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第19話 勉強の仕方
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片付けが全て終了すると、憲貞を自室に案内した。
「余ってる部屋がないから一緒でもいいかな」
「勿論だ」
部屋に入ると、憲貞は鞄からテキストを出した。それに貴也が驚いてると「やるのだろ」と言うので頷いた。
「で、どこをやればいいのだ? 以前、私のやり方を指摘してきたよな」
「あ~、そうだっけ。俺、のりちゃんの実力知らないから何とも……」
そう言って、貴也は憲貞がローテーブルに置いたテキストをペラペラとめくった。
「じゃ、この4ページ目の問題を40分でやって。1問2分くらいかな。俺それくらいで風呂入ってくるから」
「え……?」
貴也に言われたページを確認して顔を青くした。それを見て「できなければそれでいいよ。実力みたいだけだから」と言って机の引き出しからタイマーを出してテーブルに置いた。
「使い方分かるよね」
「うん」
「じゃ、頑張って」
そう声を掛けると箪笥から寝間着を出して部屋から出た。出るまでじっと憲貞に見られて居心地が悪く感じた。
(あまり、人の目って気にしなかっただけどな)
いつもと同じ様にシャワーだけ浴びるとすぐに寝間着に着替え、歯を磨いた。口をすすぎ頭を上げると鏡に自分が映った。
(自分の顔なんて久々に見たね)
目の下にクマがあることに気づくとそれに触れた。
部屋に戻ると、憲貞と目があった。
「あ、いや……」
彼は罰が悪そうに下を向いた。貴也は黙って彼のノートを見ると真っ白であった。
「まだ15分はあるけど限界?」
「いや……、一問目でつまずいてしまって」
「なら、飛ばして次にやればいいよ」
「いいのか?」
「いや、逆になんでダメなの? テストでもそうでしょ」
真顔で聞く憲貞に驚いて逆に聞いてしまった。キョトンとする彼を見て貴也を頭を書きながら、彼のやっていたテキストを見た。
「あー、じゃ、このページを後15分でやって。できる問題だけでいい」
「わかった」
頷いた憲貞はピッピとタイマーをセットして始めた。
(俺も同じのやるか)
鞄から、憲貞が使用しているテキストと同じ物を出すと机に向かい同じ問題を解いた。全5問を3分かからず解き終わるとそのノートを持って憲貞を覗いた。
(一問目は飛ばしているか、あ、二問目は正解で、次は違うな。なんで式書かないだろう。全部暗算?)
ピピとタイマーの音が鳴ると憲貞の鉛筆を持つ手が震えていた。「のりちゃん」と声を掛けたが聞こえないようで瞬きを繰り返している。
「大丈夫?」
優しく声を掛けながら、憲貞の顔を覗くと呼吸は荒く真っ青であった。ちいさな声で「……できなかった。すいません」と繰り返している。次第に身体も震え出したので貴也はローテーブルをどかして憲貞の背中に触れた。
「大丈夫。大丈夫だよ。よく出来てるよ」
背中をさすりながら、耳元で何度も優しく伝えた。次第に呼吸の速度がゆっくりになり身体の震えがおさまってきた。
「た、たか……や?」
「そうだよ」
優しく答えながら彼の顔を見ると、視線があい安心した。
「すまない」
「気にしないでいいよ。のりちゃんは良くやってるよ」
「……しかし」
憲貞は真っ白なノートに視線を落とした。貴也は彼の隣に座ると、鉛筆を持った。
「まず、一問目だけど検討もつかない?」
「……うむ」
「そう。じゃ、これは明日塾で質問して。次は、合ってるけどなんで式書かないの?」
「頭でできたから」
「そうなんだね。次は間違ってるよ。式がないとどこで間違えたか確認できないよね? それとこれ」
ノートの端にある筆算を指差した。
「円の面積を計算してるの?」
「うむ」
「うむじゃないね。最低3.14×9までは暗記して。出来たら平方数もだけど……」
ノートの端に3.14×1から3.14×9までの式を書いた。
「これは覚えてね。この1ページを完全に理解してね。分からなければ解説見てそれでも無理なら明日塾で聞くこと」
「あ、過去問とかは?」
「基礎が出来ないのに応用は無理でしょ。俺も勉強するから疲れたらベッド寝ていいし、歯ブラシは新しい物が洗面台にあるから自由に使ってね。あ、それと」
貴也は自分が問題を解いたノートをローテーブルにのせた。それを憲貞はじっと覗き込んだ。
「今の問題、俺もやってみた。全部で3分でやった。凄いとか思わずに、のりちゃんも出来るように目指してね」
「……う、うむ」
「式も書いてあるから参考にして」
そう言うと貴也は自分の机に向かった。背を向け合う形で座っているためお互いの顔は見えない。
