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第45話 サボり
しおりを挟むテストの採点結果は翌日に出る。偏差値は少し遅れて2,3日後であり、その時に志望校の合格率一緒にでる。
月曜日、塾から帰宅して食事が終わると母の目の前に座り共にテストの結果を見た。自己採点通りの結果だ。
母に出来ない所を指摘されて、その単元があるテキストのコピーの束を渡された。
それを持って自室に戻る。
テキストのコピーは算数と理科がほとんどであった。
算数は解法がまずわからない。そもそも、比を使うとか頭が混乱した。理科は“てこ”や“燃焼”の計算問題がネックであった。特に金属の燃焼は複雑すぎて意味がわからなかった。
テキストのコピーをローテーブルに置くと机に向かったがやる気になれずそのまま後ろに倒れた。すると、漫画が目に入った。
手を伸ばして読み始めた。この漫画は何度読んでもワクワクする。
主人公をいじめたり学校をサボったりするヤンキーが犯罪に巻き込まれて地下牢に閉じ込められてしまう。いつもサボっているから彼が犯罪に巻き込まれた事に誰も気づかないが主人公だけ気づいて助けにいく。いつも、やられている主人公が実は強いっていうのがめちゃくちゃ楽しい。助けられたヤンキーが唖然とした顔とかスカッとする。
テストの点数が悪くて落ち込んでいた気持ちもすっかりと忘れた。
漫画の面白い場面になり、笑い転げていると突然扉が開いた。仁王立ちした般若と目があった。般若は大きな声で怒鳴り散らすと漫画を取り上げてそれで殴ってきた。
「いってーな。何すんだよ」
「なんで勉強しないの? テキストのコピー渡したよね? 漫画ばかり読んで。そんな余裕ないよね? テストで成績悪かったんだよね?」
「分かってるよ」
母に捲し立てられてイライラとして大きな声が出た。分かっていることを何度も何度も言われて嫌気がさした。
そして、思わず「うるせー、バァバァ」と言ってしまった。
般若だった母の顔が青くなるのが分かった。マズイと思ったが感情が高ぶり撤回することができなかった。口を開けばもっと酷いことを言いそうであったため何も言わずにベッドに入った。
母の声が聞こえず、扉が閉まる音がした。
そのまま眠ってしまったらしく、目が覚めると窓の外が明るかった。時計を見ると、学校へ行く時間になっていて慌てて飛び起きたがまたベッドに転がった。
学校へ行く意味を考えた。塾では下の方であるが学校のテストは常に9割以上取っていた。検定試験だって小学校生で習う範囲の級は持っている。
「江本だって授業中、寝ているな」
完全に行く気をなくして、天井を見ていると意識が遠のいていった。
しばらくすると「カズ、和也?」と聞き覚えのある声が聞こえた。ゆっくりと目を開けると、父の顔があり驚いて飛び起きた。
「へ? なに?」
和也が構えると、父は困った顔をした。
「学校から電話があった。具合悪いのか? 休みなら行ってくれないと電話できないじゃん」
「え? 休んでいいの?」
ズル休みをしてしまい、怒られると思っていたので拍子抜けした。
「いいよ。受ける権利があるだけだから。あー、母さんにバレたら怒られるかもしれないけど。僕はどうでもいい」そこまで言うと一呼吸置いてから口を開けた「しかし、連絡しなかったというのが問題だね。学校側は登校しないと何かあったかと心配するよ」
「別に構わない」
ぶっきらぼうに答えると父は表情を曇らせた。
「これって信頼関係なんだよね? 一度でも裏切ると次は疑われるんだよね。意味わかる?」
黙っていると父は小さく息を漏らした。
「今回の事で、学校側は“無断で欠席する叶君”と思ったはずだよ。だから次に学校に来なくてもまた無断欠席かなって思われるって話」
「別にいいじゃねぇか?」
「本当にそう思う?」父にじっと見られると戸惑った「学校側が無断欠席と判断して自宅には連絡しない。僕は学校に行ったと思っている。しかし、実は事故にあったり犯罪に巻き込まれたりしていたというのはどうかな?」
父の言葉を聞いてゾクと悪寒が走った。誰にも見つけらずに冷たい地下牢に閉じ込められている自分を想像したら怖くなった。
「……地下牢は」
「え? 地下牢?」
「いや、なんでもない。連絡は必ずします」
「ならいい。次から気を付けなさい。今日は、塾どうするの? ここも連絡しないといけないよね?」
「あ……」
塾のことを完全に忘れていた。
少し考えてから父の顔を見て、今日の事を母に言うのかと聞いてみた。
「聞かれれば答える。体調が悪くて休んでいるなら伝えるよ」
「……体調は悪くない。塾は行く」
考えながらゆっくりと言葉にすると父は「そう」と一言いって部屋を出て行った。一人になりまたベッドに転がった。
天井はいつもと変わらなかった。
ふと時計を見ると、学校が終わる時間であった。和也はため息をつくと起き上り着替えて塾の準備をした。
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