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最終話 実験結果
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テーブルにはコーヒーが二つ向かい合わせに置いてあり、その近くに持ち主の新宮幹久と神田勉が座っていた。
「予想通りですね」
神田は星遥斗から提供された映像を見て頷いた。
「そうだね」
新宮はガラス張りの窓の方を見て言った。その窓越しにある実験室に、神田勉の息子である真人が車椅子に座っていた。彼の顔は包帯で巻かれており目と口以外見えない。手足も包帯だらけだ。
「うまくいったのかい?」新宮はコーヒーに口をつけながら言った。
「Subへの変改は成功と見ていいですね。まだ調整が必要ですがね。Domの研究は星遥斗のおかげてかなり進みましたね」
「うん」新宮は満足そうに頷いた。「真人や早川渚のように投薬ではなく、幼少期から純正Subと意識して暮らすほうがはるかに強いDomが育つ。ねぇ、『オトウサマ』」
新宮が呼びかけると、長くひげを生やした着物の男がゆっくりと新宮と神田に近づいてきた。
「うむ」
彼は頷きながら医師らの近くの椅子に腰を下ろした。
「純正のSubを作っておかげだ」と『オトウサマ』は頷いた。
「Sub同士で作らないといけないから大変でしたね」神田はコーヒーを飲みながら頷いた。「Sub同士じゃ自ら交配しませんし嗾けるのが大変でしたね。まぁ、覚醒後、調整する薬は星遥斗が飲ませてくれたのでよかったですが……」
「ははは」新宮は笑いながら頷いた。「星遥斗の血を解析できたから苦労したかいがあった」
「そうか。では、後はたのむ」
そう言うと『オトウサマ』は研究室を出て行った。
医師らは返事をすると彼を見送った。
「神田君、真人はどうするだい?早川渚のように捨てるかい?」
「いえ、折角Subにしたので市川君に上げようと思います。彼、Neutralのままコマンドまで得たんですよ」
「あぁ」新宮は軽く頷いた。「確かにそんな報告があったね。ソレに使えるならエコだね」
「だた、使い古しですし傷も多いですから早急に新しいモノを用意しないとですねがね」神田は車椅子乗ったままピクリとも動かない真人を細い目で見た。「同じ投薬でも、ひな子は成功していんるですよね。何が問題だったですかね」
神田が眉を寄せると、新宮も真人を見てうなった。
「愛情のある母親を与えたし、君も良き父親をやっていたと思うがね。ソレの個体差かな」
「愛情のある親がいなくとも星遥斗は成功しています。まぁアレは投薬していないからかもしれませんが、人との関わりが関係するのは確かですよね」
新宮と神田が意見を交換し合っていると受付から来客の電話があった。
神田が電話にでると、すぐに研究室に通すように伝えた。
しばらくすると、真っ赤な髪を三つ編みした長身の市川が現れた。ただ、彼はいつも笑顔を浮かべておらず表情がなかった。
「やぁ、よく来たね」
新宮が笑顔で向かい入れたが、彼は無表情のまま小さく頷くだけで何言わない。
「君、コマンドが使えるようになっただろ。ならアレはあげよう」
神田が実験室にいる真人を指さした。
市川は眉をひそめたが、小さく頷くと実験室に入った。
「君か」真人に向かって小さく言ったが彼は一切、反応せず目は虚ろであった。「難儀だね」
市川は真人の車椅子を押すと、そのまま実験室を出て行った。
「予想通りですね」
神田は星遥斗から提供された映像を見て頷いた。
「そうだね」
新宮はガラス張りの窓の方を見て言った。その窓越しにある実験室に、神田勉の息子である真人が車椅子に座っていた。彼の顔は包帯で巻かれており目と口以外見えない。手足も包帯だらけだ。
「うまくいったのかい?」新宮はコーヒーに口をつけながら言った。
「Subへの変改は成功と見ていいですね。まだ調整が必要ですがね。Domの研究は星遥斗のおかげてかなり進みましたね」
「うん」新宮は満足そうに頷いた。「真人や早川渚のように投薬ではなく、幼少期から純正Subと意識して暮らすほうがはるかに強いDomが育つ。ねぇ、『オトウサマ』」
新宮が呼びかけると、長くひげを生やした着物の男がゆっくりと新宮と神田に近づいてきた。
「うむ」
彼は頷きながら医師らの近くの椅子に腰を下ろした。
「純正のSubを作っておかげだ」と『オトウサマ』は頷いた。
「Sub同士で作らないといけないから大変でしたね」神田はコーヒーを飲みながら頷いた。「Sub同士じゃ自ら交配しませんし嗾けるのが大変でしたね。まぁ、覚醒後、調整する薬は星遥斗が飲ませてくれたのでよかったですが……」
「ははは」新宮は笑いながら頷いた。「星遥斗の血を解析できたから苦労したかいがあった」
「そうか。では、後はたのむ」
そう言うと『オトウサマ』は研究室を出て行った。
医師らは返事をすると彼を見送った。
「神田君、真人はどうするだい?早川渚のように捨てるかい?」
「いえ、折角Subにしたので市川君に上げようと思います。彼、Neutralのままコマンドまで得たんですよ」
「あぁ」新宮は軽く頷いた。「確かにそんな報告があったね。ソレに使えるならエコだね」
「だた、使い古しですし傷も多いですから早急に新しいモノを用意しないとですねがね」神田は車椅子乗ったままピクリとも動かない真人を細い目で見た。「同じ投薬でも、ひな子は成功していんるですよね。何が問題だったですかね」
神田が眉を寄せると、新宮も真人を見てうなった。
「愛情のある母親を与えたし、君も良き父親をやっていたと思うがね。ソレの個体差かな」
「愛情のある親がいなくとも星遥斗は成功しています。まぁアレは投薬していないからかもしれませんが、人との関わりが関係するのは確かですよね」
新宮と神田が意見を交換し合っていると受付から来客の電話があった。
神田が電話にでると、すぐに研究室に通すように伝えた。
しばらくすると、真っ赤な髪を三つ編みした長身の市川が現れた。ただ、彼はいつも笑顔を浮かべておらず表情がなかった。
「やぁ、よく来たね」
新宮が笑顔で向かい入れたが、彼は無表情のまま小さく頷くだけで何言わない。
「君、コマンドが使えるようになっただろ。ならアレはあげよう」
神田が実験室にいる真人を指さした。
市川は眉をひそめたが、小さく頷くと実験室に入った。
「君か」真人に向かって小さく言ったが彼は一切、反応せず目は虚ろであった。「難儀だね」
市川は真人の車椅子を押すと、そのまま実験室を出て行った。
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