は外部受験を推奨しているわけではない。確かに男子は殆ど受験するのだが女子はそうではない。なんと言うか……」
憲貞は眉を下げて困った顔をした。
「子どもがどこの学校に行ったというのは母たちの立場に関わってくる」
「なにそれ? 自慢したいってこと?」
鼻で笑った。
本気で、馬鹿馬鹿しいと思った。
「俺らの学歴は、俺らの地位だ。親じゃないよ」
「そういう世界もあるんだ」
どこか諦めた顔した憲貞を見て、不愉快に思った。
「俺らは親のアクセサリーじゃないよ」
「私たちはまだ、子どもだから親がいないと何もできない」
その言葉を否定しようとしたが、思い止まった。今ここで何を言っても理想論だ。
子どもだが、親の付属品ではないこと。
言いなりになる必要はないこと。
今の自分がどれだけの事ができるのか。
実績を持って証明しなくてはならない。
まずは母に誓ったこと。
守らなくてはならない。
子どもだから仕方ないなんて言わせない。
貴也は塾のテキストのコピーをランドセルに入れた。
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