鉛筆の音がすることから憲貞が勉強を始めたことが分かった。
「余ってる部屋がないから一緒でもいいかな」
「勿論だ」
部屋に入ると、憲貞は鞄からテキストを出した。それに貴也が驚いてると「やるのだろ」と言うので頷いた。
「で、どこをやればいいのだ? 以前、私のやり方を指摘してきたよな」
「あ~、そうだっけ。俺、のりちゃんの実力知らないから何とも……」
そう言って、貴也は憲貞がローテーブルに置いたテキストをペラペラとめくった。
「じゃ、この4ページ目の問題を40分でやって。1問2分くらいかな。俺それくらいで風呂入ってくるから」
「え……?」
貴也に言われたページを確認して顔を青くした。それを見て「できなければそれでいいよ。実力みたいだけだから」と言って机の引き出しからタイマーを出してテーブルに置いた。
「使い方分かるよね」
「うん」
「じゃ、頑張って」
そう声を掛けると箪笥から寝間着を出して部屋から出た。出るまでじっと憲貞に見られて居心地が悪く感じた。
(あまり、人の目って気にしなかっただけどな)
いつもと同じ様にシャワーだけ浴びるとすぐに寝間着に着替え、歯を磨いた。口をすすぎ頭を上げると鏡に自分が映った。
(自分の顔なんて久々に見たね)
目の下にクマがあることに気づくとそれに触れた。
部屋に戻ると、憲貞と目があった。
「あ、いや……」
彼は罰が悪そうに下を向いた。貴也は黙って彼のノートを見ると真っ白であった。
「まだ15分はあるけど限界?」
「いや……、一問目でつまずいてしまって」
「なら、飛ばして次にやればいいよ」
「いいのか?」
「いや、逆になんでダメなの? テストでもそうでしょ」
真顔で聞く憲貞に驚いて逆に聞いてしまった。キョトンとする彼を見て貴也を頭を書きながら、彼のやっていたテキストを見た。
「あー、じゃ、このページを後15分でやって。できる問題だけでいい」
「わかった」
頷いた憲貞はピッピとタイマーをセットして始めた。
(俺も同じのやるか)
鞄から、憲貞が使用しているテキストと同じ物を出すと机に向かい同じ問題を解いた。全5問を3分かからず解き終わるとそのノートを持って憲貞を覗いた。
(一問目は飛ばしているか、あ、二問目は正解で、次は違うな。なんで式書かないだろう。全部暗算?)
ピピとタイマーの音が鳴ると憲貞の鉛筆を持つ手が震えていた。「のりちゃん」と声を掛けたが聞こえないようで瞬きを繰り返している。
「大丈夫?」
優しく声を掛けながら、憲貞の顔を覗くと呼吸は荒く真っ青であった。ちいさな声で「……できなかった。すいません」と繰り返している。次第に身体も震え出したので貴也はローテーブルをどかして憲貞の背中に触れた。
「大丈夫。大丈夫だよ。よく出来てるよ」
背中をさすりながら、耳元で何度も優しく伝えた。次第に呼吸の速度がゆっくりになり身体の震えがおさまってきた。
「た、たか……や?」
「そうだよ」
優しく答えながら彼の顔を見ると、視線があい安心した。
「すまない」
「気にしないでいいよ。のりちゃんは良くやってるよ」
「……しかし」
憲貞は真っ白なノートに視線を落とした。貴也は彼の隣に座ると、鉛筆を持った。
「まず、一問目だけど検討もつかない?」
「……うむ」
「そう。じゃ、これは明日塾で質問して。次は、合ってるけどなんで式書かないの?」
「頭でできたから」
「そうなんだね。次は間違ってるよ。式がないとどこで間違えたか確認できないよね? それとこれ」
ノートの端にある筆算を指差した。
「円の面積を計算してるの?」
「うむ」
「うむじゃないね。最低3.14×9までは暗記して。出来たら平方数もだけど……」
ノートの端に3.14×1から3.14×9までの式を書いた。
「これは覚えてね。この1ページを完全に理解してね。分からなければ解説見てそれでも無理なら明日塾で聞くこと」
「あ、過去問とかは?」
「基礎が出来ないのに応用は無理でしょ。俺も勉強するから疲れたらベッド寝ていいし、歯ブラシは新しい物が洗面台にあるから自由に使ってね。あ、それと」
貴也は自分が問題を解いたノートをローテーブルにのせた。それを憲貞はじっと覗き込んだ。
「今の問題、俺もやってみた。全部で3分でやった。凄いとか思わずに、のりちゃんも出来るように目指してね」
「……う、うむ」
「式も書いてあるから参考にして」
そう言うと貴也は自分の机に向かった。背を向け合う形で座っているためお互いの顔は見えない。
鉛筆の音がすることから憲貞が勉強を始めたことが分かった。
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