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第36話 桜華学園の噂
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貴也はしばらく考えた後、重い口をゆっくりと動かした。
「叶だよ。奴が仲良かったからかな。叶とは学校が同じなんだよ」
「なるほど」と光一は頷くと何か言いたそうな顔をしていた。日向子も同じような顔していためいい予感がしかなった。
「あのさ。別に、息子と仲良くなったからって父親と関係が持てるわけじゃないよ?」
「それはわかんないじゃん。天王寺君が地盤を継ぐかもしれないし、そもそもいくつも会社を経営しているじゃないか」
生き生きとしている光一にため息しかでなかった。そして、チラリと日向子の方を見ると「森田さんも?」と聞いてみた。
「私は、単純に話がしたいかな」
ニコリと遠慮がちに笑っていたが、光一と同じようなものだと思った。彼らの期待に満ちた顔を見ながら断る方法を考えていた。
まだ半年以上は同じクラスにいるため、お互いに不快にならない方向で進めたかった。その時、「あっ」と声を上げて日向子が立ち上がった。
驚いて、視線で追うと彼女は楽しそうに扉をあけた。すると、こそにはバツの悪そうな顔をした憲貞が立っていた。
「……やぁ」
最悪のタイミングだと思った。憲貞自身もそれを感じていたようで控えめな声で挨拶した。
「なに? 江本君を迎えにきたの?」
「もう、授業も終わっているし入りなよ」
日向子と光一が笑顔で出迎えると、彼らに流されて憲貞は貴也の席まできた。困った顔をする憲貞の後ろには楽しそうな日向子と光一の顔があり疲れを感じた。
「あ……、すまない。迷惑だったか? 自習室に来ないからちょっと教室を覗くだけのつもりだったのだが……」
「いや、のりちゃんは悪くないよ」
ニコリと憲貞に笑顔を向けると目を伏せていた彼がぎこちなく笑った。ニヤニヤした顔で見ている後ろの2人が気になって仕方なかった。
「全然。むしろ歓迎だよ」と日向子は、憲貞を椅子に座らせた。そして、椅子を持ってきて隣に座った。逆隣には光一が座っている。
「やめろよ。困っているよ」図々しい二人を止めよとすると憲貞は首を振って案内してくれたことに礼を言った。そのため、貴也はそれ以上口を出せなくなった。
「あのな。ちょうど天王寺君の話をしていたんだよ」光一が人懐っこい笑顔を見せた。
「私の?」
「そうそう。なんで、江本君と仲良くなったの?」日向子も穏やかに笑った。
「うむ」少し考えてから憲貞が口を開こうとした時「叶がきっかけだよね」と貴也が笑顔で言ったが、憲貞は困ったような顔して頷いた。
「威圧するのはよくないわよ」日向子は貴也を睨むとすぐに憲貞に笑顔を向けて「いつも、あんな顔しているの?」と質問した。その回答に憲貞は困り愛想笑いを浮かべた。
「威圧なんかしていないよ」
満面の笑みを作ると「目が笑っていない」と指摘された。
「この状況が面白くないんだろ」光一がぼやくように言った「別に江本君に天王寺君を合わせないようにするとか言っていないじゃん。俺らとも友だちになってほしいだけだよ」
「私と友だちになりたいのか? いいぞ」
光一の言葉に憲貞は素早く嬉しそうな反応した。日向子も光一も心底嬉しそうな顔したが、貴也だけは不満そうだった。しかしそれを見せない様に笑顔を作るとまた日向子と光一に目が笑っていないとバカにされたので不快であることを全面に出した。
「友だちが少ない奴は嫉妬深くていやだよね」と日向子が憲貞に同意を求めると彼は首を傾げて貴也を見た。
「私に友だちが増えるのがいやか?」
真剣な彼の表情に眉を下げて、寂しそうに笑い「そんなことないよ」と首を振った。彼らが打算的であったとしても現状憲貞が関係をつくることに問題はない。
「心配するな。私は貴也を一番信頼している」
