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第29話 邪魔するプライド
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昨日の決心から完全に御三家を受ける気はなくなっていた。そして、まだ見ぬ憲貞との桜華ライフを妄想していた。だから和也の言葉はあまり愉快なのもではなかった。
「わかんねぇーか?」と和也が馬鹿にしてたように首を傾げたのでイラっとしたが、彼にも考えがあるのだろうと黙って耳を傾けた「あのさ、のりちゃんのかぁーちゃんはのりちゃんを傷つけてでも御三家に行かせたいわけだよな?」
和也の言葉に憲貞はピクリとした。それに気づき「大丈夫」と彼の手を握った。
憲貞のその様子に和也も気づき「あ~わりぃ」と言いつつ「大事だから続ける」と言った。憲貞は貴也の手を強く握った。
「俺が言うのもなんだけど、のりちゃん御三家難しいよな。いや、本気で行きねぇなら応援するがちげーじゃん?」
和也は憲貞が傷つかないように言葉を選んだようだが、憲貞の暗い顔を見て“失敗した”と思ったようで眉を下げた。しかし、自分の考えを伝える事を優先したようでそれについて触れなかった。
「江本が御三家つうか、千葉最難関校から総なめすればいい。それで金のためと言って桜華にいけよ。勿論、のりちゃんも御三家受けろよ。落ちるだろがな。だが、それが大事だ」
そこまで話すと貴也は意味が分かりニヤリと笑ったが、憲貞はきょんとしていた。
「叶って、本当は頭いいんじゃないの?」
「ふん。俺は案をだしただけだ、実行するんのはお前だ。まぁー力貸してやらねぇこともないがな」
照れくさそうに頬をかく和也に貴也は礼を言った。
理解できない憲貞がじっと2人を見ていた。それに気づいた貴也は「あー」と少し考える顔をしてから口を開いた。
「つまりね。俺は頭いいが金が欲しくて桜華を選ぶんだよ。のりちゃんも桜華に行く。そこで、のりちゃんのお母さんに桜華では俺が勉強教えて国立大学目指すって言うだよ」
「なるほど」
「まずは御三家目指す話をして、そのためにこのまま一緒にすむ必要があるって話しもするよ」
貴也の丁寧な言葉に憲貞は頷いた。すると、「うーん」と和也が唸った。
「どうかしたの?」と首をひねり、和也を見ると彼は困った顔をしていた。
「のりちゃんのかぁーちゃんへの説得ってお前がするのか?」
「勿論だよ」と自信満々な貴也に和也は首を振った。
「いや、やめた方がいいんじゃねーかな」
「なんでかな?」
「あ、もしかして今回のりちゃんがお前ちに住む事をのりちゃんの家に連絡したのはお前?」
「……母だよ」と不満そうに声を上げると和也は「やっぱり」と言って頷いた。
「俺らが子どもである事。それが周囲にどんな影響を及ぼすか考えた方がいいんじゃねぇのか?」
「……」
正論を言われて何も反論できずじっと和也を見ると彼は大きくため息をついた。
「自分のプライドが大事なら辞めればいいんじゃねぇの?」
「そんなの事……」
「母親にこれ以上頼るのはヤダって顔してんじゃねぁぇか」
「あの……」と、憲貞は心配そうに2人を見て口を開いた。
「私の事なら大丈夫だ。春期講習期間、とても世話になり感謝している」
「健気だなぁ」
和也のニヤついた顔に腹が立った。たが、彼の言っている事が正しいと理解はしていた。
憲貞に悲しげな顔させ気を遣わせている自分にもイラついた。
早く大人になりたいと思い、子どもである自分を呪った。
「あぁ? なんだ? 子どもな自分にイラついてんのか? バカじゃぇの? 無い物ねだりしねぇで子どもであること利用しろよ」
自分の心を読んだかのように話す和也にいい感情を持てなかった。
彼より自分の方が劣っていると感じてイヤだった。
「プライド高いなぁ」
そう言いながら和也は、部屋を出ていった。
彼の出ていった扉を見て考え込むと「あの」と憲貞が話しかけてきた。
「本当に、無理しなくていい」
寂しそうに笑う憲貞に貴也は胸が痛んだ。
「……今日、母に頭を下げるよ」
何の役にも立たないプライドを大切にしていても仕方ない。プライドを持つところはそこじゃない。
自分だけでやることに意味があるでなく、結果がすべてだ。ルートなんてどうでもいい。
自分自身が今一番大切にしてることを考えた。
