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「ぎゃぁぁぁ」
手を失うった村人は絶叫系して、転がった。血が吹き出る手を抑えてのたうち回っている。それはまるで死にかけの虫が足掻いている様であった。
「お、おい」虫と目があった。「た、助けてくれ。せ、世話してやったろ」
よく分からない事を言う虫が気持ち悪くて目をそらした。するとトウが優しく頭を撫ぜてくれた。
「このやろう」
助けてくれないと察した虫は悪態をついた。
「む、村に……、お、お、に……、なんか、よび、呼びやがって。ま、まつ、りに……」
トウは叫ぶ虫の言葉に反応する事なく、真横を通った。すると、虫がトウの足にしがみついてきた。
「ほと……、い、いく……のか。たすけ……て」
出血が多いせいか、虫の顔は真っ青になっていた。這いつくばっているからイモムシに見えた。
「お、俺は……。そ、村長のむ、すこ……。みご……」
トウが歩み進めると、あっという間にイモムシは小さくなり、そのうち声が聞こえなくなった。
「気になるの?」イモムシが見えなくなるとトウが暗い顔をして聞いてきた。「世話になった人? 助けた方がいい?」
そう言ったトウから真っ黒な感情が流れて、一瞬凍てつくような寒さを感じたがすぐに消えた。
「助ける気なんてないくせに……」
真っ黒な彼の感情が少し怖くなり、わざとらしく明るくいった。
するとトウは笑いながら「まぁね」と言って足を進めた。さっきの暗い顔を嘘の様な笑顔であった。
家を燃やしていた火はそれだけでは足りない様でどんどん広がっていった。
「あ~、火は村まで広がったみたいだね」
木々が多いため、広がりは速い。
「あはは、村にいた人間が慌てているね。家の焦げた臭いもする」
火の音も人の声も聞こえない場所まで来たのに、トウには村の様子がわかるようだ。
「わかるのか?」
「うん」トウ大きく頷いた。「木々が多くて見えないけど、声はよく聞こえるよ。あ、さっき手首を落とした男の心臓の音は聞こえないね」
「……心臓の音」
トウの耳の良さに驚いた。
自分の耳には、風に揺れる木々の音しか聞こえない。燃え盛る火の明るさは感じるが臭いはしない。
「さっき、祭りの音がするって……」
「ん?」トウは優しく微笑み頷いた。「あぁ、あれは煩かったね」
彼は五感が優れていると言っていたがその性能の高さは想像以上であった。
「でも、いつもはこんなに長く正常ではいられないんだよ」
トウは寂しそうに眉を下げた。
「聞こえないようにとか、見えないようにとか……」
「そんな事できればもうやっているよ。できないから僕らは苦しんでいる」
トウは大きなため息をついたがすぐに笑顔を見せた。
「でも、君がいるから大丈夫」
「俺は……」
トウの辛い気持ちは全身で感じたが、何をしたわけでもない。
「……そんなに頼られても」
彼が側にいてくれるのは嬉しかったが、期待されるのは困る。
「いつなくなるか分からなし……」
力がなくなればトウは自分から離れると思った瞬間、家でトウがいなくなった時の寂しさを思い出した。
「これ以上……、トウといるのは」
今なら、まだ離れても頑張れるかもしれない。しかし、この先ずっと一緒にいると彼から離れられなくなりそうになる自分が怖かった。
「はぁ?」トウは今までにない怖い顔をして足を止めた。「両足折って動けなくしてあげようか」
笑顔なのに、黒い空気がトウを覆っていた。それはゆっくりと自分の方に流れて来た。
「それとも、なくそうか」
彼の不満が黒い空気を濃くしどんどん止まる事無く流れ込んできた。
「あぁ、手もいらないよね」
「……トウ」
「心配しなくても、身の回りの事は全部僕がするからさ」
手を失うった村人は絶叫系して、転がった。血が吹き出る手を抑えてのたうち回っている。それはまるで死にかけの虫が足掻いている様であった。
「お、おい」虫と目があった。「た、助けてくれ。せ、世話してやったろ」
よく分からない事を言う虫が気持ち悪くて目をそらした。するとトウが優しく頭を撫ぜてくれた。
「このやろう」
助けてくれないと察した虫は悪態をついた。
「む、村に……、お、お、に……、なんか、よび、呼びやがって。ま、まつ、りに……」
トウは叫ぶ虫の言葉に反応する事なく、真横を通った。すると、虫がトウの足にしがみついてきた。
「ほと……、い、いく……のか。たすけ……て」
出血が多いせいか、虫の顔は真っ青になっていた。這いつくばっているからイモムシに見えた。
「お、俺は……。そ、村長のむ、すこ……。みご……」
トウが歩み進めると、あっという間にイモムシは小さくなり、そのうち声が聞こえなくなった。
「気になるの?」イモムシが見えなくなるとトウが暗い顔をして聞いてきた。「世話になった人? 助けた方がいい?」
そう言ったトウから真っ黒な感情が流れて、一瞬凍てつくような寒さを感じたがすぐに消えた。
「助ける気なんてないくせに……」
真っ黒な彼の感情が少し怖くなり、わざとらしく明るくいった。
するとトウは笑いながら「まぁね」と言って足を進めた。さっきの暗い顔を嘘の様な笑顔であった。
家を燃やしていた火はそれだけでは足りない様でどんどん広がっていった。
「あ~、火は村まで広がったみたいだね」
木々が多いため、広がりは速い。
「あはは、村にいた人間が慌てているね。家の焦げた臭いもする」
火の音も人の声も聞こえない場所まで来たのに、トウには村の様子がわかるようだ。
「わかるのか?」
「うん」トウ大きく頷いた。「木々が多くて見えないけど、声はよく聞こえるよ。あ、さっき手首を落とした男の心臓の音は聞こえないね」
「……心臓の音」
トウの耳の良さに驚いた。
自分の耳には、風に揺れる木々の音しか聞こえない。燃え盛る火の明るさは感じるが臭いはしない。
「さっき、祭りの音がするって……」
「ん?」トウは優しく微笑み頷いた。「あぁ、あれは煩かったね」
彼は五感が優れていると言っていたがその性能の高さは想像以上であった。
「でも、いつもはこんなに長く正常ではいられないんだよ」
トウは寂しそうに眉を下げた。
「聞こえないようにとか、見えないようにとか……」
「そんな事できればもうやっているよ。できないから僕らは苦しんでいる」
トウは大きなため息をついたがすぐに笑顔を見せた。
「でも、君がいるから大丈夫」
「俺は……」
トウの辛い気持ちは全身で感じたが、何をしたわけでもない。
「……そんなに頼られても」
彼が側にいてくれるのは嬉しかったが、期待されるのは困る。
「いつなくなるか分からなし……」
力がなくなればトウは自分から離れると思った瞬間、家でトウがいなくなった時の寂しさを思い出した。
「これ以上……、トウといるのは」
今なら、まだ離れても頑張れるかもしれない。しかし、この先ずっと一緒にいると彼から離れられなくなりそうになる自分が怖かった。
「はぁ?」トウは今までにない怖い顔をして足を止めた。「両足折って動けなくしてあげようか」
笑顔なのに、黒い空気がトウを覆っていた。それはゆっくりと自分の方に流れて来た。
「それとも、なくそうか」
彼の不満が黒い空気を濃くしどんどん止まる事無く流れ込んできた。
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「心配しなくても、身の回りの事は全部僕がするからさ」
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