「ありがとう」
憲貞の強い言葉に心が温かくなった。
「話まとまった? まぁ、別に私たちと友だちになりたくなればそれでいいよ」と日向子が言った瞬間、光一が変化して何かを言おうとしたが彼女に睨まれると黙った。
「あのね。私、聞きたいことがあったの」
「そうなのか。貴也の友人だ。なんでも聞いてくれ」と憲貞が笑うと「友人ねぇ」と貴也が不満そうな声をあげた。
「友人でしょ」と日向子が強調すると光一も強く頷いた。
「分かったよ」と貴也はしぶしぶ頷くと「で、のりちゃんに話って?」と話を先に進めるように促した。
頷いた日向子は、いつになく真剣な表情だった。
「あのさ、塾にいるってことはさ、天王寺君 桜華中には行かないだよね?」
「う……む」
答えづらそうな憲貞を見て日向子は察したように「行くかもってことね」と言った。
「なんで、のりちゃんが桜華小って知っているの?」
貴也が驚いて聞いた。
「天王寺家でしょ? それなら進学するのは桜華かなって思ったの。それで私も併願校として考えているだけど、嫌な噂を聞いたの」そこで一呼吸置くと、改めて憲貞の方を見た「ねぇ、桜華にいる中村幸弘(なかむらゆきひろ)って知っている?」
彼女の真剣な表情に戸惑いながらも憲貞は頷いた。すると詳しく教えてほしいと言った。
「噂程度でしか知らない。彼は現在中2で初等部では1年しか一緒ではない。その時、私は1年であったからな」
「噂でもいいの。6年間も通うわけだから知りたいだよね」
必死な顔の日向子に、憲貞は困惑しているようだあった。貴也は彼の判断に任せようと思っていたがあまりも長い沈黙が続いたため貴也が口を開いた。
「定かな事が分からないなら、学校で聞いてくればいいじゃないかな?」
「うむ。そうしよう」
憲貞は安心したような顔をして頷いた。そして、日向子の方を向いて確認すると彼女も同意したので解散となった。光一が最後に「友だちだよね」と言っていたが、憲貞に返事しなくていいと言った。
無駄な話をしてしまったため、自習室によれずに帰宅した。
「叶だよ。奴が仲良かったからかな。叶とは学校が同じなんだよ」
「なるほど」と光一は頷くと何か言いたそうな顔をしていた。日向子も同じような顔していためいい予感がしかなった。
「あのさ。別に、息子と仲良くなったからって父親と関係が持てるわけじゃないよ?」
「それはわかんないじゃん。天王寺君が地盤を継ぐかもしれないし、そもそもいくつも会社を経営しているじゃないか」
生き生きとしている光一にため息しかでなかった。そして、チラリと日向子の方を見ると「森田さんも?」と聞いてみた。
「私は、単純に話がしたいかな」
ニコリと遠慮がちに笑っていたが、光一と同じようなものだと思った。彼らの期待に満ちた顔を見ながら断る方法を考えていた。
まだ半年以上は同じクラスにいるため、お互いに不快にならない方向で進めたかった。その時、「あっ」と声を上げて日向子が立ち上がった。
驚いて、視線で追うと彼女は楽しそうに扉をあけた。すると、こそにはバツの悪そうな顔をした憲貞が立っていた。
「……やぁ」
最悪のタイミングだと思った。憲貞自身もそれを感じていたようで控えめな声で挨拶した。
「なに? 江本君を迎えにきたの?」
「もう、授業も終わっているし入りなよ」
日向子と光一が笑顔で出迎えると、彼らに流されて憲貞は貴也の席まできた。困った顔をする憲貞の後ろには楽しそうな日向子と光一の顔があり疲れを感じた。
「あ……、すまない。迷惑だったか? 自習室に来ないからちょっと教室を覗くだけのつもりだったのだが……」
「いや、のりちゃんは悪くないよ」
ニコリと憲貞に笑顔を向けると目を伏せていた彼がぎこちなく笑った。ニヤニヤした顔で見ている後ろの2人が気になって仕方なかった。
「全然。むしろ歓迎だよ」と日向子は、憲貞を椅子に座らせた。そして、椅子を持ってきて隣に座った。逆隣には光一が座っている。