「俺、のりちゃんと一緒にいたいんだよ」
覚悟を決めて、憲貞に笑いかけた。憲貞は驚いた顔をしたがすぐに嬉しそうに笑った。
「わかんねぇーか?」と和也が馬鹿にしてたように首を傾げたのでイラっとしたが、彼にも考えがあるのだろうと黙って耳を傾けた「あのさ、のりちゃんのかぁーちゃんはのりちゃんを傷つけてでも御三家に行かせたいわけだよな?」
和也の言葉に憲貞はピクリとした。それに気づき「大丈夫」と彼の手を握った。
憲貞のその様子に和也も気づき「あ~わりぃ」と言いつつ「大事だから続ける」と言った。憲貞は貴也の手を強く握った。
「俺が言うのもなんだけど、のりちゃん御三家難しいよな。いや、本気で行きねぇなら応援するがちげーじゃん?」
和也は憲貞が傷つかないように言葉を選んだようだが、憲貞の暗い顔を見て“失敗した”と思ったようで眉を下げた。しかし、自分の考えを伝える事を優先したようでそれについて触れなかった。
「江本が御三家つうか、千葉最難関校から総なめすればいい。それで金のためと言って桜華にいけよ。勿論、のりちゃんも御三家受けろよ。落ちるだろがな。だが、それが大事だ」
そこまで話すと貴也は意味が分かりニヤリと笑ったが、憲貞はきょんとしていた。
「叶って、本当は頭いいんじゃないの?」
「ふん。俺は案をだしただけだ、実行するんのはお前だ。まぁー力貸してやらねぇこともないがな」
照れくさそうに頬をかく和也に貴也は礼を言った。
理解できない憲貞がじっと2人を見ていた。それに気づいた貴也は「あー」と少し考える顔をしてから口を開いた。
「つまりね。俺は頭いいが金が欲しくて桜華を選ぶんだよ。のりちゃんも桜華に行く。そこで、のりちゃんのお母さんに桜華では俺が勉強教えて国立大学目指すって言うだよ」
「なるほど」
「まずは御三家目指す話をして、そのためにこのまま一緒にすむ必要があるって話しもするよ」
貴也の丁寧な言葉に憲貞は頷いた。すると、「うーん」と和也が唸った。
「どうかしたの?」と首をひねり、和也を見ると彼は困った顔をしていた。
「のりちゃんのかぁーちゃんへの説得ってお前がするのか?」
「勿論だよ」と自信満々な貴也に和也は首を振った。
「いや、やめた方がいいんじゃねーかな」
「なんでかな?」
「あ、もしかして今回のりちゃんがお前ちに住む事をのりちゃんの家に連絡したのはお前?」
「……母だよ」と不満そうに声を上げると和也は「やっぱり」と言って頷いた。
「俺らが子どもである事。それが周囲にどんな影響を及ぼすか考えた方がいいんじゃねぇのか?」
「……」
正論を言われて何も反論できずじっと和也を見ると彼は大きくため息をついた。
「自分のプライドが大事なら辞めればいいんじゃねぇの?」
「そんなの事……」
「母親にこれ以上頼るのはヤダって顔してんじゃねぁぇか」
「あの……」と、憲貞は心配そうに2人を見て口を開いた。
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「健気だなぁ」
和也のニヤついた顔に腹が立った。たが、彼の言っている事が正しいと理解はしていた。
憲貞に悲しげな顔させ気を遣わせている自分にもイラついた。
早く大人になりたいと思い、子どもである自分を呪った。
「あぁ? なんだ? 子どもな自分にイラついてんのか? バカじゃぇの? 無い物ねだりしねぇで子どもであること利用しろよ」
自分の心を読んだかのように話す和也にいい感情を持てなかった。
彼より自分の方が劣っていると感じてイヤだった。
「プライド高いなぁ」
そう言いながら和也は、部屋を出ていった。
彼の出ていった扉を見て考え込むと「あの」と憲貞が話しかけてきた。
「本当に、無理しなくていい」
寂しそうに笑う憲貞に貴也は胸が痛んだ。
「……今日、母に頭を下げるよ」
何の役にも立たないプライドを大切にしていても仕方ない。プライドを持つところはそこじゃない。
自分だけでやることに意味があるでなく、結果がすべてだ。ルートなんてどうでもいい。
自分自身が今一番大切にしてることを考えた。
「俺、のりちゃんと一緒にいたいんだよ」
覚悟を決めて、憲貞に笑いかけた。憲貞は驚いた顔をしたがすぐに嬉しそうに笑った。
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