「やめろよ。困っているよ」図々しい二人を止めよとすると憲貞は首を振って案内してくれたことに礼を言った。そのため、貴也はそれ以上口を出せなくなった。
「あのな。ちょうど天王寺君の話をしていたんだよ」光一が人懐っこい笑顔を見せた。
「私の?」
「そうそう。なんで、江本君と仲良くなったの?」日向子も穏やかに笑った。
「うむ」少し考えてから憲貞が口を開こうとした時「叶がきっかけだよね」と貴也が笑顔で言ったが、憲貞は困ったような顔して頷いた。
「威圧するのはよくないわよ」日向子は貴也を睨むとすぐに憲貞に笑顔を向けて「いつも、あんな顔しているの?」と質問した。その回答に憲貞は困り愛想笑いを浮かべた。
「威圧なんかしていないよ」
満面の笑みを作ると「目が笑っていない」と指摘された。
「この状況が面白くないんだろ」光一がぼやくように言った「別に江本君に天王寺君を合わせないようにするとか言っていないじゃん。俺らとも友だちになってほしいだけだよ」
「私と友だちになりたいのか? いいぞ」
光一の言葉に憲貞は素早く嬉しそうな反応した。日向子も光一も心底嬉しそうな顔したが、貴也だけは不満そうだった。しかしそれを見せない様に笑顔を作るとまた日向子と光一に目が笑っていないとバカにされたので不快であることを全面に出した。
「友だちが少ない奴は嫉妬深くていやだよね」と日向子が憲貞に同意を求めると彼は首を傾げて貴也を見た。
「私に友だちが増えるのがいやか?」
真剣な彼の表情に眉を下げて、寂しそうに笑い「そんなことないよ」と首を振った。彼らが打算的であったとしても現状憲貞が関係をつくることに問題はない。
「心配するな。私は貴也を一番信頼している」
「ありがとう」
憲貞の強い言葉に心が温かくなった。
「話まとまった? まぁ、別に私たちと友だちになりたくなればそれでいいよ」と日向子が言った瞬間、光一が変化して何かを言おうとしたが彼女に睨まれると黙った。
「あのね。私、聞きたいことがあったの」
「そうなのか。貴也の友人だ。なんでも聞いてくれ」と憲貞が笑うと「友人ねぇ」と貴也が不満そうな声をあげた。
「友人でしょ」と日向子が強調すると光一も強く頷いた。
「分かったよ」と貴也はしぶしぶ頷くと「で、のりちゃんに話って?」と話を先に進めるように促した。
頷いた日向子は、いつになく真剣な表情だった。
「あのさ、塾にいるってことはさ、天王寺君 桜華中には行かないだよね?」
「う……む」
答えづらそうな憲貞を見て日向子は察したように「行くかもってことね」と言った。
「なんで、のりちゃんが桜華小って知っているの?」
貴也が驚いて聞いた。
「天王寺家でしょ? それなら進学するのは桜華かなって思ったの。それで私も併願校として考えているだけど、嫌な噂を聞いたの」そこで一呼吸置くと、改めて憲貞の方を見た「ねぇ、桜華にいる中村幸弘(なかむらゆきひろ)って知っている?」
彼女の真剣な表情に戸惑いながらも憲貞は頷いた。すると詳しく教えてほしいと言った。
「噂程度でしか知らない。彼は現在中2で初等部では1年しか一緒ではない。その時、私は1年であったからな」
「噂でもいいの。6年間も通うわけだから知りたいだよね」
必死な顔の日向子に、憲貞は困惑しているようだあった。貴也は彼の判断に任せようと思っていたがあまりも長い沈黙が続いたため貴也が口を開いた。
「定かな事が分からないなら、学校で聞いてくればいいじゃないかな?」
「うむ。そうしよう」
憲貞は安心したような顔をして頷いた。そして、日向子の方を向いて確認すると彼女も同意したので解散となった。光一が最後に「友だちだよね」と言っていたが、憲貞に返事しなくていいと言った。
無駄な話をしてしまったため、自習室によれずに帰宅した。
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